食品安全情報blog過去記事

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ほどほど飲酒は心疾患リスクを減らすか?

Behind the headlines
Does moderate drinking reduce heart failure risk?
Tuesday January 20 2015
http://www.nhs.uk/news/2015/01January/Pages/Does-moderate-boozing-reduce-heart-failure-risk.aspx
Daily Mirrorが「週に7杯の飲酒は心疾患を予防するのに役立つ」と報道した。米国の研究がこの程度の飲酒は心疾患保護作用があるかもしれないと示唆する。この大規模米国研究は45才以上の14000人を24年フォローしたもので、研究開始時に週に最大12英国ユニット(米国では標準7杯)飲んでいた人の方が全く飲まない人に比べて心疾患発症リスクが低かった。このリスクの低い集団の平均飲酒量は週に約5英国ユニット(週にアルコール含量3.6%の弱いラガーを約2.5パイント)である。このレベルの摂取量だと男性は20%、女性は16%心疾患発症リスクが全く飲まない人より少ない。この研究は規模の大きさと長期にわたってデータを集めたことが強みである。しかし結果へのアルコールの影響を調べるのは困難が伴う。「1杯」やユニットについてそれぞれ異なるイメージを持っていることも困難の一つである。人々は意図的に飲酒量を間違って報告する可能性がある。また飲酒のみがリスク削減の原因かどうか確信できない。
心疾患を予防するためにできることは健康的な食生活と健康体重維持、そして禁煙である。

  • UK SMC

飲酒と心疾患リスクへの専門家の反応
expert reaction to alcohol intake and risk of heart failure
January 20, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-alcohol-intake-and-risk-of-heart-failure/
European Heart Journalに発表された論文で心疾患への飲酒の影響を調べて最大週に7杯まで飲むことが男女で心疾患が少ないことと関連すると報告した。
St George’s病院主任栄養士Catherine Collins
心疾患はアルコールの飲み過ぎと関連すること、心臓がアルコールの毒性と関連する栄養不足そしてしばしばアルコールに添加される有毒物物質で直接傷害されること、は既にわかっている。この研究は中年の過体重の人たち(BMI 26-28)の自主申告による飲酒量−ほとんどの飲酒者が過少申告することが常に懸念材料である−でほどほどに飲む人たちのリスクが低いことがわかった。しかしながら少量飲酒が保護作用があるように見えるものの、飲酒量が増えると喫煙率と高血圧も増える。どちらも心疾患と関連があるため見られた効果はアルコールだけによるものではない可能性がある。栄養研究ではよくある困難さである。この研究では飲酒量の多さは心疾患だけでなく死亡リスクも高くなることを確認した。
基本はアルコールはほどほどに、である。
Cardiff大学医学部心臓専門家Tony Lai教授
これは興味深いトピックであるが、著者自身が述べているようにこの研究から強い主張をすることはできない。特に心疾患を減らすために飲酒量を増やす根拠として使ってはならない
London School of Hygiene & Tropical Medicine疫学教授David Leon教授
この研究は少量飲酒は全く飲酒しないより心疾患が少ない可能性があるというエビデンスに少しだけ追加の貢献をする。しかし著者が指摘しているように飲酒量が増えると死亡率が上がる。従って心臓へのアルコールの影響を調べている科学者にとっては興味深いかもしれないが全体としてはどんな飲酒量であってもリスクがあり、飲めば飲むほど何らかの原因で死亡する可能性が高くなるというコンセンサスに一致している。全く飲まない人に飲酒を薦める、あるいはたまにしか飲まない人に定期的に飲むことを薦めるように間違って解釈される可能性がある