食品安全情報blog過去記事

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フィールドからの報告:病気の診断のための妥当性を評価されていない尿中マイコトキシン検査の使用−米国2014

Notes from the Field: Use of Unvalidated Urine Mycotoxin Tests for the Clinical Diagnosis of Illness — United States, 2014
February 20, 2015 / 64(06);157-158
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6406a7.htm?s_cid=mm6406a7_w
2014年2月に、CDCのNIOSHにオフィスビルの組合代表者から健康ハザード評価の依頼があった。女性従業員が長期休暇後に仕事に復帰したところ全身にわたる症状が出て、その症状をインターネットで検索したら「有害なカビの検査」を消費者に直接販売しているサイトを見つけ、そこに尿を提出したという。オフィスにかび臭さはなくカビが生えているということもない。検査の結果オクラトキシン2.8ppbとトリコテセン0.4ppbが検出されて「あなたの身体に異常な濃度のカビ毒があることが明らかになった」という報告が届いた。そのサイトは従業員に対し「カビ病治療専門」の診療所を紹介し、そこで彼女はカビ毒中毒と診断され抗真菌薬を処方された。抗真菌薬は真菌感染を治療するための薬でカビ毒による病気の治療薬ではない。さらに食事療法(缶詰チキンと白米のみを3日間食べる)といくつかの標準的でない治療(大腸洗浄やカッピング療法、イオン鼻スプレーなど)を受けた。
ビルの管理者が雇ったヒトと従業員が雇ったヒトの二人のコンサルタントが壁やカーペットや天井のタイルを剥がす破壊検査でオフィスを調べたが水漏れやカビは確認できなかった。ビル管理者にかかった費用は25000ドルを超える。従業員は職場のカビが原因だと確信し続けている。一緒に働いている従業員の何人かは検査に気がついて不定愁訴を職場のカビのせいだと言い始めている。
尿検査を行ったラボはClinical Laboratory Improvement Amendments (CLIA)認証を受けているが尿のマイコトキシン検査はFDAに認可されたものではない。CLIA認証は分析結果の信頼性に関するもので検査方法の臨床的妥当性を評価するものではない。FDAが認可しているヒトの尿中マイコトキシン検査は存在しない。
過去10年、CDCのNIOSHは妥当性を評価されていない検査結果を根拠に労働環境病になったという主張についての評価要請をたくさん受けとっている。労働に関連する病気について妥当性を評価されていない検査を用いて診断するのは職場に間違った情報と恐怖を広め、誤診と不必要で不適切な、有害な可能性のある治療をすることになり、不必要で不適切な環境職業評価を行うことになる。
マイコトキシンは主に食品由来でヒトや動物の病気の原因になりうるが多くの食品に低濃度含まれているため健康なヒトの尿にも検出される。マイコトキシン濃度から病気を診断する方法は確立されていない。
CDCは労働者のカビの生物学的検査を薦めていない。カビ汚染を疑う場合には目視が最初のステップである。湿度計で湿度が測定できる。
FDAに認可されていない、消費者に直接販売される検査を診断目的で使う場合にはそれについて意味がない可能性があることを理解する必要がある。