食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 高齢者のダイエットソーダ摂取と腹部脂肪についての研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study on diet soda consumption and abdominal fat in older adults
March 17, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-on-diet-soda-consumption-and-abdominal-fat-in-older-adults/
Journal of the American Geriatrics Societyに発表された研究が65才以上のアメリカ人の「ダイエット」ソフトドリンク摂取とウエストの関連を立証しようとした。これらの飲料を多く飲む人のほうがフォローアップ期間で体重が増えやすかった。
St George’s Hospital NHS Trust主任栄養士Ms Catherine Collins
この論文の著者らはウエスト周囲の長さで定義される腹部脂肪、BMIとダイエットドリンクの摂取量の間に「顕著な用量−反応関係」があると大胆にも述べている。著者らは最初の研究対象者749人のうちフォローアップできた約半分(375人)の結果に基づいてこれを正当化している。この集団の中で毎日1.5標準的ダイエット飲料を飲んだ40人ほどが心臓やメタボリックリスクが高くなると予想しているが心血管イベントなどの情報はない。
表面的にはこの研究はこれ以上太りたくない中年に懸念を生じさせ体重管理をしたい場合のソフトドリンクの選択についての議論をさらに混迷させるだろう。
しかし悪魔は失われた細部に宿る。栄養士として私は太っている人とダイエットドリンクの関係についての研究は疑う。砂糖入り飲料の代わりにダイエットソーダを選ぶ主な理由が、その人たちが既に太っているあるいは糖尿病のために砂糖入り飲料を避けているためであることを知っているからである。この研究ではダイエットドリンクを摂取している人の24%は糖尿病である。このことは彼らが血糖値を管理するために好ましい努力をしていることを示唆する。
またこの研究では一日のカロリー摂取量がわからないが、ダイエットドリンクの使用者は裕福で運動を良くしていて喫煙率が低く糖尿病である率が砂糖入り飲料を飲んでいる人の約2倍(24% vs 13%)であることが確認できる。この根拠からは「ダイエット飲料のせいで太る」ことが確認できたとは思えない。単純に因果関係と相関関係を混乱させている。
また興味深いことはBMIとウエストの関係である。60代半ばで試験を始めたときには全ての参加者のBMIは平均27-28で(過体重)、どの群でも75才程度でピークになりその後80代に向かうに連れて減少していく。一方ウエストは年齢とともに増加し続け、その幅は女性の方が大きい。この興味深いデータは加齢による体型変化についての他のデータを補完するが80才以上の高齢者目標については疑問を提示する。
体重と余分なカロリーについては全ての食品が関係する。もしこれを根拠にゼロカロリー飲料の代わりに砂糖入り飲料を選ぶと200 kcal程度の追加になる。

Cambridge大学MRC疫学ユニットNita Forouhiプログラムリーダー
この研究は飲料と肥満の関係についてのさらなる研究を刺激するものではあるが一般の人向けの助言にするには不十分である。他の食習慣やカロリー摂取量についてのデータがないことや、ダイエット飲料を飲むから肥満なのではなく肥満だからダイエット飲料を飲むという「因果関係が逆」という問題もある。
さらにウエストの大きさが皮下脂肪ではなく内臓脂肪の多さだと推定しているが測定しているわけではない。

  • 漁業:海に目を

Natureニュース
Fisheries: Eyes on the ocean
Daniel Cressey 17 March 2015
http://www.nature.com/news/fisheries-eyes-on-the-ocean-1.17121
Daniel Paulyは世界の漁獲に警鐘を鳴らしているが彼はノイズが多すぎると考える人もいる
ロッコ沿岸では小さな木製の船がイカを集めている一方、大西洋の反対側では強力なクルーザーが観光客を乗せて大型の魚を追いかけている。FAOの漁獲データベースSOFIAにはこれらは存在しない。FAOの情報は各国が報告したものであり質はばらばらで、日常生活のための漁獲や違法行為、娯楽などは含まれない。カナダのブリティッシュコロンビア大学の海洋生物学者Daniel Paulyはこれら記録されていない漁船の問題により海から奪われている食糧に取り組んでいる。現在進行中のプロジェクトで今年の年末までに世界の実際の漁獲推定を発表する予定である。予備的知見ではFAOの公式発表の50%増しになるだろう。彼の数字に疑問を提示する研究者もいるが、それでもPaulyの影響力は大きいことには合意がある。

  • オーガニックの「ロマンス」を超えて:オーガニック提唱者が採用すべき6つの持続可能な方法

Beyond ‘romance’ of organics: 6 ignored sustainable practices organic proponents should embrace
Steve Savage | March 16, 2015 | Genetic Literacy Project
http://geneticliteracyproject.org/2015/03/16/beyond-the-romance-of-organics-6-ignored-sustainable-farming-practices-that-organic-proponents-should-embrace/
どんな農家でも消費者でも、我々の農業は「我々にとって最良で、環境にとって最良で、適切な食糧を供給できるための最良の方法で行うべき」という理想には合意できるだろう。オーガニック農家や消費者でも、私でも。もし有機農法がこれらの目標を達成できるなら私は強力な支持者になるだろうがそれができるとは思えない。有機農法の根底には「ナチュラルがベスト」という想定がある。それは科学が未熟な時代からあり近年我々が学んだことからは支持されない。「ナチュラル」はマーケティングのための定義であり、必ずしも農業にとって最適ではない。
前世紀のオーガニックムーブメントの最初は土壌を健康的にすることが中心だった。その当時は環境にとってもベストだったかもしれない。しかしその後知識は増え規制は変わり有機農業の「ナチュラル」の制約が逆に有機農法の可能性を狭めている。特に6つのことを例にしよう。
1.窒素肥料
2.リスクの小さい農薬
3.統合的害虫管理
4. 生物学的合理性
5.土壌保持
6.遺伝的改良
(齋藤さんの「有機野菜はウソをつく」(有機野菜はウソをつく (SB新書))
とほとんど同じだったので。一般の人にもわかりやすい、入門書としていい本です。変化する時代や環境に柔軟に適応していくことこそが「有機的」なはず。)