食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • 人口集団の加齢は我々が考えるより遅い?

Are populations aging more slowly than we think?
15-Apr-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-04/iifa-apa041315.php
PLOS ONEに発表された新しい高齢化の測定方法を採用した2050年までの欧州の将来の人口集団予想によると、平均寿命が延びることは必ずしも高齢化が早まることではない。
年齢は既に生きてきた時間で測定できるが、これからどのくらい生きるかで補正することもできる。もし65才になったから高齢者だと考えるのではなく、あと何年生きられるかを考えた場合、実際の加齢は少なくなる。単純に年齢だけを使って「高齢者」に分類するともっと若い人と同じ特徴のある多くの人を「高齢者」にしてしまう。人々はより長く、より健康的に生きるようになったため、高齢であるということの意味が時代とともに変わってきていて、これからも変わるだろう。現在の60才は中年であるが200年前は60才は超高齢だった。
(環境が悪化したという主張は多いが現実には明確に昔より健康になっている)

  • BPAはカメの性機能を撹乱し、環境健康上の警告である

BPA can disrupt sexual function in turtles, could be a warning for environmental health
15-Apr-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-04/uom-bcd041515.php
(カメの卵にビスフェノールAを処理してその生殖器の発達への影響を調べたところ影響があったので「カメに負の影響があるならヒトの健康にも同じ影響がある可能性が高い」、というプレスリリース。
濃度記載無し、カメに影響があったからヒトに悪いという断定・・・で予想されるとおり
Frederick S. vom Saaleの名前があった。
Developmental exposure to bisphenol A (BPA) alters sexual differentiation in painted turtles (Chrysemys picta)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0016648015000933
濃度0.01, 1.0, 100 μg BPA/g-eggとのこと。卵1gあたりというのがよくわからないが17βエストラジオール20 ng/g-eggのほうはBPAのどの濃度より明確に影響がある。なのでカメが心配なら女性や雌がいてはいけないことになるし(ピルはこれまでも指摘されている)ヒトへの影響は女性ホルモンのほうが明確にある(当然)。)

  • BPA暴露が次の3世代のマウスの生殖能力に影響する

BPA exposure affects fertility in next 3 generations of mice
15-Apr-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-04/uoia-bea041515.php
Toxicology and Applied Pharmacologyに発表された論文
(別のグループだがこれは用量だけでなくどんな実験したのかすらわからないプレスリリース)
The effects of in utero bisphenol A exposure on reproductive capacity in several generations of mice
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0041008X1500085X
マウスに妊娠11日目から出産まで毎日BPA (0.5, 20, and 50 μg/kg/day) またはジエチルスチルベストロール (DES; 0.05 μg/kg/day)を強制経口投与。F1の雌でF2を作りF2の雌でF3を作り春期発動時期や子どもの数などを調べている。いろいろ調べた中で有意差がついたのがF3の膣開口と最初の発情、それから生殖能力に関する指数。なのだが用量相関もなく偶然のような)

Cancer: The Ras renaissance
Heidi Ledford 15 April 2015
http://www.nature.com/news/cancer-the-ras-renaissance-1.17326
最も致命的な種類のがんを誘発するタンパク質を標的にした薬の30年にわたる追求は失敗してきた。今一部の研究者は別の試みをしている。
30年以上前にRasタンパク質をコードする遺伝子の突然変異は最も強力ながん誘発因子の一つとして知られていた。Rasの変異は進行がんでよく見られ、肺がんでは25%、膵臓がんでは90%に見られる。Rasの活性を安全に抑える医薬品について何十年も研究されてきたが失敗してきたため製薬会社はこの分野のプロジェクトをあきらめている。しかし一部の研究者はこのタンパク質を見直している。
(以下Rasの物語。そういえばRas変異のある動物なら発がん物質が早く調べられるのではというプロジェクトがあったような・・確か何もしなくても腫瘍頻発で使えなかったはず。結局トランスジェニック動物は今でもあまり使われていない)

  • 英国の資金提供者は動物での研究により強力な統計を要求

Natureニュース
UK funders demand strong statistics for animal studies
Daniel Cressey 15 April 2015
http://www.nature.com/news/uk-funders-demand-strong-statistics-for-animal-studies-1.17318
一部の実験では十分な動物数を使っていないことに対応
4月15日に英国政府の科学資金分配に責任がある研究評議会が動物実験ガイドラインの変更を発表した。研究費への応募者はその研究で統計的にしっかりした結果を出せることを示さなければならない。検出力の小さい研究は信頼できな結果になり、動物は無駄になる。しばしばサンプルサイズはしっかりした統計を根拠にするのではなく過去の先例に倣う。問題は英国だけに限らない。

エディトリアル 数の問題
Numbers matter
http://www.nature.com/news/numbers-matter-1.17315

  • ゲノムは重荷を背負っている

Genomes carry a heavy burden
Nala Rogers 15 April 2015
http://www.nature.com/news/genomes-carry-a-heavy-burden-1.17304
ほとんどの人のDNAには子孫を致死性にする可能性のある変異がある
Geneticsに4月8日発表された研究によるとほとんどの人は子孫の早期死亡や不妊の原因となる可能性のある遺伝的変異を1つか2つ持っている。
South Dakotaに住む1642人のHutteriteの解析。この集団は64人の創始者からはじまった13世代にわたる。

  • がんの突然変異はしばしば病院で間違って同定されている

Cancer mutations often misidentified in the clinic
15 April 2015  Heidi Ledford
http://www.nature.com/news/cancer-mutations-often-misidentified-in-the-clinic-1.17329
腫瘍組織だけでなく正常組織も調べることが効果的治療法を選ぶ役にたつ
Science Translational Medicineに4月15日に発表された論文によると、米国の多くの病院で患者は不正確なDNA解析の結果を受け取っている可能性がある。
進行がんの815人の腫瘍と正常組織のDNAプロファイリングを行った。良く用いられる、タンパク質をコードしている全ての領域の配列決定と、111遺伝子の配列決定の2つの方法で調べた。全タンパク質コード領域配列決定では、見つかった突然変異の2/3は偽陽性で、つまり正常組織にもその変異があり、効果的治療の標的にはならない。111遺伝子セットの場合でも同様だった。一部の機関は既に正常組織の配列決定も始めているが、これは費用と負担が大きくなる。正常組織の変異は子孫や家族に影響がある可能性があるため、別途インフォームドコンセントが必要になる。