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砂糖、炭水化物、運動、そして肥満−専門家の反応

SMC
Sugar, carbohydrates, exercise and obesity – expert reaction
April 23rd, 2015.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2015/04/23/sugar-carbohydrates-exercise-and-obesity-expert-reaction/
米国と南アフリカの科学者が不健康な食生活を運動だけで代償できるかどうかに疑問を提示する
British Journal of Sports Medicineのエディトリアルで運動不足ではなく砂糖と炭水化物が肥満増加の背景にあると専門家が言う
オーストラリアと英国のSMCが専門家のコメントを集めた。
CSIRO健康栄養研究部長Manny Noakes教授
砂糖と炭水化物だけが肥満の原因であるというのは完全な神話である。健康のための食生活はたった一つの栄養素を避けるだけでは達成できない。バランスの取れた栄養を考えなければ、低脂肪食の失敗を低炭水化物食で繰り返すことになるだろう。運動は多くのメリットがあるが減量よりむしろ維持に役立つだろう
南オーストラリア大学集団健康学部ポスドクTom Wycherley博士
著者は運動には多くのメリットがあることを正しく指摘している。ただし運動は減量にはあまり効果的ではなく、減量には摂取カロリーを減らすことが重要である。余分なカロリーを摂らないために添加された糖の多い食品や飲料を避けることは賢明な戦略であるかもしれない
栄養士、グリセミック指数財団主任科学者、オーストラリア糖尿病評議会研究部長Alan Barclay博士
この低炭水化物食活動家による意見は肥満の主な原因は炭水化物だという仮説を提示している。精製炭水化物を摂りすぎることが肥満や糖尿病リスクを増やすだろうことには根拠があるが、精製脂肪、タンパク質、アルコールもまた不必要なエネルギー源になりうるので無視すべきではない。喫煙の慢性疾患相対リスクが極めて高い(50以上)のに比べて炭水化物と慢性疾患については1.2-1.5であり、炭水化物をタバコと同じというのは役にたたないだろう
ビクトリアがん評議会肥満政策連合主管Jane Martin
運動だけで肥満問題が解決できないように、こうしてほしいと語るだけでも解決できないだろう
懐疑的栄養士というウェブサイトを主催している栄養士Bill Shrapnel
このペーパーは新しい研究に基づくものではない。著者は普通でない見解で有名である。
このぺーパーは耳目を集めるためのものでいつもの誇大宣伝と食品企業が諸悪の根元であるという主張である。一部の主張は単に間違っている。例えば砂糖のカロリーは空腹感を促進し脂肪のカロリーは満腹になるという主張は根拠がない。研究では砂糖と脂肪は満腹感には同程度の影響でタンパク質は少し満腹感が高い。
運動も食生活の改善も両方大切である
スポーツ栄養士Joanna McMillan博士
運動だけで悪い食生活の影響が完全に払拭されることはないという主張には同意するがオーストラリア人の運動量が減っていることも確認する必要がある。運動量が減ったことも肥満に寄与する。我々はアスリートと日常生活の運動を区別する必要があり、特定の製品(スポーツドリンクなど)をアスリートが宣伝するのはやめるべきだという主張には同意する。
健康的になるのは簡単なことにしよう。砂糖や炭水化物を悪者にして排除するのは過去の失敗を繰り返すだけである。
Robert Gordon大学Aberdeen肥満研究疫学センター長Iain Broom教授
全体的にこのエディトリアルはBMJのクリスマス号に掲載されたRichard Smithのエディトリアルと同様である。炭水化物の多い食生活がインスリン抵抗性症候群を悪化させることや低炭水化物のほうが低脂肪より良い効果がみられることは1970年代から良くわかっている。しかし一つ二つ間違いがある。脂肪がより満腹感を与えることはない。
英国栄養士会広報Catherine Collins氏
ジムで運動したことがある人ならチョコレートバー一個分のカロリーを燃やすのがどんなに大変かわかっているだろう。ただしこの意見では低炭水化物高脂肪ダイエットを賞賛するが運動の効果を十分認めていない。
登録栄養士として、不完全なエビデンスがあまりにも頻繁に医学雑誌に引用されていることに懸念している。運動についてはしっかりした根拠がある。
UCL心血管科学研究所Nick Finer名誉教授
Oxford大学食事と集団の健康Susan Jebb教授
Glasgow大学代謝医学Naveed Sattar教授
(略)

  • 運動不足ではなく砂糖と炭水化物が肥満増加の背景にあると専門家が言う

Sugar and carbs, not physical inactivity, behind surge in obesity, say experts
22-Apr-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-04/b-sac042015.php
British Journal of Sports Medicineのエディトリアル。
食生活が悪くても運動しているから大丈夫というのは神話である。定期的運動は重要であるがカロリーの多すぎる食事は健康に悪い。カロリーの中身も問題で炭水化物由来のカロリーが問題である