食品安全情報blog過去記事

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IARCモノグラフはDDT、リンデン、2,4-Dを評価

IARC Monographs evaluate DDT, lindane, and 2,4-D
23 June 2015
http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr236_E.pdf
IARCは殺虫剤ガンマヘキサクロロシクロヘキサン(リンデン)とジクロロフェニルトリクロロエタン(DDT)および除草剤2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の発がん性を評価した。
最新の入手できる科学文献を吟味し、13ヶ国26人の専門家はリンデンをヒト発がん性(グループ1)、DDTをおそらくヒト発がん性がある(グループ2A)、2,4-Dをヒト発がん性の可能性がある(グループ2B)に分類した。

  • リンデン、DDT、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸の発がん性

Carcinogenicity of lindane, DDT, and 2,4-dichlorophenoxyacetic acid
Published Online: 22 June 2015
http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(15)00081-9/fulltext
2015年6月2-9日の評価の要約
リンデン:グループ1
いくつかの疫学データで非ホジキンリンパ腫のリスク増加が一貫して認められていて十分な根拠がある
動物実験ではマウスの肝腫瘍(悪性あるいは良性)頻度の増加があり十分な根拠がある
DDT:グループ2A
DDT暴露とがんの関連については多様な国で100以上のコホート及び症例対照研究がある。
中国でのネステッド及び集団ベースの症例対照研究では血中DDT濃度と肝がんの間に交絡要因調整後強い用量相関が見られている。イタリアのマラリア対策キャンペーン時にDDTを散布した人の歴史的コホート研究では肝臓がんの過剰リスクは報告されていない。非ホジキンリンパ腫については北米や欧州のいくつかのコホートや症例対照研究で正の関連が報告されているが他の研究では関連はない。米国や欧州でのいくつかの症例対照研究ではDDTまたはDDEと精巣がんの正の関連が報告されている。1993年以降行われた40以上の研究をレビューしたが乳がんと成人検体中DDTまたはDDEの明確な関連はみつからない。但し早期暴露の重要性についての問題は未解決である。非ホジキンリンパ腫と肝臓と精巣のがんの研究がヒトでの限定的根拠を提供する
マウス、ラット、ハムスターでの多数の研究で実験動物における発がん性の根拠は十分である。
DDTがいくつかのメカニズムに影響することには強い根拠がある。免疫抑制、酸化的ストレス、エストロゲン様作用、アンドロゲン受容体拮抗作用など
2,4-D:グループ2B
製造や散布に関わる労働者でのがんリスク研究が評価された。交絡の可能性があるため除草剤の混合物あるいはダイオキシンを含む除草剤での暴露が関与する研究は2,4-Dの評価にはあまりよい情報源にならないとみなされた。ワーキンググループは11の研究のメタ解析を行い、非ホジキンリンパ腫と2,4-Dの暴露歴に関連は見られなかった。但し結果は研究の他の農薬についての調整により左右されるように見えた。ワーキンググループのコンセンサスは、2,4-Dの発がん性については根拠は不適切というものであるが限られた根拠があると考える人も少数いる。
実験動物での根拠は正の結果が報告されているものは方法論に問題があるため限られた根拠があると結論した。但し少数が根拠は十分だと判断した。
カニズムに関しては酸化的ストレスについて強い根拠があり免疫抑制については弱い根拠がある。
(今回のワーキンググループはわりとまともだったようだ。で、グリホサート2Aで2,4-Dが2Bって並べると、異様さが際だつ。2,4-Dはエージェントオレンジ関連で散々叩かれているので質の低い「根拠」はたくさんある。)