食品安全情報blog過去記事

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医師はホメオパシーを薦めるべきか?−専門家の反応

NZ SMC
Should doctors recommend homeopathy? – Expert reaction
July 15th, 2015.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2015/07/15/should-doctors-recommend-homeopathy-expert-reaction/
今週のBMJの直接討論コーナーで患者へホメオパシー製品を薦めることの是非を議論している
王立ロンドン病院の統合医療研究部長Peter Fisher博士は、最近のオーストラリアの政府報告書などは幾分かのメリットに関する根拠を無視しているといい、医師はホメオパシーのあり得なさによるバイアスを排除すべきだと結論する。
しかしExeter大学名誉教授Edzard Ernst教授はほとんどの独立したRCTの系統的レビューは「ホメオパシーに効果があることを示すのに失敗している」と結論し、ホメオパシーの背景にある想定は科学を無視している、と主張する。
BMJポッドキャストあり
先月、ニュージーランド医師会長Stephen Child博士はニュージーランドの一般開業医はホメオパシー製品を処方したり薦めたりすべきではないと述べた。彼は本日Pharmacy Todayに「有効性に関する根拠がない」と語った。「根拠がない治療法を提供するのは非倫理的である」
SMCはニュージーランドの研究者から専門コメントを集めた。
ビクトリア大学非常勤専門研究フェローHoneyLab所長Shaun Holt博士
一部の人はホメオパシーが効くと間違って考えていてプラセボ効果のような要因に騙されている。ニュージーランドの一般開業医の8人中1人程度がホメオパシーを処方したり患者をホメオパスに紹介したりしている。しかしこれは倫理上および規制上の基準に違反している。別の調査ではニュージーランド人の93%がホメオパシーの実際を知らず、多くはナチュラル製品を低用量で使っていると考えている。英国医師会はこれは魔法だと正しく説明している。ホメオパシーの狂気は英国で「ベルリンの壁」製品が抑圧を感じている人の役にたつと販売されていることに要約される。他にコアラ、膣超音波、土星からの光、犬の精巣、イルカの歌、ジェット燃料などがある。ホメオパシー製品そのものは有効成分をなにひとつ含まないので有害ではないが、ほんとうの医薬品の代わりに使う場合には重大な問題になる。一つの例が親がホメオパシーで治療したためにオーストラリアで赤ちゃんがアトピーで死亡した例である。
オークランド大学薬学部ハーブ医学准教授Joanne Barnes准教授
多くのホメオパシー使用者がプラセボ効果により効果があったと報告する。しかし特定のホメオパシー製品が特定の症状に有効だという一貫した根拠はない。確かにある種の試験では何らかの効果があったと報告しているものもあるが根拠は一貫していない。このこととありそうなメカニズムがないことが、医師へのホメオパシーを勧めるべきではないという助言を支持する。患者は自由に使うことができ、担当の医師と敬意を持って中立にオープンに話し合うことができる。ホメオパシーは高度に希釈されているので有害影響はありそうになく他の医薬品との相互作用もないだろう。しかし患者は医師に相談せずに普通の医薬品の使用を中止してはならない。
豪州SMCから
西オーストラリア大学の研究者で国立健康医学評議会(NHMRC)ホメオパシーワーキング委員会一員Nik Zeps博士
Peter Fisher博士はNHMRC報告書についていくつかの間違った想定をしているため彼の結論は弱い。重要な報告を除外してはいない。ほとんどの研究はデザインが悪くバイアスの可能性があって信頼性が低いことがわかった。
さらに彼はスイスがホメオパシーに好意的な報告書を出したと間違って示唆している。NHMRC報告書で強調しているように、これはスイス政府からの提出要請に応じて一般から提出されたもので、これを政府が認可したものだとするのは不当表示でありホメオパシー推進者のいつものやり方である。
彼が追加の根拠として提示した多くの症状は自己限定的で治療がなくても自然治癒するようなものである。ホメオパシーのメリットは全体的な健康のなかで評価されるべきで、研究の信頼性の評価も必要である。それらがNHMRC報告書では行われている。そのような評価なしにたった一つの研究を引用するのは信頼できるデータ評価方法ではない。