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スコットランド政府のGM作物禁止発表への専門家の反応

SMC
Expert reaction to Scottish government announcement on ban of GM crops
August 9, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-scottish-government-announcement-on-ban-of-gm-crops/
スコットランド政府がGM作物の栽培を禁止する予定である。
ニューカッスル大学の農業食料地方開発部長Rob Edwards教授は言う:
これは英国において我々が直面している持続可能な農業と園芸の大きな問題と公衆上の利益にとって拙速な決定のように見える。我々は投入する資源を減らし農業の環境への負荷を最小限にしつつより栄養価のある健康的な食品を作らなければならない。気候変動モデルによると英国の北部農業地帯は今後数十年の将来の食糧供給において戦略的により重要になることが示唆されている。限られた時間内でこれらの課題に答えるには、私が見逃していない限り現在の農業に魔法の解決法はない。将来のために、全ての技術は使えるようにしておくべきだ。
EFSAのGMOパネルの先の座長Joe Perry教授
政府が反GMを環境に良いと考えるのはやめる時期だ。GM作物は賢明に規制されれば環境にメリットがある可能性がある。さらに禁止には安全上の理由はない。このような全面禁止は不合理である。
前Rothamsted Research所長、カナダGlobal Institute for Food Security最高経営責任者Maurice Moloney
ヨーロッパで栽培されている唯一のGM作物が昆虫耐性トウモロコシであるので、この決定は象徴的なものである。スコットランドではトウモロコシは重要な作物ではない。しかしながら欧州で使用が認められた二番目の作物はジャガイモで、スコットランドの農家にとってはより意味がある。最近Sainsbury Laboratoryがジャガイモの葉枯れ病から効果的に守れる画期的科学的進歩を報告した。葉枯れ病はスコットランドの農家にとって雨の多い年には収量減の原因で多くの防カビ剤散布を必要とする。このような画期的進歩をスコットランドの農家に使用させず消費者に農薬使用回数を減らす可能性を否定するのは無責任である。国をそのような立場に持っていくのはスコットランドを望ましい国とすることはなく科学の存在しない国という評判に導く。
ケンブリッジ大学Sainsbury研究室Ottoline Leyser教授
大臣がスコットランドの食品飲料産業の「将来を賭ける」ようなことをしないためにこの決定をしたと言っていることは皮肉である、実際にやっているのはまさにそうだから。スコットランドで栽培されているGM作物はないので短期的にはそのことによるリスクはなく人目を引くだろうが、やがて葉枯れ病耐性ジャガイモのようなものが販売されるようになるとスコットランドの農家は極めて不利になるだろう。しかし多分時が来れば翻すだろう。
欧州委員会主任科学者でアバディーン大学のAnne Glover教授
スコットランド政府のGM禁止の全文脈がわからないので詳細なコメントはできない。一般論として安全性を根拠に植物交配のためのGM技術禁止を正当化することは困難である。適切な選択によりGM技術は農薬や化学肥料を減らして消費者や環境や農家の利益になる持続可能な農業へのアプローチの一つである。
Rothamsted Research分子遺伝学教授Huw Jones教授
科学にとって、そしてスコットランドにとって悲しい日である。EUに認可されたGM作物はヒト、動物、環境にとって安全である。そしてスコットランド議会がGM作物の栽培が食品飲料部門にとって有害であると考えたことは恥である。これが認められればこの決定はスコットランドの農家から自由を奪い将来栽培できる作物の選択肢を狭めるだろう。