食品安全情報blog過去記事

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その他

  • Chemical & Engineering Newsから

August 17, 2015 Issue
Volume 93, Issue 32
http://cen.acs.org/magazine/93/09332.html
特集はインターネットが化学をどう変えたか
データベースの拡大や化学者がどう利用しているか、職探し、出版、学習の変化の他疑似科学を広めるのにも貢献したことなど幅広いテーマを扱っている

オンラインでの疑似科学の拡大と如何に戦うか
How to fight the spread of pseudoscience online
Michelle Francl
http://internet.cenmag.org/how-to-fight-the-spread-of-pseudoscience-online/
コンピューター化学者として私はいくつかの引用数の多い方法論の論文を書いているが、最も多く読まれたのはそれとは全く関係ないSlateに2月に掲載されたVani Hariの“The Food Babe Way”についてのレビューである。特に彼女がアイスクリームのバニラ香料はビーバーのお尻の一対の嚢由来(海狸香)だという主張をとりあげたものがFacebookでたくさんシェアされた。クリックバイト(アクセス稼ぎ)ケミストリーへようこそ:それはやっかいで有害な、科学と疑似科学の分かちがたい混合物への速やかなアクセスである。
この関連は魅力的で、あなたのベビーシャンプーにはホルムアルデヒドが含まれ口紅には鉛が含まれる。化学者はその疑似科学を否定したくなる−赤ちゃんは自分でホルムアルデヒドを作っているし金で鉛は減らないし口紅の毒性を結婚指輪で調べるのはナンセンスである。しかしその反論も誤解を解消するどころかウェブにナンセンスを広めるのに役立ってしまう。
うわさをやっつけるのに化学者がすべきことは何だろう?ねばり強くあれ。我々は疑似科学と並んで事実を流通させ続ける必要がある。今日「ビーバーのおしり」を検索するとあなたはVani Hariの主張と並んで私の記事を見つけるだろう。
事前に行動しよう。あなたが何故何をしているのかについて語ろう。「化学物質とがん」で検索すると恐ろしいタイトルの無数の記事が出てくるが、その中には化学者ががんについて最も大きく貢献したこと:抗がん剤の話が全く出てこない。化学者が作った薬のおかげで子どもの白血病の死亡率が20年の間に97%から10%に低下した。一般の人にとって「化学物質」は有害な汚染物質という意味で、何百万人もの子ども達を救った医薬品を意味しない。人々に全てのものは化学物質であると語る代わりに、化学者が分子の動きをどう考えるのかについて語ろう。人々に正しい質問をするツールを提供しよう。
我々が我々のしていることを語らないでいると疑似科学者が語るだろう。
(食や健康や美容分野の疑似科学が多いのに女性化学者は少なくてひたすら負け戦)

  • ACSの化文字(けもじ:化学物質と絵文字の複合語らしい)がダウンロードできる

ACS Chemoji Available For Download
August 16, 2015
http://cen.acs.org/articles/93/web/2015/08/ACS-Chemoji-Available-Download.html
化学者がソーシャルメディアでコミュニケーションをするのに役立つ絵文字
学会公式アプリがダウンロードできる

The cannabis experiment
Natureニュース
Daniel Cressey 19 August 2015
http://www.nature.com/news/the-cannabis-experiment-1.18201
大麻の使用がますます受容されるようになり、研究者はこの薬物の重要な疑問に答えるのを急ぐ
2013年、Beau Kilmerはかなり大胆な人数を数えた。ワシントン州の市民がレクリエーション用の大麻を合法化する投票をし、州の酒類規制委員会はどれだけの人がどのくらいこの薬物を使用してるのか理解できるのかどうか心配していた。その仕事は簡単ではなかった。違法薬物の使用者は摂取量を過少申告する。そこでRANDの薬物政策研究センター長のKilmerはウェブベースの調査方法を開発した。この調査と他のデータを合わせて、実際の使用量と認識とのあいだに分断があることを明らかにした。これまでのデータでは州当局は年に約85トンと推定していたがKilmerの研究では175トンと約二倍になった。Kilmerは、「我々はデータを集め始めたばかりである」という。
大麻を合法化し罰則を軽くする法は世界中で作られている。薬物の販売を物陰から当局に見える店頭に移そうとしている。
効果の宣伝とは違って大麻の健康や行動への影響についての根拠は少なく矛盾している。研究者らは大麻のリスクやベネフィットについての最も基本的な答えを得るのに苦労している。政策の急激な変化は自然実験の宝庫となる。市場が変わったときが最も多くの情報が得られる。
何年もの間大麻の安全性についての議論は極論になっていた。合法化を要求する人たちは無害だと主張し政府の多くは危険な違法薬物として扱っている。
科学者は急性影響のいくつかについては良くわかっているが長期影響はそれほど明確ではない。しかし多くの科学者が合意することはある。多くの人が主張するのとは違って、大麻には依存性があるという根拠がある。約9%の人は大麻依存になる。しかしそれ以外の長期影響は明確にするのは困難だった。
医薬品としての効果も不明だが合法化の影響も不明。
はっきりしているのは合法化により劇的に使用が増えるだろうということで、それは必ずしも望ましいことではない。
(長い記事なのでいろいろ略)

  • 市民科学者の増加

Natureエディトリアル
Rise of the citizen scientist
18 August 2015
http://www.nature.com/news/rise-of-the-citizen-scientist-1.18192
海洋から土壌まで、技術がアマチュアの研究への役割を変えている。しかし関与が大きくなれば対応すべきこともある
科学者ではない人でも空気や土や水のサンプルを集めることに協力したりインターネットでタンパク質やRNAをほどくのに協力したりすることができるようになった。アマチュアが参加した研究の論文が増えている、一方でデータの質に疑問の声もある。ただしこれは対策が簡単なほうで、もっと難しいのは利益相反である。「市民科学者」ボランティアは強い政治的意志があることが調査で示されており、仕事の信頼性確保のためには、科学者同様、アマチュアの動機や意図の透明性確保が必須である。

  • 米国のティーンエージャーでの電子タバコの使用とその後の喫煙研究についての専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study on e-cigarette use and subsequent smoking in US teenagers
August 18, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-on-e-cigarette-use-and-subsequent-smoking-in-us-teenagers/
JAMAに発表された電子タバコの使用者はそうでないヒトに比べて煙の出るタバコを試す可能性が高いという研究について
ロンドン大学タバコ依存研究ユニット長で臨床心理学教授Peter Hajek教授
この新しい研究は電子タバコの吸入が喫煙を導くことを示したのではなく、電子タバコに惹かれる人たちは喫煙に惹かれる人たちと同じであることを示しただけである。白ワインを飲むヒトは飲酒しないヒトに比べて赤ワインを飲む可能性が高い。電子タバコが喫煙を導くかどうかを調べるには他のタイプのデータが必要で、それはある。
スターリング大学健康政策教授でがん予防のための行動研究座長Linda Bauld教授
この研究は喫煙したことはないが電子タバコを使用したことのある若い人を追跡した最初の研究である。カリフォルニアの中学校の生徒のうち喫煙したことはないが電子タバコを使用したことがあるのはごく僅かで(8.7%, 220人)、この集団はその後6-12ヶ月の間にタバコ製品を使用する可能性が高い。この知見は小規模で電子タバコのせいで喫煙率が上がったことを示唆するものではない。しかしタバコ製品が広く入手可能であること、害の少ない電子タバコを使うヒトでもまだ喫煙しようとする可能性があることを示した。政府は若い人を守りたいならタバコの入手しやすさを制限することを優先的に行う必要がある。

  • AS YOU SOWはソイレントスーパーフードに対して訴える意向

As You Sow
(環境保護などの活動をしているNPO。種を蒔いたからには(刈り取らなければならない)という意味)
AS YOU SOW FILES NOTICE OF LEGAL ACTION AGAINST SOYLENT SUPER FOOD
August 12, 2015
http://www.asyousow.org/wp-content/uploads/2015/08/As-You-Sow-Soylent-Press-Release_20150813-2.pdf
最近New York Times と Forbesがシリコンバレーで働く人たちがソイレントを食事代わりにしているという記事を掲載した。AS YOU SOWはソイレントがカリフォルニアの安全な飲料水と毒物執行法(Prop65)違反であると訴える意向を通知する。鉛とカドミウムの量が消費者に警告表示すべき量以上だからである。
AS YOU SOWが独立した検査機関に委託した検査結果によるとSoylent 1.5の1回分は、鉛がカリフォルニアの生殖健康安全レベルの12-25倍で、カドミウムは最低4倍である。
(豆乳ベースだからどう頑張ってもカリフォルニアの基準は守れないだろう。別にソイレントだけではないが。ソイレントは「スーパーフード」ではないしProp65が健康を守っているわけでもない。怪獣対決?という感じ。対消滅するといいのに。)

  • EPAに罰を与え改革せよ

Punish and Reform the EPA
Posted by Alex B. Berezow & Todd Myers
http://www.realclearscience.com/blog/2015/08/punish_and_reform_the_epa.html
Animas川を汚したことについて、これまでEPAが企業に対して行ってきたのと同じように厳しい罰金を要求せよ、そうしないならダブルスタンダードだろう、という意見。

  • ヘナタトゥーに警告

Warning over henna tattoos
19 August, 2015
http://www.irishnews.com/news/healthcarenews/2015/08/19/news/warning-over-henna-tattoos-234320/
British Skin Foundationが、この夏病院に来る人が増加しているため、いわゆる「ブラックヘナ」一時的タトゥー(BHTT)と呼ばれるものに対して警告を発表した。
休暇やお祭り、パーティなどに参加するためにBHTTをする人たちはその危険性に気がついていない。BHTTのほとんどはヘナなどではなくパラフェニレンジアミン(PPD)を使っている。PPDは髪の毛を染めるのには使用が認められているがタトゥーのように皮膚と接触するものへの使用はEUでは違法である。
(写真が痛そう)
British Skin Foundation
プレスリリース
‘BLACK HENNA’ TEMPORARY TATTOO WARNING FOR CHILDREN & FESTIVAL-GOERS THIS SUMMER
http://www.britishskinfoundation.org.uk/LinkClick.aspx?fileticket=t81wiBGxJB4%3d&tabid=172
こどもに多いとのこと。

  • ワシントンで大麻使用者運転による死亡事故が増加

More pot-impaired drivers in deadly crashes in Washington
August 19, 2015
http://www.charlotteobserver.com/news/article31577000.html
州の交通安全委員会の新しいデータによると、ワシントンでは大麻使用者の運転する車での死亡事故が増えている。
死亡事故に関係したドライバーでマリファナ陽性だった人の数が2013年から2014年に2倍になった。2013年に大麻販売が合法化された。飲酒運転による死亡事故は減っている。

  • 大麻のテレビコマーシャル?

Marijuana TV commercial? What marijuana TV commercial?
Tuesday, 18 August 2015
http://portlandtribune.com/pt/9-news/269879-144939-marijuana-tv-commercial-what-marijuana-tv-commercial
オレゴン大麻産業協会の創設者でレクリエーション用の大麻合法化キャンペーンを行ってきたAnthony Johnsonが、ポートランドの地元放送局が、予定されていた最初の大麻のテレビコマーシャルを取りやめた、と語った。「歴史的」出来事に注目が集まりすぎたため、とのこと。
(ラジオやネットや印刷媒体では散々やっている)

Narcolepsy medication modafinil is world's first safe 'smart drug'
Helen Thomson Thursday 20 August 2015
http://www.theguardian.com/science/2015/aug/20/narcolepsy-medication-modafinil-worlds-first-safe-smart-drug
ハーバードとオックスフォード大学の研究者らが包括的レビューを行って、モダフィニルは世界初の安全な「スマートドラッグ」だと言った。この薬はナルコレプシーの治療薬であるが、健康なヒトが処方なしに使用することが増えていて、意志決定や問題解決、そして創造性豊かな思考すら促進する可能性がある。長期影響については限られた情報しかないが短期的には安全なようだと言う。
モダフィニルは英国の大学でますます普通に使用されるようになってきていて、簡単にネットで購入でき、主に試験の前に成績を上げようとして使われている。
新しいレビューはEuropean Neuropsychopharmacologyに本日発表された。
モダフィニルの製造企業はその適用を試験のドーピング用に拡大申請しようとはしないだろうが、この薬を認めるべきか禁止すべきかについての倫理的議論が現実的になってきた。

Fentanyl overdoses in Quebec City linked to laced oxycodone
Aug 19, 2015
http://www.cbc.ca/news/canada/montreal/fentanyl-overdoses-in-quebec-city-linked-to-laced-oxycodone-1.3196121
カナダ全体で報告されている致死的フェンタニル過剰使用の急増がケベック市に到達した。保健当局はここ数ヶ月で11人が過剰使用し3人が死亡したという。
警察と医師が7月に警告しているが死者は4月に遡る。過剰使用者の年齢は29-42才。
フェンタニルの入ったニセのオキシコドンが見つかっている。
(にせものの写真がある。ところで北米で販売されている鎮痛剤ってどうしてあんなに無造作にボトルにじゃらじゃら入ってるんだろう、とは思う。)