食品安全情報blog過去記事

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論文

  • あなたの家の微生物があなたについて語ること

Scienceニュース
What the microbes in your home say about you
By Sid Perkins 25 August 2015
http://news.sciencemag.org/biology/2015/08/what-microbes-your-home-say-about-you
Proceedings of the Royal Society Bに発表された新しい研究によるとリビングのドアの枠のハウスダストにいる細菌から、その家に男性と女性が何人いてペットのイヌやネコがいるかがわかる。男性が多いと皮膚と便に住む細菌が多い。これは男性の方が皮膚面積が大きいことと女性のほうが皮膚の手入れを頻繁にするためだと考えられる。猫がいると24種類の細菌が多く犬だと別の56種が多い。

Effect of physical activity, nutrient supplementation interventions on cognition
25-Aug-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/tjnj-eop082115.php
JAMAの8月25日号に発表された二つの研究は認知機能への運動と栄養サプリメントの影響を探っている。
一つは24ヶ月の運動介入と健康教育プログラムの影響を比較したもので70-89才の1635人の高齢者のライフスタイル介入と独立性(LIFE)研究の報告。運動と教育群に認知機能や認知症発症に差はなく2年間安定していた。両方に効果があった可能性は否定できない、と著者は書いている。
もう一つの研究は加齢性黄斑変性リスクのある人からなる加齢性眼疾患研究2 [AREDS2]の参加者で長鎖多価不飽和脂肪酸1g及び/またはルテイン10mg/ゼアキサンチン2mgとプラセボを比較した。また全ての参加者はビタミンC、E、ベータカロテン、亜鉛の組み合わせを与えられている。眼の検査以外に認知機能検査を行っていてサプリメント投与により認知機能に有意のある差はなかった。著者はサプリメントの開始時期が遅かった、あるいは5年が短すぎ可能性があると推測している。
エディトリアルではこれらの結果を根拠に高齢者にライフスタイル介入をするのは無駄だというニヒリズムに陥らないようにと記している。
認知機能低下の兆候が現れてからライフスタイルを変えたりサプリメントをとったりするより生涯にわたって運動したり食生活を良いものにするように薦めるほうが効果があるだろう。

これについてNIHからのプレスリリースをODSが紹介
NIHの研究はオメガ3やその他の栄養サプリメントは認知機能低下にはメリットがないことを示す
NIH Study Shows no Benefit of Omega-3 or Other Nutritional Supplements for Cognitive Decline
08/25/15
https://nei.nih.gov/news/pressrelease/cognitive_decline
一部の研究でオメガ3脂肪酸の多い食事は脳の健康によいことが示唆されているものの、NIHの研究者らによる大規模臨床試験ではオメガ3サプリメントは高齢者の認知機能低下を遅らせることはない。4000人の患者を5年フォローしたこの種のものとしては最大規模のこの研究は本日JAMAに発表された。
NIHの国立眼研究所臨床副部長で疫学臨床応用副部長Emily Chew医師は「一般的信念とは違って、オメガ3サプリメントが認知機能低下を止めるのに何の効果もなかった」という。
(以下研究の紹介)

  • 学校給食研究:子ども達が義務となった野菜や果物をゴミ箱に入れている視覚的証明

School lunch study: Visual proof kids are tossing mandated fruits and veggies in trash
25-Aug-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/uov-sls082415.php
Public Health Reportsに8月25日にオンライン発表された新しい研究によると、学校給食で野菜と果物をとることが義務化された結果、子ども達は義務的にトレーにのせた野菜や果物をそのままゴミ箱に捨て、摂取量は減っていることが確認された。
Healthy, Hunger-Free Kids Act of 2010が成立した前後での比較をした研究としては初めてのものの一つ。この法律は2012年に発効し、生徒達は指示通りトレーに野菜や果物をのせてはいるものの食べてはおらず廃棄される食品が約56%増えた。
北東部の2つの小学校に10回以上訪問して約500のトレーを調査した。
摂取量を増やすためには丸ごとの野菜や果物をそのまま提供するのではなく切ったり料理に使ったりする必要がある
(この法律はオバマ大統領夫人の熱も入って鳴り物入りで成立したもの。しかしガーデニングでオーガニックだなんだと言っているセレブな人の理想と、半分以上が支援が必要な貧しい地域の小学生の実情はかみ合わない。でも切るくらいしてあげればいいのに。)

  • お香はあなたの健康に悪い?

Is incense bad for your health?
25-Aug-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/s-iib082515.php
屋内でお香を焚くことに関連する健康リスクを評価した研究の結果、お香を焚くことには健康警告が必要だろう。Environmental Chemistry Lettersに発表された中国の研究。
沈香と白檀を含む2種類のお香を使って煙の成分を調べタバコと比べた。お香の煙は変異原性があり、粒子が小さい。また64化合物が検出された。

  • 研究者らが牛のヒエンソウ毒性を調べる

Researchers study tall larkspur toxicity in cattle
25-Aug-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/asoa-rst082515.php
米国のフットヒルズ西部と山の放牧地では野生のヒエンソウ(Delphiniumの仲間)が牛の死亡の大きな原因である。多くの場合牛はヒエンソウを食べる量を調節して中毒にならないが食べ過ぎ、早く食べる、あるいは微量でも長期間食べると中毒になる。症状は筋肉の衰弱などで歩行不能になり死亡する。
Journal of Animal Scienceに発表された最近の研究でユタ州ローガンのUSDA-ARS毒草研究室の研究者らが約500kgの去勢雄牛が中毒にならずに食べられるヒエンソウの量を決定した。この研究では12頭の牛にヒエンソウに含まれる有毒アルカロイドの代表的なものである"MSAL-タイプ"のアルカロイド8mg/kg相当を一回与えた。全ての牛が中毒症状を発現し歩けなくなった。3か月後毎日 8, 4 あるいは 2 mg/kgの"MSAL-タイプ"アルカロイドを4日間あるいは症状が出るまで与えたところ2 mg/kgでは影響が無く4 mg/kgでは全頭歩行困難になった。従ってNOAELは2 mg/kgである。これは500kgの牛が1日1.25kgの生鮮ヒエンソウを食べられることに相当する。
(動物が毒草を食べないなんてことはなく普通に死んでしまうから・・自然は優しくなんてないので)