食品安全情報blog過去記事

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その他

GM作物の拒否は科学の失敗ではない
Natureコラム
Rejection of GM crops is not a failure for science
Colin Macilwain 02 September 2015
http://www.nature.com/news/rejection-of-gm-crops-is-not-a-failure-for-science-1.18271
遺伝子組換え作物への反感を維持している政府は、一般の人々の同意と科学的根拠のバランスをとっているのだとColin Macilwainはいう
先週ロイター通信がドイツはGM作物栽培モラトリアムを継続する予定だと報道した。この決定は多くの批判を浴びるだろう。先月スコットランド政府が同じような発表をしたときも植物生物学者や先のEC主任科学アドバイザーAnne Gloverのような科学界の主導者から非難された。批判者はGM禁止は科学の侮辱であり規制は根拠に基づいて行われるべきだと言う。
私は科学的方法の大いなる愛好者である。科学者や技術者がいなければ私は飛行機に乗っていないだろうし根拠に基づいた政策という一般的基本方針も支持する。しかし私はスコットランド、ドイツ、フランス、イタリアなどがGM作物技術を欧州の田舎から排除し続けるために立ち上がったことには楽観している。私はイングランドの対応を興味をもって待っている。
これらの国がどう決定しようと、掛け金はかつてほど高くはない。20年前に米国がGMトウモロコシと大豆を認可し始めたとき、多くの作物生産者は世界のGM技術の受容は欧州が受容するかどうかに大きく依存すると考えた。もうそれは事実ではない。欧州で受容されていないにもかかわらず世界のGM作物は一貫して栽培面積を増やしている。今や頭打ちになった。企業の発表によると昨年の増加率はわずか約3%で1億8100万ヘクタールである。GM栽培面積の5/6はアメリカ大陸である。残りはインドや中国の、主に非食用の綿などである。現在栽培されているGM系統は大規模農業のニーズに適したものである。欧州がどう決定しようと世界の他の地域はそれに続くことはないだろう。
そして今回、欧州のGM議論は実際にはGM作物そのものについてではなく各国が如何にリスクを評価して管理すべきなのかについてである。15年前に欧州がGM技術に背を向けたとき、GM支持派はそれを欧州の危機の信号として警告した。しかし欧州が反技術になったということはない。ナノテクベースの創傷被覆や携帯電話を拒否してはおらず、むしろ世界でも早く採用したほうである。
GMの話にもかかわらず、根拠に基づいた政策は生きている。しかし良いリスク管理のためには一般の人々と早期からコミュニケーションすることと科学だけではなく多くの要因を慎重に推し量ることが必要である。しかし一般的には企業は科学的リスク評価が規制の全てだとしたがる。環境保護主義者は予防原則を好みそれは革新者に証明の負担を課す。現実的には政府はその二つの間の歩く必要があるがどこに線を引くべきだろうか?
米国では重要な規制上の決定は1995年になされた。そこで「実質的同等性」を基礎に据えた。「実質的同等性」はGM技術への一般からの信頼を損ねる原罪である。遺伝子組換えは遺伝子を組み合わせる広範な能力をもちその使用あるいは誤用は世界の生態系や食糧供給に大きな影響をもつブロックバスター技術であり植物交配と「実質的同等」などでは決してない。
この原罪は間もなく無くなるかもしれない。米国大統領の科学アドバイザーJohn Holdrenが7月2日に米国のGM規制枠組みを見直すように助言した
(実質的同等性って別に技術について言っているわけではなくできた作物のこと。世界を変えた緑の革命GMじゃない。欧州は食用含め酵素関係ではGM技術結構使いまくってるけど気にしないで特定の農作物だけ嫌うから整合性がないってだけ。誤用が恐ろしいのはなんだってそうだけどGMはそんなに万能?)

  • ハイイログマの研究のデータ偽造により論文取り下げ

ScienceInsider
Falsified data on grizzly bear study leads to paper retraction
By Hanae Armitage 2 September 2015
http://news.sciencemag.org/scientific-community/2015/09/falsified-data-grizzly-bear-study-leads-paper-retraction
1年ほど前、グリズリーが如何にして冬ごもりの前に体重を増やしつつ糖尿病のような肥満関連健康問題をおこさずにいられるのかを発見したとする論文を研究者らが発表した。昨日, Cell Metabolismが、Amgenの著者らがオリジナル論文に偽造データが含まれると発表したためその論文を取り下げた。コンピューターのファイルを精査したところ特定のデータが論文の主張を支持するよう改ざんされていた。Amgenの外部の人は誰がやったのか知らないが同社は問題の科学者は解雇されたという。

(こんなふうに注目されていた。アムジェンの株価にも影響しただろう
クマからの健康アドバイス日経サイエンス2015年3月号より
http://www.nikkei-science.com/?p=45812
冬眠する動物からの健康アドバイス
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v12/n2/%E5%86%AC%E7%9C%A0%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B9/60028

The WashingtonPost
Why ‘GMO-free’ is a marketing ploy you shouldn’t fall for
Rachel Feltman September 2
http://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2015/09/02/why-gmo-free-is-a-marketing-ploy-you-shouldnt-fall-for/
多くの企業が遺伝子組換えや「ナチュラルでない」成分を排除するようレシピを変更していて消費者の多くがこれを素晴らしいニュースだと考えている。しかしこれらの動きは科学に基づくものではなく非合理的な恐怖を利用したもので、「ナチュラルでない」成分を全て避けようとするあなたの選択はあなたが考えるほど健康的ではないだろう。
GMO」表示を安全か安全でないかを判断するのに使うことはできない。それは食品についてのものではなく、食品を作る方法についてのものである。GMOを避けようという強迫観念は食品の安全性についての意味を無視している。一つの例はBtとしてよく知られている殺虫剤として使われる細菌Bacillus thuringiensisである。Btを作る遺伝子組換え作物のほうが、非遺伝子組換え作物にBtを散布した場合より消費者の食べる量は少ない。もしあなたがGMO作物の作るBtが危険だと思っているのならBtを散布した作物だってそうだろう。
そして反GMOマーケティングで消費者を欺いたと既に訴えられているChipotleについては、同社のソフトドリンクはGMOフリーではないし家畜にはGMO飼料を与えている。それに問題はない。しかしこのことはこの会社が食品の安全性を本当に心配しているのかという深刻な疑問を提示する。
他合成色素を天然色素に変えたり甘味料を変えたりする事例も科学に基づいているわけではない。企業がいろいろな宣伝をしているとき、それが本当にあなたの望んだことなのか考えてみよう。栄養について心配しているなら(派手な宣伝ではなく裏の栄養成分表示の細かい数字を)もっとしっかり見る必要がある。

  • 専門家に聞こう:トランス脂肪の表示

Ask the Experts  Labeling Trans Fats
by Berkeley Wellness | September 02, 2015
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/nutrition/article/labeling-trans-fats
Q:トランス脂肪は禁止されたと聞いた。じゃあ部分水素添加油を含む食品であっても「トランス脂肪ゼログラム」という表示は信用できるのか?
A:残念ながらノーである。2015年6月にFDAは部分水素添加植物油を「一般的に安全とみなされる(GRAS)」リストから外す決定を最終的なものにした。そのことにより食品中の人工トランス脂肪は排除されるだろう。しかし製造業者が製品から排除するのは2018年までである。それまではトランス脂肪表示にはごまかしがあり続けるだろう。
トランス脂肪は液体植物油に部分的に水素を添加すると生じる、つまり水素原子を加えると半固形脂肪になり長持ちする。それは企業にとって良いことだがあなたにとっては健康上良いことではない。微量のトランス脂肪は天然に乳製品や肉製品にも含まれるがこれらに人工トランス脂肪の有害影響があるようには見えない。
トランス脂肪含量表示が義務化された2006年以降、製造業者は既に多くの食品からこれらを排除しあるいは減らしていて1人当たりの摂取量は78%低下している。
しかし表示には抜け穴があってトランス脂肪「ゼロ」を表示している多くの食品には実際には微量のトランス脂肪が含まれる。一回提供量当たり0.5g以内ならゼロと表示できるからだ。このことはあなたが一回分以上を食べると、あるいは一日にいろいろなトランス脂肪含有食品を食べると加算される可能性がある。2018年にトランス脂肪禁止が完全発効するまで、成分に部分水素添加油を含むものには注意しよう。全てのトランス脂肪を避けることは難しいが可能な限り少なくしよう。それらを含む食品はいずれにしろ一般的にあまり健康的ではないので。

  • カナダ糖尿病学会が連邦政党に砂糖入り飲料への課税を導入するよう要請

CTVNews.ca
CDA pushes federal parties to adopt tax on sugary drinks
September 2, 2015
http://www.ctvnews.ca/health/cda-pushes-federal-parties-to-adopt-tax-on-sugary-drinks-1.2545609
http://www.newswire.ca/news-releases/canadian-diabetes-association-urges-federal-parties-to-make-the-health-of-canadians-a-priority-523740561.html

Police warn people about fake, potent LSD in N.L.
The Canadian Press
Published Wednesday, September 2, 2015
http://www.ctvnews.ca/canada/police-warn-people-about-fake-potent-lsd-in-n-l-1.2544537
LSDの20倍以上強力な幻覚作用があるN-Bomb, Smilesおよび Smiley Paperとして知られる薬物で、カナダで過剰使用による死亡例がある。LSDより分解しにくく過剰使用になりやすい

  • 塩の摂取が直接肥満リスクを増やす可能性を報告した研究についての専門家の反応

SMC
expert reaction to study reporting that a high salt intake could directly increase risk of obesity
September 2, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-reporting-that-a-high-salt-intake-could-directly-increase-risk-of-obesity/
Hypertensionに発表された論文が塩の摂り過ぎと肥満リスクに直接の関連がある可能性があるという
St George’s病院NHS トラスト、St George’s大学病院財団トラスト主任栄養士Catherine Collins氏
これまで塩の摂取と肥満の関連についての主張は、塩が多いと喉が渇くので砂糖入り飲料などを余計摂取してカロリーを多くとるためだとされてきた。この論文では塩と肥満の関連を明確にしようと砂糖入り飲料(SSB)の摂取量についても検討した。この研究では成人と子どもの塩の摂取量をNDNS法(多分信頼できない)と24時間尿(極めて信頼性が高い)の両方のデータから導出した。統計的モデルを使っていても、塩の摂取量の多い成人は最もBMIが高くカロリー摂取量も多いことは無視できない。全体的な食事と塩の摂取量とSSBの摂取量に関係がないこと、塩の摂取量の多さとカロリー摂取量の多さとBMIの大きさに関連があることは驚くべきことではない。
子どもの肥満や過体重にはBMIのみを指標にするのは適切ではない。十代の子どもの親なら子どもが外や家で食べる量をコントロールするのがどれだけ困難かわかるだろう。この時期の成長する子ども達の体重や体型の変化を塩のせいにするのはあまりにも単純化しすぎだと思う。
基本としては必要以上にカロリーをとれば肥満になる。カロリーが何に由来するかは重要ではない。子どもの頃に比べれば成人の砂糖摂取は割合が少なくなるがそれは甘いものよりうまいもの、つまり塩の多いものを食べるようになるせいであろう。この知見はカロリーの高い食事は肥満につながると解釈できる。
オックスフォード大学食事と集団の健康教授Susan Jebb教授
これは塩摂取量の多い人が塩摂取量の少ない人より肥満や過体重が多いことを観察した小規模横断研究である。それは驚くべきことではない。一般的に食べる量が多いと塩の摂取量も多く肥満も多い。著者らはこの影響がカロリーと関係なく塩のせいだと主張しているが摂取カロリーは自己申告なので信頼性を確認できない。誤報告を統計学的に補正しようとしているが単純に人々を間違った報告をする可能性の高い人と分類するのはエネルギー摂取量と体重の関連を調べるのには全く不適切である。横断観察研究は関連を示すのみで因果関係を証明しない。減塩は心血管系リスク削減のためには重要であるが、このような薄弱な研究をもとに塩が肥満の原因だと主張することは、体重増加の主要因である食べ過ぎから関心を逸らすことになる。私は人々に塩を減らせば痩せるという間違った考えを広めて欲しくない。