食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 飲酒、心血管系疾患、がん、死亡率についての研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study on alcohol consumption, cardiovascular disease, cancer, and mortality
September 17, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-on-alcohol-consumption-cardiovascular-disease-cancer-and-mortality/
The Lancetに所得レベルの異なる集団での飲酒の影響を調べて、飲酒は心臓発作の少なさとある種のがんや傷害の高さに関連する、高摂取量は死亡率の高さに関連することを報告した。
Essex大学臨床生理学(心臓学)准教授Gavin Sandercock博士
いくつかの研究で適量飲酒が死亡率の低さと関連することが報告されているのでこの知見は驚きではない。プレスリリースで心筋梗塞(MI)が24%減ると言っているがその数字は実際の論文には出てこない。また相対リスクで24%減は絶対リスクでは極めて小さく一般化は難しい。少量飲酒者でMIが0.82%、中程度飲酒者で0.96%、大量飲酒者で1.23%である。大量飲酒者と少量飲酒者のMIの絶対リスクの差は0.41%である。これらの数値は1000人の少量飲酒者のうち8人がMIになり中程度飲酒者なら10人、大量飲酒者なら12人ということである。さらにこの数値は補正がされていないので他の要因を考慮すると差はなくなるだろう。
さらにプレスリリースでは「大量飲酒と暴飲はどちらも全死亡率の高さと関連する」と言っているが、これは生涯全く飲まない人との比較であることにも注意すべきだろう。英国人ではそれは少なく、禁酒家は5人に1人で、生涯飲まない人はさらに少ないだろう。
‘Alcohol consumption and cardiovascular disease, cancer, injury, admission to hospital, and mortality: a prospective cohort study’ by Smyth et al. published in The Lancet on Thursday 17th September.

  • 心血管系疾患とがん予防のためのアスピリンについての助言案

米国予防医学専門委員会
Draft Recommendation Statement
Aspirin to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer
http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Page/Document/draft-recommendation-statement/aspirin-to-prevent-cardiovascular-disease-and-cancer
2015年10月12日までパブリックコメント募集
50-59才の成人で10年のCVDリスクが10%以上高く出血リスクが高くなく最低10年以上余命があって10年以上低用量アスピリンを毎日使用する意志がある人については心血管系疾患と直腸結腸がんの一次予防としての低用量アスピリンの使用を薦める、グレードB

  • 妊娠中のアルコールは少しならオーケー?

Is Some Alcohol Okay in Pregnancy?
by Berkeley Wellness | September 15, 2015
http://www.berkeleywellness.com/self-care/preventive-care/article/some-alcohol-okay-pregnancy
妊娠中の飲酒は「ほんのちょっと」なら大丈夫かと読者からしばしば聞かれる。何十年も研究されているがその答えはまだはっきりしない。研究の結論はいろいろでそのため医師でも立場が異なる。例えばある本では妊娠中でも週に一回から毎日一杯まで飲酒できると主張して議論になった。しかしCDCによると妊娠中あるいは妊娠しようとしているときの飲酒に安全な量はわかっていない。また妊娠中に飲んでも安全な時期というものもない。
人間で臨床試験をすることができないし多くの場合飲酒量は自主申告なので研究結果が一貫しない。妊娠中に少し飲酒した女性でも多くの場合健康な赤ちゃんを産む。しかし我々は成長中の胎児へのアルコールの影響や長期健康影響について知らないことが多い。研究で有害影響が観察されないことは有害影響がないことを意味しない。念のため妊娠中は飲酒しないことを薦める。
父親になる予定の人と飲酒
女性は妊娠しようとするなら飲酒しないように助言されるが男性はどうだろう?アルコールは精子にも影響する。研究はあまりないが赤ちゃんを授かりたいなら3ヶ月以上前から断酒を薦める。精子の発育に3ヶ月かかるので。
そして男女どちらも喫煙すべきではない

  • 次のFDA長官候補は心臓医

ScienceInsider
Cardiologist nominated to be next FDA chief
By Science News Staff 16 September 2015
http://news.sciencemag.org/policy/2015/09/cardiologist-nominated-be-next-fda-chief
大統領が現在FDAの医薬品と煙草副長官であるRobert Califfを長官にノミネートした

  • Science特集:加齢を食い止めたい男

Feature: The man who wants to beat back aging
By Stephen S. Hall 16 September 2015
http://news.sciencemag.org/biology/2015/09/feature-man-who-wants-beat-back-aging
FDAに対して前例のない抗加齢臨床試験を提案しているNir Barzilaiの話
2型糖尿病の治療薬メトホルミンを用いて高齢者3000人で二重盲検RCTを実施したい
アンチエイジング」という言葉は歴史的にペテン師や詐欺と関連が深いため抵抗が大きい。
アンチエイジングという言葉を使っている人はまともな臨床試験をしようとしない場合がほとんどなので特異ではある)

  • Nature特集 学際性

Interdisciplinarity
http://www.nature.com/news/interdisciplinarity-1.18295
エネルギー、食品、水、気候、健康などの大きな課題について科学者や社会科学者がどうやって協力して解決していくかを探る
イラストがアメコミっぽい
垣根を越える必要があるのはみんなわかっているが科学の進歩は凄まじく情報量が多すぎて誰も1人ではあらゆる分野を扱えない。チームワークが必要だが難しい。そして特に協力したがらずまとまりもないのが社会科学者。他の分野の学問への敬意のなさはあらゆる方向に存在する。学際研究は専門誌に成果を発表しにくいことも問題。

Natureニュース
Dramatic rise seen in antibiotic use
17 September 2015
http://www.nature.com/news/dramatic-rise-seen-in-antibiotic-use-1.18383
新しい報告書は世界の抗生物質使用と耐性のこれまでで最も包括的な像を描く
9月17日に発表された報告書によると、世界の抗生物質使用は、主に中−低所得国の需要増で増加し続けている。
地図あり

  • 福祉違反がnatureに動物実験論文発表についてのポリシーの更新を促す

Welfare breach prompts Nature to update policy on publishing animal experiments
Daniel Cressey 16 September 2015
http://www.nature.com/news/welfare-breach-prompts-nature-to-update-policy-on-publishing-animal-experiments-1.18384
米国のチームがデータを撤回しマウスの腫瘍をあまりにも大きくさせすぎたことを認める
Natureは論文の修正を発表し、今後動物実験を報告した研究者にはさらなる情報を求めると言う
問題の論文は2011年に発表されたハーバード大学医学部とマサチューセッツ総合病院マサチューセッツBroad研究所によるpiperlongumineという分子がマウスのがん細胞を選択的に殺すことができるというものである。Natureの修正によると、その実験では一部のマウス腫瘍をマサチューセッツ総合病院の動物のケアと使用に関する委員会の動物福祉ガイドラインの設定した最大直径である1.5cmより大きくなることを許していた。このことでマウスの苦痛がより大きくなり「実験プロトコール違反」である。
論文の一部データの修正という対応をとったが論文を取り下げるべきだという主張もある
腫瘍の大きさについての基準は世界中で組織により異なる。英国では1.2cm、米国では2cmを最大にしている

  • ズッキーニ中毒

ドイツ人が近所の人の毒ズッキーニで殺された
German Killed by Neighbor’s Poison Zucchini
August 23, 2015  By Elizabeth Licata, Writer
http://www.thedailymeal.com/heidelberg-germany-zucchini-toxin-poison/82315
ハイデルベルクの年金暮らしの夫婦が隣人の庭でとれたズッキーニをもらってシチューにして食べた。妻はそのシチューはびっくりするほど苦かったという。まもなく調子が悪くなったが夫はさらに悪化し入院して妻は数日で退院したが夫は病院で死亡。医者はククルビタシン中毒だという。普通あまりにも苦いので中毒になるほど食べられないが、妻は少ししか食べなかったが夫は食器を空にしたという。妻が言うには「そのシチューはほんとうに苦かった。でも私達は苦いのに慣れていた。私達は庭でラディッシュを育てているがそれもこんなふうに苦い」
Courgette stew kills pensioner in Heidelberg
http://www.thelocal.de/20150821/courgette-stew-kills-pensioner-in-heidelberg
夫79才妻80才
Health warnings in Germany after man dies of eating poisoned zucchini
Fri Aug 21, 2015
http://www.presstv.ir/Detail/2015/08/21/425651/man-died-Germany-poison-zucchin-health
(妻の作ったものはなんでも文句を言わず食べる優しい夫だったのだろうか。しかしコメント欄にGMのせいだモンサントの陰謀だと言う人が集まっていて闇)

  • 学校がアレルギーのおそれにより果物を禁止

School bans fruit over allergy fears
16 Sep 2015  By Nicola Harley
http://www.telegraph.co.uk/foodanddrink/healthyeating/11870245/School-bans-fruit-over-allergy-fears.html
Derbyshire のReigate Park小学校は、職員や生徒にアレルギーのある場合には、チョコレート、ナッツとともにキウイとマンゴーも禁止
(これはアレルギーのある本人だけではなく全ての生徒と職員が食べてはダメということ。ナッツ禁止はわりとよくみられるが果物はたまに。果物空気中に飛び散るかなぁ??)

  • オーストラリアの科学者が研究データの加工を認める

Australian scientist admits fabricating research data
3 hours ago
http://www.bbc.com/news/world-australia-34275648
Ramiprilの論文取り下げ
Notice of Retraction: Ahimastos AA, et al. Effect of Ramipril on Walking Times and Quality of Life Among Patients with Peripheral Artery Disease and Intermittent Claudication: A Randomized Controlled Trial. JAMA. 2013;309(5):453-460
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2442406
オーストラリアの有名な科学者であるAnna A. Ahimastos。メルボルンの一流の研究所Baker IDI Heart & Diabetes研究所は、研究者は辞職したと言う。現在他の研究についても調査中。
High-profile researcher admits fabricating scientific results published in major journals
http://www.abc.net.au/news/2015-09-17/high-profile-researcher-admits-to-fabricating-scientific-results/6781958
受賞歴もありサイエンスコミュニケーションにも関わっていた、とのこと