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研究がコメとコメ製品のヒ素による問題を明らかにする

Livsmedelsverket(Swedish National Food Agencyスウェーデン食品局)
Study reveals problems with arsenic in rice and rice products
Reviewed 2015-09-29
http://www.livsmedelsverket.se/en/about-us/press/study-reveals-problems-with-arsenic-in-rice-and-rice-products/
スウェーデン食品局による新しい研究がコメとコメ製品にヒ素があることを確認した。スウェーデンのほとんどの人は健康リスクになるほどの量のコメを食べていない。しかし毎日コメを食べる人はたくさんのヒ素を摂ることになるので食べる量を減らすようにすべきだ。もしコメをたくさんの水で茹でてそれから水を捨てるようにすればヒ素の量は半分に減らせる。
最も多くヒ素を含むのはライスケーキである。従ってスウェーデン食品局はライスケーキを6才以下の子どもには与えないよう薦める。
スウェーデン食品局は102のコメ製品のヒ素含量を調べた。スウェーデン市場にあるコメ製品のヒ素含量を知るためである。また調理によりヒ素量が変わるかどうかも調べた。
製品やブランドによりヒ素含量は異なり、一部高濃度のものがあった。急性リスクとなるほど高くはないが長期暴露はがんやその他の病気のリスクを高くする。
「結論は、異なるブランドのものを食べることや多様な食生活を送ることが良い、というものである。こうすることにより有害物質を摂りすぎるリスクを減らすことができる。これはコメやコメ製品だけではなく、全ての食品にあてはまる。」とスウェーデン食品局の毒性学者Emma Halldin Ankarbergは言う。
毎日食べないこと
スウェーデンでは多くの人がそうであるように、週に数回コメやコメ製品を食べることは健康リスクとはならない。子どもはコメやコメ製品を週に4回以上食べるべきではない。コメ製品にはライスプリン、ライスヌードル、ライススナックが含まれる。
成人は毎日コメ製品を食べるべきではない。毎日、あるいは一日に数回コメを食べる人はたくさんのヒ素を摂取することになる。
「例えばアジアの多くの国々の人のように、コメを多く食べる伝統の人にとって、それは難しいことを我々は理解している。しかしそれでも我々の助言は徐々にコメを減らすべきであるということである。」とEmma Halldin Ankarbergは言う。
また自分で調理することでコメのヒ素を減らすこともできる。たくさんの水で茹ででその水を捨てれば、コメのヒ素は半分以下になる。しかし茹でる前に洗うだけではヒ素はなくならない。
ライスケーキのヒ素濃度が高い
スウェーデン食品局の調査では他のコメ製品に比べてライスケーキのヒ素が多い。週に2-4個のライスケーキを食べる小さな子どもは摂りすぎになるリスクがある。従って6才以下の子どもにはライスケーキは与えないこと。
「多くの子ども達がライスケーキをスナックとして食べているが、残念ながら我々はそれをしないように助言しなければならない。他の国でも同じように助言している」とEmma Halldin Ankarbergは言う。
玄米は白米に比べてヒ素が多い。これはヒ素がコメの皮の部分に濃縮されるからである。
「一般的にはスウェーデン食品局は健康のために全粒穀物を薦めているが、コメについては玄米を制限すべきである」とEmma Halldin Ankarbergは言う。
コメの最大基準
ヒ素は天然に土壌や岩盤に含まれ、植物により吸収される。コメは特にヒ素を良く吸収し蓄えるようだ。EUは2016年1月1日から適用されるコメのヒ素基準に合意した。スウェーデン食品局の助言はこの基準が発効した後も適用され続ける。なぜならばコメの最大基準値が消費者を十分に保護するためには高すぎるからである。
「コメとコメ製品を食べる量について助言をするだけでは長期的問題解決にはならない。そのためスウェーデン食品局はヒ素濃度の高い製品を市場から排除するために最大基準値をさらにさげるためにはたらきかける。さらに企業に対し可能な限りヒ素を含まないコメを使うよう強く求める。」とEmma Halldin Ankarbergは言う。
この研究について
今年の研究は先の2011-2012年の子ども用食品の分析研究のフォローアップである。その時ヒ素も分析した。それ以降スウェーデン食品局は6才以下の子どもにはライスドリンクを与えないよう助言してきた。この助言は今も生きている。
2015年調査では合計102製品を調べた:
コメ(バスマティ、ジャスミン、長粒、リゾット、玄米)、ライスケーキ、フレッシュライスプリン、朝食シリアル、ライスドリンク、グルテンフリーパン、麺、グルテンフリーパスタ。主要スーパーマーケットで販売されているブランドやあまり有名でないブランド、オーガニックのものを含む。
グルテン不耐の人向けのパスタやパンは高濃度のヒ素は含まなかった。
ヒ素の濃度は天然に場所や農地で違う。ヒ素が天然に土壌にあるので有機農法ヒ素の量に影響しない。従ってオーガニック製品を買っても何の違いもない。

Arsenic in rice
http://www.livsmedelsverket.se/en/food-and-content/oonskade-amnen/metaller/arsenik-i-ris/

  • 調査結果

http://www.livsmedelsverket.se/globalassets/rapporter/2015/del-1-kartlaggning---oorganisk-arsenik-i-risk-och-risprodukter-pa-den-svenska-marknaden-rapport-16-2015.pdf?id=9188
スウェーデン
要約のところだけ英語あり(11ページ)
乾燥製品(n=88)の平均無機ヒ素濃度は(min-max)67 (3-322) μg/kg.
全体的な結果は:
· ライスクラッカー (n=11) 平均152 μg/kg (max 322 μg/kg)
· 全粒コメと玄米(n=9), 平均117 μg/kg (max 177 μg/kg)
· バスマティ (n=17) 及びジャスミン米(n=18) 平均63 および 69 μg/kg,
· グルテンフリーパン 平均 42 μg/kg.
ウェットタイプのコメ粥(n=9),(60-90%が水)平均(min-max) 14 (10-17) μg/kg 、ライスドリンク (n=6), 8 (5–10) μg/kg.
(日本のコメよりずっと低い)

  • リスク評価

http://www.livsmedelsverket.se/globalassets/rapporter/2015/del-2-riskvardering---oorganisk-arsenik-i-risk-och-risprodukter-pa-den-svenska-marknaden-rapport-16-2015.pdf?id=9189
無機ヒ素について許容できる暴露レベルを0.15 μg/kg体重/dayとみなし、その30%をコメ由来にして0.045 μg /kg体重とする。
スウェーデン人の無機ヒ素暴露量は中央値で成人0.07, 11/12才0.10, 8/9才0.13,および 4才0.18 μg /kg体重/day と推定される
(無機ヒ素についてはEFSAのBMDL01は0.3 〜 8 µg/kg 体重/日でJECFAはBMDL0.5を 3,0 μg/kg体重/日としている
スウェーデン語部分はよくわからないけれどスウェーデン食品局はBMDL0.5 の 3,0 μg/kg体重/日を採用したうえで”重大さを調整した暴露マージンseverity-adjusted margin of exposure” (SAMOE)の20を使って許容できる暴露レベルを出した、らしい。どう計算しても無機ヒ素のリスクは高いという結果にしかならないのでまあいいけど)

http://www.livsmedelsverket.se/globalassets/rapporter/2015/del-3-riskhantering---oorganisk-arsenik-i-risk-och-risprodukter-pa-den-svenska-marknaden-rapport-16-2015.pdf?id=9190
コメとコメ製品のヒ素の問題は世界中で認識されており、WHOとEUは最大基準値の設定のために作業を続けてきた。この解析からは提案されているヒ素基準は意図した効果(ヒ素暴露の削減)が満たされないことを示す。従ってさらなる追加の対策(助言、企業への要請など)が必要。

スウェーデン食品局はコメのヒ素についてはずっと熱心にやっている
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20130530#p13
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20130128#p11

最近発表されたEUのコメのヒ素基準
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20150901#p2
EU基準を満たさないコメ」なんて日本では普通だけど消費者団体は騒がない。減農薬を宣伝してヒ素の多いコメもある。
アジア人は欧米人より遺伝的にがんリスクが低いようなのでコメのヒ素対策すればさらにがんが減る可能性はある。もっともタバコ対策すらできない現状ではね。
重要なのは「多様な食品」、であって和食がいいなんて言ってるのは日本だけ。韓国伝統食がいいと言っているのが韓国だけなのと同じただの偏狭なナショナリズム