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ミツバチの健康:コロニーの農薬と感染病原体への同時暴露の影響

Bee health: impact of co-exposure by colonies to pesticides and infectious agents
Published on 15/09/2015
https://www.anses.fr/en/content/bee-health-impact-co-exposure-colonies-pesticides-and-infectious-agents
ANSESは2012年に、ミツバチコロニーの弱体化、崩壊、死亡率における各種ストレス要因の同時暴露について、特にこれらの相互作用について強調した各役割について公式内部調査依頼を行った。
専門家の評価の結果、ミツバチのコロニーに影響を与える多数の感染性病原体、寄生虫、ミツバチ飼育環境に見られる多数の異物残留物(殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤)など同時に連続してミツバチが暴露される恐れのある広範なストレス要因が示された。専門家の評価はミツバチのコロニーの死亡率の原因となる複数の要因を強調し、その崩壊を究明する中で農薬と感染病原体への同時暴露の役割を力説する。
これに関連して優良養蜂規範の作成と遵守、ミツバチの農薬への暴露を全体的に減らすことを通して、ANSESはこれらすべての要因に対応することを推奨する。ANSESは基準となるミツバチの群れ(レファレンス)を設定することによりコロニーの健康状態を監視し、最終的には統一性のあるよく構成された国家レベルの観察ネットワークをつくることの重要性も強調した。EUレベルで組織された議論の枠組みで、ANSESは殺菌剤とダニ駆除剤との同時暴露の影響を計るために、殺虫剤の毒性を評価する手続きに追加試験を設けて統一することも推奨している。
世界中で、多くの受粉媒介種が全ての植物種の80%以上の生存と進化に寄与している。約20000種のミツバチはこの受粉媒介者グループの一部であり、アフリカミツバチ(Apis mellifera)を含むそのうちの850はフランスにいる。
現在まで何年もの間、ミツバチのコロニーの弱体化と死亡率につながる現象が非常に多くの国で見られハチミツの生産減の原因となっている。集約農業がおこなわれている多くの国(欧州、アメリカ)で観察されているこのミツバチコロニーの弱体化、崩壊は、そのメカニズムあるいはメカニズムに関与することを理解しようと試みる多数の研究テーマとなっている。
同時に連続して起こるストレス要因の暴露をさらに理解する
これに関連して、ANSESはミツバチのストレス要因とそれらの要因の間の相互作用に対する同時暴露問題に関して2012年に内部調査要請を行った。
本日発表された意見と報告書の中で、ANSESは「通常の」ミツバチコロニーの健康の定義、養蜂家、専門家、獣医、研究者が使用できる健康指標を提案した。この定義はコロニーの健康を適切に評価するための必須前提条件である。
ミツバチは互いに影響しうる非常に多くのストレス要因に暴露されている。これらは感染性、化学物質、物理的、栄養に関する、ミツバチ飼育、天候に基づく自然、その他の要因を含む。莫大な数の感染性や寄生虫はミツバチのコロニーに影響を与える可能性があり、非常に多くの生体異物(主に殺虫剤、殺菌剤、防カビ剤)がミツバチ飼育環境に見られる。
ミツバチの群れは多くの組み合わせ要因に同時暴露している。全ての可能性の中で、コロニーの感染性病原体の存在と多様な作用機序のある各種農薬にミツバチが暴露することが、「通常の」健康状態から、ミツバチの免疫防御や解毒メカニズムを低下させて崩壊につながる可能性のある病態へと切り替わる原因となる。
ANSESの助言
ミツバチの死亡率の原因は要因が1つだけのこともあるが、ANSESの研究ではコロニーの死亡原因には多元的な性質があることをしばしば強調しており、特に農薬と感染性病原体へのミツバチの同時暴露の重要性を強調している。これらの現象はミツバチが複数の化合物に暴露する時により一層深刻になる。ある種の相互作用は既に科学的文献で示されているが、ANSESは他の相互作用の可能性を研究するために調査を続けている。
概して、ANSESはミツバチコロニーの弱化現象の緊急性と現在立証されている性質にもかかわらず、過去数年の各機関による無数の研究が国レベルのコロニーの健康状態の診断ができていないだけでなく、感染性と化学物質のハザードへの同時暴露も確認していないことを指摘している。
このため天候のようなストレス要因について短期間で効果を出すことは不可能であるが、ANSESはコロニー弱体化に寄与することが確認されるすべての要因に関して行動を起こす必要があると強調している。
さらなるストレス要因―特に畜産学及び栄養学的要因の―を避け、これを実行するために、ANSESは健康的なミツバチとコロニーを維持するために生物学的多様性維持と優良養蜂規範に従うことの重要性を強調している。ANSESは農薬へのミツバチの全体的な暴露を下げるために農作業で使用する投与量を削減することも推奨している。
欧州レベルで組織されている議論の枠組みで、ANSESは農薬(特に殺虫剤)の市販認可の前に、それらの製品の毒性評価手順に、以下の、ある種の他の成分と一緒に慢性同時暴露の影響を評価するためのテストを組み込むべきであると助言している:
・抗ミツバチヘギイタダニ駆除剤;
・ミツバチの解毒メカニズムを阻害することが知られている抗菌剤;
・テストされる農薬が殺虫剤なら、ミツバチの飼育環境に存在することが知られている製品と同じ作用機序の殺虫剤。
この提案を実際に実行するには、必要な試験法と手順の開発の後EU規制の改訂が必要とされる。
最後に、ANSESは、関与する様々な役割の人のために地域のガイドラインを制定可能にする、フランスをほぼ完全にカバーするネットワークにグループ分けされた、参照蜂群の作成と感染病原体に関する蜂群状態の質を定量的に測定することを推奨している。
この助言により、国の調整部署の責任下で、コロニーの健康状態、感染病原体と化学物質への同時暴露、その進展に関する最新情報を作成するためのよく組織化された観察ネットワークを作り、さらに調和したガイドラインを実際に起草するべきである。
追加情報
ストレス要因に対するミツバチの共同暴露に関する意見及び報告書参照(フランス語)
https://www.anses.fr/en/system/files/SANT2012sa0176Ra.pdf
ミツバチの健康に関する記事参照
https://www.anses.fr/en/content/bee-health