食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 遺伝子ドライブが蚊をマラリアファイターに変える

Science特集
Gene drive turns mosquitoes into malaria fighters
By Elizabeth Pennisi 25 November 2015
Science 27 November 2015: Vol. 350 no. 6264 p. 1014
マラリアとの戦いに新しい協力者が現れた:動物の集団に遺伝子を広める議論の多い技術である。実験室では遺伝子ドライブは蚊をマラリア耐性にして拡散しないようにできる。遺伝子ドライブそのものはマラリアを根絶できないが、野生の蚊に応用が成功すれば病気を無くすのに役立つ。しかしこの期待を野外で実験するのはより広範な議論が解決するのを待たなければならない。この戦略の基本は、操作された遺伝子を次の世代に優先的に遺伝させることで拡大するものである。遺伝子ドライブが新たに注目されたのは今年初めにCRISPR-Cas9で編集したショウジョウバエを研究していた遺伝学者がこの戦略で変異がほぼ全てのハエの子孫に拡大するという成果にびっくりしたためである。このScienceの報告は、eLifeにCRISPR-Cas9遺伝子ドライブシステムが生態系を破壊し種全体を絶滅させてしまう可能性があると警告する論文が発表されて一年も経たないうちのものだった。
遺伝子ドライブを実験することのリスクについての嵐のような議論が直ちに巻き起こった。NASはリスクを評価し安全策を検討する委員会を招集し研究者らは実験ガイドラインを作成した。
一方カリフォルニア大学の遺伝学者Anthony Jamesは蚊をマラリアの宿主とならないようにする研究を20年やっていて2012年にマラリアに罹らなくするマウスの抗体の遺伝子を同定した。この抗体はマラリアのライフサイクルに干渉した。しかしJamesはこれらの抗体遺伝子を野生の無数の蚊に拡散する方法を知らなかった。そしてショウジョウバエで遺伝子ドライブの研究をしていたUC San Diego の遺伝学者Ethan BierがJamesの問題を解決できると考えた。そしてその成果が今週PNASに発表された。遺伝子組換え蚊の子孫の99%が遺伝子をもち、抗体遺伝子が発現した蚊は寄生虫を阻止した。「全てのピースは揃った。問題は人々がこれを望むか、である」とJamesはいう。

  • コークの肥満研究を指揮してきた主任科学者が辞任

NYT
Coke’s Chief Scientist, Who Orchestrated Obesity Research, Is Leaving
By Anahad O'Connor November 24, 2015
http://well.blogs.nytimes.com/2015/11/24/cokes-chief-scientist-who-orchestrated-obesity-research-is-leaving/
Rhona S. Applebaumは、肥満対策には運動を強調する大学の研究者らからなるNPOのグローバルエネルギーバランスネットワークの設立を援助していた。コカコーラ社はこの団体に昨年150万ドルを支出し、そのうち100万ドルはコロラド大学医学部James O. Hill教授への研究資金であった。コカコーラがこの団体にお金を出していることはNYTの記事で8月に最初に報道され、そのことがこの大企業が砂糖入り飲料の科学研究に影響を与えようとしたとして批判された。公衆衛生の専門家らからの懸念表明を受けて大学がコカコーラ社に研究費を返還した。2004年からコークの主任科学者だったApplebaumは微生物学の学位をもつ食品科学者で、砂糖入り飲料批判をかわす方向で働いてきたとされる。木曜日にコカコーラは61才のApplebaumが10月に引退すると発表した。
A.P.社がまたコークの幹部とHill教授とのグローバルエネルギーバランスネットワーク設立前の一連のメールを暴露した。Hill教授はコカコーラだけが悪者と名指しされているが肥満対策には運動を促進することが大事だと思っていると書いている

コーク様:私を選んで
Dear Coke: Choose Me!
By Ignatius Brady | November 25th 2015
http://www.science20.com/deconstructing_obesity/blog/dear_coke_choose_me-160625
NYTがコカコーラの主任科学者が辞任すると報道している。その議論のなかに私の知り合いのHill教授がいる。彼はいいやつで、体重の問題は食べる量に集中するのでなく使う量を考えようと薦めてきたことで有名である。彼のこの分野での研究はコカコーラと関係する数十年前からである。
私はHill教授と意見が違うこともある。私は環境が肥満の原因だとは思わず、ただ歩くだけでいいとは思わない。
私はコロラド大学が研究費をコークに返還したのは間違っていると思う。研究に干渉しなければ企業と協力することが悪いわけではない。
ところで私を雇うのはどうだろうか?私は肥満の原因がコークだけだとは思わないし肥満はとても複雑である。Hill教授にはこの嵐を乗り越えてこれまで通り良い仕事を続けて欲しい

  • EPAがDowのGMO作物用の新しい除草剤の認可を取り消す

E.P.A. Revokes Approval of New Dow Herbicide for G.M.O. Crops
By ANDREW POLLACKNOV. 25, 2015
http://www.nytimes.com/2015/11/26/business/epa-revokes-approval-of-new-dow-herbicide.html?_r=0
火曜日の裁判所への書類でEPAがDowのEnlist Duo除草剤がこれまで信じていたより毒性が高いことを示唆する新しい情報を発見した、と言った。「EPAは認可された表示通りに使われた場合に、絶滅危惧リストに掲載されているものも含む非標的生物に対してEnlist Duoがリスクとはならないことを確信できない」という。
Enlist Duoはグリホサートと2,4-Dを含む。
GMO反対団体はEPAの決定を歓迎し、次世代作物を全体を阻止できるという。
DowはEPAの懸念は2016年の栽培シーズンまでには解決できるだろうと声明を発表した。
EPAは2014年10月にEnlist Duoを認可している。EPAはDowからの情報に基づき二つの成分に相乗作用はないと結論していたが、Dowの特許申請書類に相乗効果を主張していることを発見した。これはEnlist Duoに表示されている除草剤のドリフトによるダメージ予防対策が適切ではないことを意味する、という。

「相乗効果」について
Enlist Duo registration being withdrawn by EPA due to “synergistic effects”
Posted by Andrew Kniss  November 25, 2015
http://weedcontrolfreaks.com/2015/11/enlist-duo-registration-being-withdrawn-by-epa/
問題となった特許の中でDowはグリホサートと2,4-Dがそれぞれ単独ではあまり効果のない濃度でも組み合わせると効果が上がるという「相乗作用」を示す数値を提示している

Dowのプレスリリース
Dow Expects Enlist Duo to be Available for the 2016 U.S. Crop Season
http://www.dowagro.com/en-us/newsroom/pressreleases/2015/11/enlist-duo-statement#.VlfYw5YVhaQ
(自信たっぷりな感じなのだが??
とりあえずヒト健康影響について、ではない)

Father loses custody of boys after refusing to stop trying to cure their autism through homeopathy
Tristin Hopper | November 26, 2015
http://news.nationalpost.com/news/canada/father-loses-custody-of-boys-after-refusing-to-stop-trying-to-cure-their-autism-through-homeopathy
9才と10才の重症の自閉スペクトラム疾患のある少年をホメオパシーで治そうとしている48才のコンピュータプログラマの父親に対して、母親からの訴えで裁判所が「ホメオパシーは効果がないだけでなく害がある」と判断して親権を母親だけに制限した。

Gluten-free movement may be driving unnecessary colonoscopies, doctor says
November 26, 2015 Julia Medew
http://www.theage.com.au/victoria/glutenfree-movement-may-be-driving-unnecessary-colonoscopies-doctor-says-20151126-gl8nga.html
グルテンフリー」の流行と「マクドナルドスタイル」のファスト医療が人々を必要のない侵襲的大腸検査に走らせている、と指導的医師が言う。新しいデータによるとメルボルンシドニーの所得の高い地域に住む人々の結腸内視鏡検査実施率がオーストラリアの他の地域の率より24-30倍高い。アデレード大学の胃腸科専門医Jane Andrews教授が、このような大きな差は、一部の人たちの検査は不必要であることを示唆している、という。
このデータは木曜日に発表された「オーストラリア医療多様性地図Australian Atlas of Healthcare Variation」によるもので、貧しい地域では必要な検査も行われていないことも示す。
Andrews教授は、ナチュロパスなどのグルテンフリー提唱者達が検査の基準にあてはまらなくても結腸内視鏡検査を受けた方がよいと助言しているため"病気を気にしている健康人、健康過敏症worried well"たちが流されていることに懸念を抱いている。医師や専門家達は、検査の要求を拒否すると訴えられる恐れがある。検査に公費を要求し、必要な検査を待っている人たちの順番がさらに遅れる。

  • 二度づけは予想以上に重大な健康上の脅威、研究が発見

Double Dipping Is A Far More Serious Health Threat Than Expected, Study Finds
November 26, 2015
http://www.inquisitr.com/2592675/double-dipping-serious-health-threat/
Clemson大学の研究者が口からディップにどれだけ細菌が移るかを調べた。咬んだクラッカーと咬んでいないクラッカーをカップに入れた水につけて、水の細菌を調べた。咬んでいないクラッカーに比べて咬んだクラッカーの水は1mLあたり1000以上細菌が多かった。
次に水のpHを変えてクラッカーをつけた直後と二時間後の菌数を調べた。酸性の強い溶液の方が二時間後の菌数は少なかった。次にチーズ、チョコレート、サルサディップで同様に調べた。咬んだクラッカーをつけていないディップには細菌はいないがサルサディップは二度づけで約5倍の細菌を獲得する。
以下チフスのメアリーの話など
(大阪ではずっと前から「ソースの二度づけ禁止」だよね)

  • 刑務所の禁煙は実を結びつつある

Tobacco bans in prisons paying off
November 27, 2015
http://www.9news.com.au/national/2015/11/27/10/52/tobacco-bans-in-prisons-paying-off
禁煙にした刑務所の喫煙率が減っている。禁煙にするとブラックマーケットが栄えたり暴力が増えたりするのではないかという懸念があったがオーストラリア健康福祉研究所による囚人健康調査によると喫煙率の低下につながっている。
囚人の約3/4が喫煙者で、禁煙でない刑務所では喫煙率は73%であるが禁煙の刑務所では59%だった。
刑務所の中のブラックマーケットとは?)