食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 十代のカフェイン入りエネルギードリンク摂取と血糖とインスリン濃度についての学会ポスター発表(未発表)への専門家の反応

expert reaction to conference poster presentation (unpublished work) on caffeinated energy drink consumption and blood sugar and insulin levels in teenagers
December 2, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-conference-poster-presentation-unpublished-work-on-caffeinated-energy-drink-consumption-and-blood-sugar-and-insulin-levels-in-teenagers/
世界糖尿病学会にカフェイン入りおよびカフェイン抜きエネルギードリンクの代謝への影響についてのポスター発表があった
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
この研究で測定している項目は糖尿病の予想因子ではない。カフェインは非エステル化脂肪酸の放出を促進しそれが一時的にインスリン感受性に影響する可能性がある。このような少人数(男性10人、女性10人)での一時的測定からカフェイン含有飲料を摂取することが2型糖尿病のリスクを増やすと示唆するのは飛躍しすぎである。女性には特に生理周期による変動が大きい。さらに参加者には体重1kgあたり5mgのカフェインを与えられているがこれは体重70kgの男性だと350mgに相当し、高用量である。コカコーラ1本で約32mg、Relentlessエネルギードリンクは150mg、フィルターコーヒー500mLマグで約140mgである。また予備的試験なのでさらなる裏付けが必要である。
疫学研究のメタ解析では子ひー摂取は糖尿病リスク削減が示されている。コーヒーや紅茶のカフェインは、Red Bullのようなエネルギードリンクを除き、ソフトドリンクより多い。
ポスターのタイトル「エネルギードリンク摂取は青少年の経口耐糖能を障害する:無作為二重盲検クロスオーバー予備試験」by H. Virtanen et al.

  • 太った男性と痩せた男性の精子のエピジェネティック変化を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study investigating epigenetic changes in the sperm of fat and lean men
December 3, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-epigenetic-changes-in-the-sperm-of-fat-and-lean-men/
Cell Metabolismに発表された論文で精子の遺伝子の活性を調節するマーカーへの体重の影響が検討され、痩せた男性と太った男性、および減量手術後に違いがあることが報告された。
Babraham研究所エピジェネティック計画部長Wolf Reik教授
これは予備的ではあるが興味深い研究で肥満男性のエピジェネティック変化(スモールRNAs、DNAメチル化)について初めて同定した。一般の興味は獲得されたエピジェネティック変化(環境や栄養により影響される)が世代を超えて子どもや孫にどの程度伝わるのか、であろう。動物実験では栄養の変化(低タンパク質や高脂肪)が時に雌の系列同様雄の系列でも子どもに伝わることがしばしば報告されていてその伝達にスモールRNAやDNAメチル化の変化が関与しているとされてきた。ヒトでは、肥満男性の子どもは肥満リスクが高いようである。精子のエピジェネティック変化が関与するかどうかは確かに挑発的である。これは小規模なので将来数を増やす必要がある。また同定された変化の妥当性評価が必要であり、またいつものように人により遺伝的要因は異なるだろう。注意深く対照群を設定した動物実験も役にたつだろう。
クイーンメアリーロンドン大学(QMUL) Barts and The London医科歯科大学エピジェネティクス教授Vardhman Rakyan教授
これは興味深い予備的研究であるが再現されていないのでしっかりした結論は出せない。
Sheffield大学男性病学教授Allan Pacey教授
これは興味深い研究でさらなる調査に値する。私の意見では、この観察結果からヒトの健康や生殖に結論を出すのは早すぎる。他の研究者がこの現象の再現性を調べることを薦める。さらによくわかるまで、親になろうと思う人たちには可能な限り健康的であろうとすることを薦め、子どもの健康のためにと流行の食事法やよくわかっていない他の活動をするようなことはしないよう薦める。
Bristol大学客員教授UCL子ども健康研究所小児遺伝学名誉教授Marcus Pembrey教授
これは初めての肥満に関するヒト精子の包括的エピジェネティックプロファイリングである。ヒト研究は難しいがこれが始まりとなるだろう。精子は人体での代謝による変化から守られているという古い考えはこれまで動物実験で疑問を提示されてきた。しかしながらもしこの結果が再現されたとしても、子どものBMIへの影響を知るまでにはまだまだ遠い。ただしだからといって父親が子どもの体重の良いお手本になることを止めさせるべきではない。