食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 貴族院科学技術特別委員会のGM昆虫報告書への専門家の反応

expert reaction to House of Lords Science and Technology Select Committee report on GM insects
December 17, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-house-of-lords-science-and-technology-select-committee-report-on-gm-insects/
貴族院科学技術特別委員会がGM昆虫の野外試験を始めることを薦める報告書を発表した。委員会はGM昆虫技術を用いた感染症対策や農業害虫コントロールについて調査を行いった。
Durham大学疾患生態学教授Steve Lindsay教授
GM昆虫研究を推進し発展させることは非常に重要である。私は蚊が媒介する疾患の専門家で、この技術は世界中のマラリアデング熱患者を劇的に減らすのに役立つ可能性がある。我々はこれらの病気をコントロールする新しい道具を切望している。将来この技術は形勢を一変させる可能性がある
Oxitecの規制部長Camilla Beech
我々はこの報告書と結論を歓迎する。GM昆虫に関与する唯一の企業として、我々はこの科学が総合的解決方法の一部になって世界の健康と食糧安全保障に貢献すると考えている。

貴族院科学技術特別委員会
House of Lords Science and Technology Select Committee
病気や害虫と戦うためのGM昆虫の可能性
Release potential of GM insects to fight disease and pests
17 December 2015
http://www.parliament.uk/business/committees/committees-a-z/lords-select/science-and-technology-committee/news-parliament-2015/gm-insects-report-published/
デング熱騒動があり先進国の中では熱帯病流行可能性の高い地域がある日本が関心なさそうなのが残念だけど。)

  • がんの発症における内在と外来要因を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study investigating extrinsic and intrinsic risk factors in cancer development
December 16, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-extrinsic-and-intrinsic-risk-factors-in-cancer-development/
がんの内在(遺伝的)と外来(環境)要因の相対寄与率についての論文がNatureに発表され、外来要因のほうが大きいと主張する。
ケンブリッジ大学がん疫学教授Paul Pharoah教授
この論文の解析は約1年前にTomasetti と Vogelsteinにより Scienceに発表された議論の多い論文への反論として行われている。その論文では多くのがんが内因性要因によると主張していた。
今回の論文では別のいろいろなデータモデリングを用いてがんリスクは外来要因が多いことを示した。それぞれ問題点はある異なる仮定を用いたものの結果は全て同様で概ねこれまでの研究と一致している。大体10-30%が内因であるという推定は特定のがんについてのものではなく、ある一つのがんに内因性要因がどのくらいで外因性要因がどのくらいかを言うことはできない。また既にわかっているリスク要因以外の要因についてもわからない。
これらの結果が特定のがんの絶対リスクについては何の情報も与えないことを認識する必要がある。これらの知見はがん治療とは関係がないが多くのがんは全ての外来要因を知れば予防できるかもしれないと言う。それ自体は新しいことではなく既に我々は知っている。
Open大学応用統計学教授Kevin McConway教授
この研究はScienceの1月の論文への回答であることに注意する必要がある。Tomasetti と Vogelsteinの論文は広く報道され大きな議論を呼んだ。著者らは組織によるがんリスクの違いのうち約65%は分裂で説明できると計算したが、この65%がいろいろな形で報道され一部は誤解を招くものだった。特定の統計学的意味をもつ数字は人々の頭の中でうかぶものとは違い、理解は難しい。新しい研究では別の方法でこの疑問に答えた。もし外部要因を全て取り除く魔法の杖があったなら、どのくらいがんになるのかを計算した。これは推定が難しいが、4つの異なる方法で推定した。私は彼らの成果に感銘した。しかし彼らが全てに答えられるわけではない。方法が違うと結果は異なるが想定の範囲内だった。彼らの研究では70-90%のがんが外来要因で、つまりリスク要因を取り除けば70-90%のがんは発生しない。しかしこの数字はがんによって異なるだろう。
著者らは全てのがんの70-90%が外来リスク要因によっておこると主張したいわけではないと思う。そうではなく外来要因ががんにとって重要であるという根拠を提示した。外部要因に暴露されてもがんにならないヒトはいるので偶然が常に関与する。しかしこの研究はがんについて理解し予防するために単に幸運を願う以上のことをすべきだということを示す。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20150114#p4