- オリーブの木が死んでイタリアの科学者が調査される
Natureニュース
Italian scientists under investigation after olive-tree deaths
Alison Abbott 21 December 2015
http://www.nature.com/news/italian-scientists-under-investigation-after-olive-tree-deaths-1.19078
検察は研究者が病気を広めたと非難し感染した木を処分するのを止めるよう命令
イタリアのPugliaでオリーブの木に損害を与えている病気のアウトブレイクに関わった可能性があるとして9人の科学者が調査されている。流行の封じ込めに関わった公務員も調査されている。
イタリア南部Lecce での12月18日の記者会見で検察が公式に調査を発表した。同時に現在病気の拡大封じ込めのために行われている感染したあるいは感染可能性のある木を切ったり燃やしたり殺虫剤を散布したりしている対策を直ちに中止するよう命令した。検察はそのような対策が正当化できるほど病気についての科学的理解がないと主張する。
イタリア持続可能な植物保護研究所のBariユニット長であるDonato Bosciaは「我々はショックを受けた」という。彼も被告の一人で記者会見の様子を報道した地元紙によると「怠慢により植物の病気を広め、公務員に間違った情報を与え、環境を汚染し自然の美しさを損ねた」という容疑である。Bosciaは「非難は気が狂っている」という。
このアウトブレイクはXylella fastidiosaによるものでアワフキムシによって木から木へ拡散する。問題の系統はコスタリカやブラジル、カリフォルニアの土地に固有で、欧州では2013年に初めてイタリア南部で発見された。
EU法によりイタリアはこの病気が他のEU諸国に拡大しないように科学的根拠のある封じ込めを行う義務がある。計画では感染した木を伐採することに加えて、緩衝地帯を作るために健康な木も破壊する。しかし環境活動家の支援を受けた農家が古い木を切りたくなくて対策の実施に反対してきた。個別の裁判で農家が勝ち、所有地の木の伐採や殺虫剤の散布を中止させてきた。
イタリア検察が調査を発表する1週間前の12月10日に、欧州委員会はイタリアが迅速に封じ込めをできなかったことに対して違反手続きを開始した。欧州委員会の広報担当Enrico Brivioはイタリアの裁判所が封じ込め対策を全て阻止したことで何がおこるかわからない、という。「Xylellaは最も危険な植物病原体で、その流行は膨大な経済的影響がある。緊急対策は必要で実施されなければならない」。
検察は5月に研究所のコンピュータや文書を押収したが科学者の根拠について何も発表していない。しかし彼らは恐ろしいXylella系統が、2010年にBariの地中海農学研究所で行われた訓練ワークショップでカリフォルニアから輸入され、環境中に放出された可能性があると言い続けている。さらに野外実験で環境中に出た可能性があるとも言う。
Bosciaは調査の詳細についてコメントしないよう言われている。しかし科学者は先に問題のXylella系統はそのワークショップでは使われていないと指摘している。
この問題を検討したほとんどの科学者は、この病気はXylellaの同系統を保有する、コスタリカから輸入された観賞用植物と一緒に到着した可能性が高いと考えている。
(イタリアは地震の時も科学者を悪者にしていた。そういえば日本の松食い虫対策も農薬嫌いで反対されていたけどどうなっただろう?)