食品安全情報blog過去記事

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その他

  • グリホサート除草剤:リスクは何?−専門家の反応

SMC NZ
Glyphosate weedkiller: what’s the risk? – Expert reaction
January 20th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/01/20/glyphosate-weedkiller-whats-the-risk-expert-reaction/
オークランドの公園や歩道にグリホサート除草剤を使用することが地元議会で公衆のリスクとなると主張されて注目されている
今週緑の党環境保護局にグリホサートの使用についてレビューを要請するプレスリリースを行った。「我々の調査で毎年公園や遊び場などで数千リットルのグリホサートが使用されていることがわかり、人々をこの発がん性の可能性のある物質のリスクに晒している」と緑の党の農薬報道官Steffan Browningが言う。IARCが2015年3月にグリホサートをおそらくヒト発がん物質と分類しているが、一次産業省のグリホサートのページではこの分類に関して「グリホサート暴露が何らかの条件で、それが現実的であろうとなかろうと、がんにつながる可能性があるかどうか」についてのものであると注記している。
SMCはニュージーランドの専門家にグリホサート除草剤のリスクについて尋ねた
Massey大学農業環境研究所雑草科学上級講師Kerry Harrington博士
IARCはグリホサートを彼らの「ヒト発がん性の可能性があるかどうか」の分類において決定している。このことはそれが実際にがんの原因となるという意味ではなく、特定の条件下でがんの原因となるかもしれないと彼らが考えているということのみを意味する。家の暖炉で木を燃やすことやシフトワークで概日周期をずらすことや美容師であることにも同じレベルの警告が出されている。それはリスクが高いということではない。シフト労働や暖炉で木を燃やすことを禁止すべきだろうか?除草剤は注意して散布される。散布時は人が少ない時を選んで散布中であることを知らせる。オークランドで現在騒動になっている懸念の大きさは正当ではない。
人々は多くの活動にはリスクがあることを認識すべきである。芝刈り機を使えば石ころを飛ばしてリスクとなる可能性はある。日光の当たる場所で、水の側で子どもを遊ばせるのはリスクがあるし花の咲いた芝ではハチが子どもを刺すかもしれない。多くの人にとってはオークランドの公園を通り抜けて車を運転することが最もリスクが高いだろう。公園での雑草管理のための除草剤に暴露されるリスクはそれより小さい。
Canterbury大学毒性学教授Ian Shaw教授
昨年IARCがグリホサートをヒトにがんをおこす可能性があると決定した。このことはこれまで最も安全性が高いと考えられていた除草剤への警告として重要である。しかしIARCはどの用量でがんの原因となるのかは示さなかった。IARCが使った論文からはがんリスクが低いことは明白である。従って現段階では大量にグリホサートに暴露されている人には暴露を減らすようにすべきである。散布する人は適切な防護服などを着るべきであろう。最近除草剤を撒いた小径に座る人のリスクは極めて低い。議会は「散布したて」の表示をすべきかもしれない。
グリホサートは環境中で速やかに分解し長く留まることはない。
グリホサートの使用についてのレビューは必要だがそのことはグリホサートを全面禁止にすることを意味しない。使用量を減らし暴露量を減らす方法を探るということである。

  • 超音波と健康に疑問符−専門家の反応

SMC NZ
Question marks over ultrasound and health – Experts respond
January 20th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/01/20/question-marks-over-ultrasound-and-health-experts-respond/
Southampton大学のTim Leighton教授がProceedings of the Royal Society Aに公共の場での超音波が多いことを報告した。超音波はテレビやスピーカーなど広範な電子機器から放出されている。Leighton教授によると現在の超音波ガイドラインは薄弱な根拠に基づいていてヒトでの研究は少ない。
豪州SMCが以下の専門家のコメントを集めた。
Macquarie大学聴覚・言語・脳教授David McAlpine教授
あなたが聞くことのできない音があなたを傷つけるか?生まれたときヒトの内耳は最大20kHzの音を感じることができ、この上限は加齢とともに低下する。これ以上の周波数の音はだから安全と考えられてきた。しかし我々は超音波のヒト健康影響を全て知っているわけではなくこの論文は現在の助言を見直すことを要請する。
UK SMC
Oxford大学神経科学教授Jan Schnupp教授
私はこれについては懐疑的であることを言っておく。
現代社会では多くのものから超音波が生じていることは事実である。これらがペットのイヌやネコや齧歯類を煩わせている可能性もある。しかし超音波の物理的エネルギーの絶対量は僅かで人体内部に入るエネルギー量はほとんどない。それが重大な傷害を与えるのはとても難しい。私の助言は聞こえる音について心配したほうがよく、大音量の音楽は適度に。
UCL耳研究所生物物理学Bernard Katz教授Jonathan Ashmore王立学会特別研究員教授
この研究には明確な科学的欠陥がある。新しいデータはほとんどなく良い対照がとられていない。
Plymouth大学准講師Martin Coath博士
この論文は単純にガイドラインの再検討を求めるものであるがこの段階では研究費の申請のようなものである。
Cardiff大学研究フェローDavid McGonigle博士
この研究のタイトルは警鐘を鳴らすものだが内容は現状をまとめたものである。

  • データ操作したイタリアの研究グループが捜査されている

Italian research group subject of data fabrication probe
by Karl Haro von Mogel |
http://www.biofortified.org/2016/01/italian-research-group-subject-of-data-fabrication-probe/
ナポリ大学Federico Infascelli教授らのグループによるスキャンダルが発覚した。論文1つが取り下げられたがこれは始まりに過ぎない。複数の解析でこのグループが研究結果を操作していたことが示唆されている。このグループの論文はInfascelli教授自身を含む遺伝子組換え作物が危険だと主張する政治的集団が何度も利用してきた。Biology Fortified(このサイト)はこの話を追いかけ続け、更新情報を提供する。
Infascelli教授らの研究は主にGM食品を食べた動物の組織からGM植物のDNA断片を検出することに特化していた。彼らのグループはいくつかのそういう主張の研究を発表しているがその根拠は弱いものだった。そして再現性がなかった。さらに彼らはGMO大豆を食べた山羊の乳は栄養が違うとかBtトウモロコシは普通のトウモロコシと発酵の特徴が違うと主張している。
以下論文の問題点などの指摘
(Elena Cattaneo薬理学教授が議員だったからこそできたという指摘が。)

ACSH
Watch Tonight: ‘Frontline’ to Air Exposé on Supplements Industry
January 19, 2016
http://acsh.org/2016/01/watch-tonight-frontline-to-air-expose-on-supplements-industry/
チャンネルを合わせる準備、あるいは録画しよう。PBSで今夜10時から「サプリメントと安全性」という調査報道で危険なダイエタリーサプリメント業界の実態が暴露される。
多くの人々が栄養サプリメントナチュラルで安全な処方薬代用品と間違って思いこんでいるが、それらに隠された、時に致死的な危険性に気がついていない。
この恐るべき事態は1994年にDSHEAが成立したときに始まった。この法律はダイエタリーサプリメントの製造と販売に関する規制を明確にしたものとされるが実際には反対のことをした。DSHEA以降、FDAの権限を制限して製造業者による異物混入や消費者の病気や死亡すらおこることが保証されるようになった。
この何十億ドルという業界は何年もの間消費者を食い物にしてきた。だから全国放送でこの重要な問題が扱われることは歓迎する。注目され議会が取り上げ改正の方向に進むことを希望する。でもあなたの支持が必要だ。放送を見て、地元議会にDSHEAの改正や廃止を訴えるメールを書こう。そして最も重要なことはダイエタリーサプリメントを買わないことだ。
番組
Supplements and Safety
January 19, 2016
http://www.pbs.org/wgbh/frontline/film/supplements-and-safety/

  • 「健康的なお腹の細菌叢」をサポートすると宣伝されている製品は消費者を騙しているのか?

Are products touted as supporting ‘healthy gut-biome’ scamming consumers?
Andrew Porterfield | January 14, 2016 | Genetic Literacy Project
https://www.geneticliteracyproject.org/2016/01/14/products-touted-supporting-healthy-gut-biome-scamming-consumers/
「糞便移植が私の人生を救った!」WebMDのクローン病ディスカッショングループで吹聴されていた。「私は何年もクローン病に苦しみ、ついにSky Curtisのプロトコールで自宅で糞便移植をやってみた」。Curtisは息子のクローン病が糞便移植で治療されて以降、実験的糞便移植プロトコールを始めたカナダ人で「糞便移植ガイドブック」という自宅で移植することを薦める本を書いている。しかし今はもうやっていない。Curtisは多分善意でビジネスを始めたのだろうが、我々の腸に住む多様な細菌や微生物の発見は詐欺師の業界を生んだ。彼らはパーキンソン病多発性硬化症などを含む多くの病気が治ると主張する。少なくともそれらの治療法はFDAの認可や規制がないまま行われている。
カリフォルニア大学Davis校の進化生物学者Jonathan Eisenは微生物叢を操作することによるとされる宣伝内容についてよく見てみた。マイクロバイオームに関してはびっくりするほどの過剰宣伝があった。
糞便移植についての臨床研究は2013年頃からだがこれらは治療ではない。多くの「プラクティショナー」の主張がFDAの目にとまりFDAは糞便移植を実施前に認可の必要な医薬品である可能性があると発表している。ただし特定のC. difficile感染については患者の同意がありFDAが認めれば臨床使用は可能である。しかし一方で何にでも効くという宣伝は続いている。2015年には代替医療学会で減量や加齢予防のために糞便移植を薦めていた。
自宅でそんなものを試さないように。
(またへんなものを流行らせて・・)