食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

BfRの研究が確認:母乳にグリホサートは検出されない

BfR study confirms: no glyphosate detectable in breast milk
11.02.2016
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2016/08/bfr_study_confirms__no_glyphosate_detectable_in_breast_milk-196578.html
有名な欧州検査機関が最新の分析方法を用いて検出限界を超える残留は検出されない
BfRの委託した研究で母乳にグリホサートは検出されないことを確認した。BfRは有名な欧州検査機関に二つの独立した高感度分析法を開発してLower Saxony とBavariaの114の母乳検体を調べることを依頼した。BfR長官Dr. Andreas Henselは「この結果は、消費者が残留農薬についての感情的議論に不必要に振り回されないためには専門家の行う科学的研究がいかに重要かを示す」という。2015年6月にメディアが16の母乳検体からグリホサートが検出されたと報道しそれは「非常に心配なこと」とレッテルを貼った。BfRはその結果の信頼性に科学的疑いを提示し結果を再現し確認するために独自の検査を行った。グリホサートの物理化学的性質から、母乳に有効成分が移行することは予想できない。牛乳の場合と同様に、そのような移行があるという科学的根拠はない。BfRと全国母乳委員会は消費者に対し母乳は乳児にとってベストの栄養で母親は根拠のない主張に混乱させられることなくこれまで同様に母乳を与えるようにと再確認した。
この研究ではBfR残留農薬分析の経験が豊富で最も高感度な分析ができる2つの認証検査機関に委託した。陽性の検査結果が出た場合の信頼性確保のために、異なる測定原理に基づく二つの科学分析法を開発し、母乳中のグリホサートの検出について妥当性を確認した。二つの分析法はLC-MS/MSとGC-MS/MSで、それぞれ母乳1mLあたり1ngのグリホサートを検出できるように特別に開発した。つまり新しい分析法は業者の情報によるELISA法の約75倍、食品中の残留農薬検出に通常用いられる方法の10倍以上の高感度である。ELISA法は2015年6月にメディアが「非常に心配」と報道した分析に用いられたものである。定量限界1ng/mLは非常に低く、その量を含む母乳のみを飲んだ乳児の摂取量はADIの1000分の1以下である。
BfRの予想通りどの検体からもグリホサートは検出されなかった。これらの結果からBfRはこれまでの物理化学的性質やADMEのデータから有効成分が母乳に移行することはないという意見を確認した。これらの知見はEFSAの結論にも含まれている。
またこの研究はJ. Agri. Food Chem., January 25, 2016にまとめてある。この研究で用いた母乳は無作為抽出ではなくボランティアでドイツの母乳を与えている母親を代表するものではない。
メディアが2015年6月に報道した検査ではELISA法が使われたとされるが検査方法の詳細は不明である。グリホサートの濃度は0.21 から 0.43 ng /mLとされ、これはELISA試験が信頼性をもって検出できる定量下限(75 ng /ml)の200分の1である。さらにこの知見は別の分析方法では確認できない。従ってBfRはこれらの結果の信頼性を疑っている。
この研究を行った理由の一つは、心配した母親達がBfRに母乳中のグリホサートによる健康影響について問い合わせたことである。BfRと全国母乳委員会は消費者に対し母乳は安全で乳児にとってベストの栄養であり母親は不安になる必要はなくこれまで同様に母乳を与えるようにと再確認した。
(母乳中グリホサートについてはBfRのFAQ参照。ドイツの緑の党アメリカのNPOと2種類あるhttp://d.hatena.ne.jp/uneyama/20151127#p3