食品安全情報blog過去記事

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グリホサートについてのQ&A

Q&A on Glyphosate
1 March 2016
http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/Q&A_Glyphosate.pdf
2015年3月にIARCはグリホサートを「おそらくヒト発がん性がある」(グループ2A)に分類した。
これはヒトでの発がん性についての(実際に現実世界で暴露されたことによる)「限られた」根拠と実験動物での(「純粋な」グリホサートの研究からの)「十分な」根拠に基づく。
IARCはさらに「純粋な」グリホサートとグリホサート製剤の両方に遺伝毒性があるという「強い」根拠があると結論した。
IARCモノグラフは全ての公開されている、妥当な、独立した専門家による、利害関係のない研究を系統的に集めてレビューしたものに基づく。厳密な科学的基準を用いて、その分類システムは世界中で参考文献として使われている。これはIARCの評価が独立した科学的レビューと厳密な基準と方法を用いているからである。
この結論に至るのにIARCは約1000の研究をレビューした。一部の研究は農家のように仕事で暴露されている人を調べた。他に実験でがんやがん関連影響を調べた研究がある。
グリホサートの発がん性は製剤に含まれる他の化合物に関連する?

ノー。IARCモノグラフはグリホサートの発がん性に関する全ての公開されている根拠のレビューに基づく。ほとんどのヒト暴露はグリホサートと他の成分を含む市販の製剤である。モノグラフはこれらの現実世界でのヒト暴露の研究を含む。また「純粋な」グリホサートやグリホサートベースの製剤を使った実験研究も含む。
「純粋な」グリホサートを使った実験研究についてモノグラフは実験動物での発がん性の根拠が「十分」で遺伝毒性の根拠が「強い」と結論した。現実世界でのヒト暴露は他の化合物を含む多様なグリホサート製剤へのものである。異なる時期、地域で使われた異なる製剤で同様の結果が報告されている。
これら全ての根拠をまとめてIARCワーキンググループはグリホサートをグループ2Aに分類した。IARCモノグラフの分類基準に従って、ヒトでの発がん性についての(実際に現実世界で暴露されたことによる)「限られた」根拠と実験動物での(「純粋な」グリホサートの研究からの)「十分な」根拠に基づく。この分類はさらに「純粋な」グリホサートとグリホサート製剤の両方に遺伝毒性があるという「強い」根拠により支持される。
Q&A
IARCモノグラフの遺伝毒性の原因は製剤に一緒に使われている成分が原因か?
遺伝毒性に関しては、「純粋な」グリホサートでの研究も評価した。そして製剤とグリホサートの両方で同じハザードの結論に達した。グリホサートの遺伝毒性の根拠は「強い」、グリホサート製剤の遺伝毒性の根拠は「強い」
いくつかの疫学研究で職業上のグリホサート暴露でがんが増加している。これはグリホサートだけが原因かあるいは製剤に含まれる他の化合物のせいか?
現実世界では人々はグリホサートに製剤として暴露される。異なる地域や時期にいろいろな製剤で、同じように非ホジキンリンパ腫が増加している。動物実験やヒト培養細胞での「純粋な」グリホサートの実験がこの結論を支持する。「純粋な」グリホサートの実験で、モノグラフは事件動物での発がん性の根拠が「十分」で遺伝毒性の根拠が「強い」と結論した。
評価した重要な研究のひとつが農業健康研究(AHS)である。この研究では非ホジキンリンパ腫とグリホサートの関連は見られていない。この研究だけで他の正の関連がみられた研究を上回れるか?
AHSは「最も強力な」研究とされているがそれは正しくない。AHSは米国の二つの州の5万人以上の農家と農薬散布者のがんと農薬使用のデータを集めた。この研究の弱点はフォロー期間が短いことで、そのことは時間が経って現れるがんが少ないことを意味する。そのことがこの研究が本当は存在するかもしれない関連を検出する能力を制限する。従ってAHSが大規模で質の高い研究であっても他の研究を上回らない。
さらにIARCワーキンググループはAHSや症例対照研究を含む全てのグリホサートと非ホジキンリンパ腫の研究結果の客観的統計解析を行った。その結果非ホジキンリンパ腫とグリホサートに統計学的に有意な関連が示された。
IARCの評価した研究は有害な量のグリホサートに暴露された動物でのみがんが見られたのか?
ノー。マウスの研究で「純粋」グリホサートの高用量で統計学的に有意にがんが増え、用量により反応が増加することが示唆される。毒性がなくてもがんが見られた。
IARCが重視したのは、グリホサートは未処置動物では滅多に見られないがんを誘発したことである。希ながんは因果関係の重要な根拠となるが高用量でしかみられない場合がある。IARCワーキンググループのこれらの腫瘍への評価は認められている基本原則に沿ったもので極めて意味がある結果をもたらした。
規制機関はIARCの検討した研究をレビューしてグリホサートはヒトにとって不当なリスクとはならないと結論している。何故IARCは違うのか?
多くの規制機関は企業の提出した公開されていない毒性データを用いている。一方IARCは公開されている全ての根拠を評価している。
IARCのグリホサートモノグラフではワーキンググループが検討した情報源は約1000で、それらはモノグラフの基準に従って妥当性をスクリーニングされた。このスクリーニングの後、モノグラフで引用している。疫学と実験動物の章では全ての研究を引用しているが暴露とメカニズムの章では代表的なものを検討し必ずしも全てを引用していない。発表されたグリホサートのIARCモノグラフの引用文献は269である。
透明性のため、IARCの評価では公開されたデータで独立した科学的レビューをされたものしか評価しない。企業の研究でも基準を満たせば評価対象にする。しかしながら発表された論文の補遺としてオンラインに発表されたデータについては独立した評価に十分な詳細がないので含まない。企業の動物実験ではそういうものがあった。
ワーキンググループがレビューしたものから、グリホサートがおそらくヒト発がん性であると結論する十分な根拠があった。
がんになる可能性に関してはIARCの分類は何を意味するのか?
IARCモノグラフはハザード分類である。これは根拠の強さを示すものである。がんになる可能性は、暴露の程度やその物質の影響の強さなどのような要因に依存する。

(こんなの出してどうするんだろう?せっかくEFSAやBfRが穏便に済ませるための逃げ道を残しておいてくれたのに全力で塞いだ。「混じりっけなしのグリホサートが強い遺伝毒性陽性」で戦うなんて。遺伝毒性評価したの誰?)