食品安全情報blog過去記事

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乳児に3ヶ月からアレルギーをおこす食品を与えることがアレルギーを予防するかもしれない

Giving allergenic foods to infants from three months old may prevent allergies
4 March 2016
http://www.food.gov.uk/news-updates/news/2016/14958/giving-allergenic-foods-to-infants-from-three-months-old-may-prevent-allergies
乳児に3ヶ月からアレルギーをおこす食品を導入することが、推奨量を摂取した場合、アレルギー予防に役立つかもしれないことを発見したFSAが行った大規模の新しい研究がNEJMに発表された。
この研究は母乳を与えられていてアレルギーをおこす食品を3ヶ月から与えた乳児と、6ヶ月まで母乳のみで6ヶ月以降に食品を与えた乳児とを比べた。
全体として早期にアレルギーをおこす食品を与えられた群の方が食物アレルギーが少なかったが統計学的有意差はなかった。全ての食品の早期導入は簡単ではなかったが安全であった。アレルギーをおこす食品を推奨された量摂取できた乳児では全ての食物アレルギーは2/3減った。
FSAの主任科学アドバイザーGuy Poppyは「FSAは消費者の食物アレルギー管理支援に重要な役割を果たしてきていてその中にはアレルギーの発症に関する知識の拡大も含まれる。この研究は我々の仕事の重要な部分である。これらの知見は乳児の食事に関する公衆衛生政策やガイドラインに情報を与えるための科学的根拠に加えられる」という。
主任研究者のGideon Lack教授は「アレルギーをおこす食品を推奨された量摂取できた乳児の解析結果はピーナッツについて最も驚くべきもので、ピーナッツの早期導入が、湿疹ハイリスクこども集団でも一般人でもピーナッツアレルギー発症を予防するという我々の他の研究からのますます増える根拠にさらに加わった。」という
共同研究者のロンドンSt George’s大学Michael Perkin博士は「イングランドウェールズ全地域の家庭の大変な協力により、我々は乳児が食物アレルギーになるのを防ぐために役立つのに必要な素晴らしい知見を得た。この研究は今後たくさんの重要な結果をもたらすであろう」
この話の背景にある科学
この研究の目的は母乳を与えられている乳児にアレルギーをおこす食品を早期に導入することが食物アレルギー発症予防になるかどうかを調べることである。
Evelinaロンドン子ども病院で登録された1300人以上の乳児を無作為に2群に分けた。一方は6ヶ月まで母乳のみを与えるようにという標準的助言を与えられた。もう一方は3ヶ月以降から6つのアレルギーをおこす食品、魚、調理した卵、乳、小麦、ごま、ピーナッツを導入するよう依頼された。
どちらの群も政府の助言に従って母乳が赤ちゃんにとって最良の食品で、母乳を最大2才まで与えるように助言された。どちらの群も母乳率は同じで6ヶ月時点では96%以上、1才では50%以上がまだ母乳を与えられていた。
この研究では食物アレルギーに与える食べたアレルゲンの量、頻度、期間も検討した。食物アレルギーの予防は週に約ティースプーン1.5杯のピーナッツバターと小さなゆで卵1個で達成できるだろうことを発見した。参加者の安全性については研究全般にわたって監視した。早期導入期間にアナフィラキシー事例はなかった。

  • 最終報告書

Enquiring About Tolerance (EAT) Study
March 2016
http://www.food.gov.uk/sites/default/files/eat-study-final-report-summary.pdf

Randomized Trial of Introduction of Allergenic Foods in Breast-Fed Infants
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1514210

  • NEJMのエディトリアル

乳児の食物アレルギー予防−早期摂取か忌避か?
Preventing Food Allergy in Infancy — Early Consumption or Avoidance?
Gary W.K. Wong, M.D.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1601412
何十年にもわたって、我々は食物アレルギーの増加を食い止めるために保護者に子ども達をアレルギー源となる食品に晒さないように薦めてきた。早期暴露が感作につながるという考えに基づいて。1年前にピーナッツアレルギーの発症リスクの高い乳児にピーナッツを早期に与えることが劇的にリスクを下げるというLearning Early about Peanut Allergy (LEAP)試験の結果がこの考えを改めさせ、10の国及び国際医学会がハイリスク乳児の一次予防のためのピーナッツ導入についてのコンセンサス声明を発表した。
LEAP試験のアプローチは一般の子どもにも、他のアレルゲンにも有効だろうか?PerkinらがEnquiring about Tolerance (EAT)試験でこの疑問に答えようとした。1300人以上の乳児を無作為に母乳のみと6つのアレルゲンの早期導入群にわりつけた。早期導入群は週にピーナッツバター丸いティースプーン3杯、小さな卵1個、牛乳で作ったヨーグルト2つ(40-60g)、ゴマペーストティースプーン3杯、白身魚25g、小麦ベースのシリアルビスケット2枚を与えるよう指導された。一次アウトカムは参加者の6つの食品のどれかへの食物アレルギーの割合で、早期導入群は5.6%、標準群は7.1%で統計学的有意差はなかった。
この研究デザインは参加者の負担が大きいことに研究者は気がついていて、早期導入群でプロトコールに従うことができたのはたった42.8%だった。しかしプロトコールに従った場合では早期導入群の一次アウトカムは標準群(7.3%)より有意に低かった(2.4%)。但しこの違いは親が乳児にある食品を与えた時に嫌がったために与えなくなった結果である可能性もあるため解釈には注意が必要である。
この研究では早期導入は安全であることを示したものの順守率が低いことは現実にはさらに大変である可能性を示唆する。順守率が最も高かったのは乳製品で卵は難しかった。この差は3-4ヶ月の乳児の口の運動能力に関係する可能性がある。これらの食品を与えるのが安全なら、必要な最小量はどのくらいだろうか?どういう方法が最も効果的だろうか?簡単なやりかたは?このような問題に答える必要があるだろう。

同じ日にLEAPのフォローアップも報告されている
Effect of Avoidance on Peanut Allergy after Early Peanut Consumption
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1514209
最初の試験でピーナッツを食べた群と食べなかった群で、5年後から12ヶ月ピーナッツを避けてもピーナッツアレルギーに差は無い