食品安全情報blog過去記事

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FDAは乳児用コメシリアルの無機ヒ素規制値を提案

FDA Proposes Limit for Inorganic Arsenic in Infant Rice Cereal
April 1, 2016
http://www.fda.gov/Food/NewsEvents/ConstituentUpdates/ucm493714.htm
FDAは乳児の主な無機ヒ素暴露源である乳児用コメシリアルの無機ヒ素を減らすための対策をとっている。企業向けガイダンス案で、FDAは乳児用コメシリアルの無機ヒ素の規制値あるいは「アクションレベル」100 ppbを提案している。現在市販されている乳児用コメシリアルの多くはこの基準を満たすか、あるいは近い値である。
提案された規制値はコメとコメ以外の製品の広範な検査と、無機ヒ素暴露と人生の初期での神経影響と妊娠への有害アウトカムとの関連を示した科学的研究を解析した2016年のFDAのリスク評価と、乳児用コメシリアルの無機ヒ素を減らすことの実行可能性の評価、による。
以下詳細情報各種

  • コメとコメ製品のヒ素

Arsenic in Rice and Rice Products
http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm319870.htm
FDAは食品中のヒ素について何十年も監視してきたが2011年にヒ素の形態毎の分析が可能になって以来検査を拡大してきた。コメは他の食品より無機ヒ素が多く、2016年4月にFDAは乳児用コメシリアルに対して100 ppbの規制値を提案した。この濃度は膨大な科学的情報のFDAの評価に基づき、乳児の無機ヒ素暴露を減らそうとしたものである。さらにFDAは妊娠女性と乳児の世話をしている人たちに向けたコメの摂取についての助言を作成した。

  • コメとコメ製品のヒ素の検査と分析についてのFDAの声明

FDA Statement on Testing and Analysis of Arsenic in Rice and Rice Products
http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm367263.htm
乳児は体重あたりの食事の摂取量が多いため、成人に比べて約3倍ヒ素の摂取量が多い。その主な摂取源が乳児用コメシリアルである。
保護者と妊娠女性への助言
保護者向け
*赤ちゃんには鉄を強化したシリアルを与えること
*鉄を強化したコメシリアルは赤ちゃんの良い栄養源ではあるがそれだけを与えないように、また最初の選択肢である必要もない。オート麦や大麦や複数穀物の強化乳児用シリアルもある。
*幼児には多様な穀物を含むバランスのとれた食事を与えるように。
同時に妊娠女性についても小麦やオート麦、大麦などの多様な穀物を含む多様な食品を摂取するのが賢明であろう。この助言はこれまでの妊娠女性向けの米国産科婦人科学会の、半分は全粒穀物にという栄養ガイドと一致する。
FDAの新しい研究を含む公表されている研究では、コメを大量の水(コメの6-10倍)で調理して水を捨てることで無機ヒ素含量をコメの種類により40-60%減らせる。ただしこの方法はコメの重要な栄養素も減らす可能性がある。
提案された規制値と消費者助言の根拠
FDAは2016年4月1日に小本コメ製品について集めたデータを公表しレビューを完了した。これらのデータは乳児用コメシリアルのヒ素について理解を深めるのに必要だったものである。乳児や幼児が食べる76のコメだけのシリアルと約36の複数穀物からできたコメ以外のシリアルとその他食品の無機ヒ素濃度を示した。さらに乳児や幼児が食べる400検体以上の14カテゴリーのその他の食品も調べた。これらの新しい検体は2013年にそれまで調べた結果として報告していた約1300検体のコメとコメ製品の検査に追加された。
2014年に小売店で販売されていた乳児用コメ製品の約半分(47%)が提案されているアクションレベル100ppbを満たし、78%は110ppb以下であった。
FDAは製造業者はGMPやコメの産地をヒ素濃度の低いところにするなどの手段で提案されている基準値以下の乳児用コメシリアルを生産することができると予想する。FDAは法的執行を検討する場合にはアクションレベルを考慮する。

  • FDAプレスリリース

FDAは乳児用コメシリアルの無機ヒ素規制値を提案
FDA proposes limit for inorganic arsenic in infant rice cereal
April 1, 2016
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm493740.htm
FDAは乳児の主要ヒ素暴露源である乳児用コメシリアルの無機ヒ素を減らすためのステップをとっている。体重当たりで乳児のコメ摂取量は成人より多く、主にコメシリアルである。さらに全国摂取量データでは体重当たりの摂取量が一番多いのは約8ヶ月齢である。
FDAが提案しているアクションレベルの100ppbはECの乳幼児用食品生産のためのコメの規制値と同じである(EC基準はコメそのものについての基準で、FDAの企業向けガイドラインは乳児用コメシリアルの無機ヒ素である)。
消費者向け助言
FDAは全ての消費者に向けて栄養と特定の食品を過剰に食べることによる有害影響の可能性を最小限にするために、バランスのとれた食事をするよう助言し続ける。FDAは一般の人に対して現在のコメの摂取をヒ素を理由に変えるように助言してはいないが、妊娠女性と乳児に対しては暴露量を減らすために情報を提供する。
(重複部分略)
提案した規制値と消費者助言の根拠
FDAは、食事暴露を含む疫学的根拠から、乳児と妊娠女性の無機ヒ素暴露は、子どもの学習を測定するある種の発達検査の成績の悪さにつながる可能性のあることを発見した。
FDAは乳児用コメシリアルの無機ヒ素濃度を示すデータを発表した。さらに他にヒ素暴露源があるかどうかを評価するために400以上の乳幼児がよく食べる他の食品も調べた。コメ以外の食品は全て無機ヒ素濃度が100ppbより十分低く、バランスのとれた食生活に取り入れることのできるヒ素濃度の低い選択肢はあることが示された。
上述の健康リスクを評価するのに加えて、FDAはコメとコメ製品を食べることに関連する肺がんと膀胱がんについて数学的モデルを開発した。FDAはコメとコメ製品に含まれる無機ヒ素への暴露により米国においては10万人あたり生涯4例の肺がんと膀胱がんが追加で発生すると推定する。この推定値は米国の肺がんと膀胱がんの1%より遥かに小さい。
FDAの無機ヒ素暴露による有害健康影響の可能性についての科学的評価は他の政府機関同様外部ピアレビューを受けた。
ヒ素は地殻に存在し水や空気や土壌にある。ヒ素は天然に土壌や水に存在する。肥料や農薬も濃度に寄与する。ヒ素には有機と無機の二つの形態があり、食事中では無機ヒ素の方が毒性が高いと考えられている。コメは他の食品より無機ヒ素濃度が高い。理由の一部はコメが他の作物よりヒ素を吸収するためである。
次のステップ
FDAは提案されているアクションレベルとリスク評価について90日間パブリックコメントを受け付ける。
製造業者はガイダンス案が最終化される前に助言を受け容れることを選ぶことができる。

  • Q & A:コメとコメ製品のヒ素

Questions & Answers: Arsenic in Rice and Rice Products
http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm319948.htm
食品中のヒ素
ヒ素とは何か?
ヒ素には違う種類のものがあるのか?
どうしてヒ素が食品にはいるか?
コメのヒ素については?
コメはその食べ方と育て方の両方により無機ヒ素の主な摂取源である
オーガニック食品はオーガニックでない食品よりヒ素は少ないか?
オーガニック栽培は関係ない。慣行栽培と有機栽培でのコメのヒ素濃度に違いがあるというデータを知らない
ヒ素暴露による健康リスクとは何か?
高濃度長期暴露は皮膚、膀胱、肺のがんと心疾患。
FDAは食品のヒ素を調べているか?

  • FDAはコメのヒ素について何をしているか

なぜFDAはコメのヒ素を集中的に取り上げることにしたのか?
予備的データからコメが他の食品より無機ヒ素濃度が高いことが示されていてそれが確認された。コメは乳児を含めて広く食べられている。さらに乳児は成人より体重当たりの摂取量が多い。
FDAのコメとコメ製品の検査データは何を示したか?
乳児用コメシリアルの平均無機ヒ素濃度は103ppbであった。
FDAはコメのヒ素について何をしたか?
乳児用コメシリアルの無機ヒ素についてアクションレベルあるいは規制値100 ppbを提案した。
一部の国や地域のコメは安全性が高いか?
FDAの検査の目的は米国市場の多様なコメやコメ製品の無機ヒ素濃度を知るためで州や国の比較をするためではない。意味のある比較をするためには同じコメの品種を比べなければならないがサンプル数が小さすぎてそのような比較はできない。さらに土壌や肥料や季節変動、栽培条件などいろいろな要因がヒ素濃度に影響する。したがって検査結果を公表したものの州や国の比較をしないように注意する。

  • 消費者向け助言

私はコメを食べてもいいか、子どもにコメを与えてもいいか?
消費者はバランスのとれた食生活の一部としてコメを食べることができる。子どもにはコメシリアルだけではなく多様な強化シリアルを与えることが賢明である。妊娠女性にも多様な穀物を含む多様な食品を食べることを薦める
食道逆流しやすい子どもは飲み込むのが簡単なのでコメシリアルに頼っている。FDAはコメの代わりに何を薦める?
小麦、大麦、その他穀物ベースのシリアルも同様に液体を吸収し食道逆流しやすい乳児にも効果的である。
コメのヒ素を減らすために消費者ができることは?
大量の水で調理して水を捨てる。調理の前に水洗いすることはヒ素含量にはあまり効果が無いが精米やパーボイル米の鉄、葉酸チアミンナイアシンを洗い流す。以下の表に追加情報を記す。
(洗った場合と大量の水で調理して水を捨てた場合の玄米、白米、パーボイルド米の無機ヒ素、鉄、ナイアシンチアミン葉酸の減少についての表)

  • リスク評価

Arsenic in Rice and Rice Products Risk Assessment
http://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/RiskSafetyAssessment/ucm485278.htm
http://www.fda.gov/downloads/Food/FoodScienceResearch/RiskSafetyAssessment/UCM486543.pdf

FDAの検査では白米の無機ヒ素92 ppb、玄米154 ppb
コメ及びコメ製品の摂取量は1日サービング以下で計算したのが生涯がんリスク100万人あたり膀胱がん10肺がん29の合計39で、もしこれが1日1サービングなら74-184に増加する。食べる量が増えれば増えるほど直線的に増加
コメを食べる量は最大(8ヶ月)でも体重1kgあたり1日1g程度
リスクのモデルは何とおりも計算している

(100ppb(0.1ppm)というのは日本のコメは普通にアウトになるレベル。玄米は論外。しかも食べる量は日本人のほうが多いのでもっと小さい値にしないといけない。ベビーフードの鉄は添加物のほうが安全なのにわざわざヒ素を増やすヒジキとか入れているのは日本くらい。しかもヒジキの鉄はどうやら不純物?ほうれん草は硝酸塩に問題有りでベビーフードには薦められていない。日本の栄養士が安全性を考えず添加物=悪みたいなのはどうにかならないのか。そしてこんなニュースとか。気にすべきなのはそれじゃない
【復興の道標・不信の連鎖】「食の安全」どう伝える 事故直後の誤解...今も
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160404-063282.php


各社報道している
NYT
FDAは赤ちゃん向けコメシリアルのヒ素規制値を提案
F.D.A. Proposes a Limit on Arsenic in Rice Cereal for Babies
By CATHERINE SAINT LOUISAPRIL 1, 2016
http://www.nytimes.com/2016/04/02/health/fda-proposes-a-limit-on-arsenic-in-rice-cereal-for-babies.html
ビーフード大手ガーバーは金曜日に既に同社の製品はFDAの提案する基準を満たしていると発表した。