食品安全情報blog過去記事

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論文

BPA determined to have adverse effects on couples seeking in vitro fertilization
28-Apr-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-04/uom-bdt042816.php
Fred vom Saal。ハーバード大学のJorge Chavarroらの発表した研究でBPA濃度が高いと胚の生存率が下がることが示された。その知見をvom SaalらがNature Reviews Endocrinologyに発表した。
内分泌撹乱物質:人工と天然のエストロゲン:生殖補助医療に反対の影響
Endocrine disruptors: Manmade and natural oestrogens: opposite effects on assisted reproduction
Frederick S. vom Saal & Wade V. Welshons
Nature Reviews Endocrinology 12, 251–252 (2016)
http://www.nature.com/nrendo/journal/v12/n5/full/nrendo.2016.38.html
もと論文はこれかな
Soy Intake Modifies the Relation Between Urinary Bisphenol A Concentrations and Pregnancy Outcomes Among Women Undergoing Assisted Reproduction –
http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2015-3473

でもその前のペーパーでは関係ないといっている
Urinary bisphenol A concentrations and association with in vitro fertilization outcomes among women from a fertility clinic
Hum. Reprod. (2015) 30 (9): 2120-2128.
doi: 10.1093/humrep/dev183
First published online: July 24, 2015
http://humrep.oxfordjournals.org/content/30/9/2120

  • 牛の薬が何千羽ものハゲワシを脅かす

Natureニュース
Cattle drug threatens thousands of vultures
Rachel Becker 29 April 2016
http://www.nature.com/news/cattle-drug-threatens-thousands-of-vultures-1.19839
モデル研究が欧州の鳥集団の破れた地図を描く
インド亜大陸でハゲワシの絶滅の危機を招いたと非難されている、数千羽の鳥を殺す可能性のある動物用医薬品が現在スペインで使用されている。スペインで2013年に抗炎症薬ジクロフェナックが動物に使用することが認可されてから、死んだ牛を食べることでハゲワシに有害であることから研究者らは懸念を表明してきた。英国ケンブリッジ大学の保存科学者Rhys Greenによるモデルで、この薬物がシロエリハゲワシ(Gyps fulvus)集団を年に1-8%減少させる可能性があることがJournal of Applied Ecologyに発表された。
ジクロフェナックは少量でもハゲワシに有毒で腎不全を誘発する。その結果血中に尿酸が蓄積し内臓に結晶を作る。インド亜大陸の諸国は2006年からジクロフェナックを禁止し始めそれ以降ハゲワシの集団は減少が止まったように見える。欧州では1993年から動物への使用が認められている。2014年に欧州医薬品庁(EMA)が死んだ家畜を食べることによりハゲワシにリスクがあることを認めたが禁止までは薦めなかった。2015年に欧州委員会はEMAの助言に従ってジクロフェナックを含む屠体がフードチェーンに入らないようにするのは加盟国に任せた。しかし2012年にスペインで同様の医薬品フルニキシンを高濃度含む死亡したハゲワシが発見された。その後少なくとも2羽のフルニキシン中毒があった。
スペインの医薬品局と農業省はジクロフェナック中毒による年間のハゲワシ死亡数を15-39羽と推定していた。Greenのチームは715から 6,389とそれより相当心配な数である。

  • あなたの腸内細菌はあなたが食べた以上のもの

Scienceニュース
Your gut bacteria are more than what you eat
By Elizabeth PennisiApr. 28, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/04/your-gut-bacteria-are-more-what-you-eat
好き嫌いに関わらず、我々の人体の中や表面にいる微生物はヒトの健康と病気に大きな役割を果たす。我々はまだこれら見えないコミュニティーの真の組成や集団の中でどのくらい違うのかについて知らない。しかし今回、二つの大規模研究が、かつて重要だと考えられていた要因、自然分娩か帝王切開か、母乳を与えているかどうか、あるいはBMIについて、研究者らが思っていたほど問題ではないことを示した。その代わり医薬品−胸焼けの薬や抗生物質やスタチン−、呼吸効率、便の硬さ、年齢のほうが微生物叢の組成により関連することを二つのグループが本日Scienceに発表した。チョコレートを食べることすら影響がある。この研究は一つはベルギーの1106人、もうひとつはオランダの1135人の便を集め、血液を採り、健康やライフスタイルについて詳細な質問に答え、医師による検診を行った。他の類似の研究のデータを併せて、95%の人々は14の属の微生物を共有し、コアヒトマイクロバイオームが存在することを示唆した。この二つの研究で600以上の人体に棲む微生物を同定した。これらの研究の一つの目的は全体として健康なマイクロバイオームの良い指標となる要因があるかどうかを探ることである。ベルギーのグループは便の軟らかさと微生物の多様性に関連を見出し、オランダのチームはクロモグラニンAというたんぱく質に狙いを定めた。このたんぱく質の濃度が低いことと多様な、機能的マイクロバイオームに関連があることを報告している。しかしどちらのチームも微生物の多様性に関連する全ての要因が20%以下の影響しかなく、学ぶべきことはまだたくさんあることを示唆している。
(調べた項目にはグルテンフリーとかベジタリアンとか動物たんぱく質とかもある。この結果からは、巷の腸内の善玉菌を増やすとか減らすとかいう言説が如何にいいかげんなものかわかると思う・・けどそういうのが好きな人はScienceは読まないかな)

Science 29 April 2016はマイクロバイオーム特集
特集のイントロ
微生物叢を操作する
Manipulating the Microbiota
Caroline Ash, Kristen Mueller
Science 29 Apr 2016: Vol. 352, Issue 6285, pp. 530-531
John Donneの有名な言葉に、人は独りでは生きられない、という。ヒトを含む全ての生物は微生物の海の中に生きている。極一部の微生物が害をなすが多くは無害で一部は必須である。実際、正常な植物や動物の発達の多くの側面が、おそらく生命の起源から共進化してきた、無害な微生物の定着と特定の関係の設立を必要とする。
驚くことではないが、ヒトの遺伝子は免疫調節や防御に関与する一連の特定共生微生物を背後で操る。一方で粘膜に住み着いた微生物は宿主の免疫系の発達を形作る。結果的に初期の微生物の定着は、アレルギーや自己免疫のような炎症性疾患感受性に長期的影響を与える可能性がある。
健康的な微生物叢を維持するのは簡単ではない。食事、重大な病気、医薬品は全て微生物叢に害を与える。どうしてそうなるのか、そしてその長期影響に関する我々の現在の知見は極めて限られている。それにも関わらず、素晴らしい保護作用を宣伝する共生細菌種のリストは増加し続け、微生物叢の開発はますます巨大ビジネスになっている。しかしながらプロバイオティック業界は大きな課題に直面している。課題は誇大宣伝されている健康強調表示から既存の規制枠組みの中での厳密な試験方法の開発の困難さまで多岐にわたる。それでもプロバイオティックの開発は微生物叢に再建と健康回復に大きな期待である、少なくとも一部の人にとっては。