食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 農薬への累積暴露とALS発症リスクの関連を報告した研究への専門家の反応

expert reaction to study reporting an association between cumulative pesticide exposure and risk of developing ALS (a form of motor neuron disease)
May 9, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-reporting-an-association-between-cumulative-pesticide-exposure-and-risk-of-developing-als-a-form-of-motor-neuron-disease/
JAMA Neurologyに血中環境汚染物質濃度とALSに関連があるという論文が掲載された
運動神経疾患(MND)協会研究マネージャーBelinda Cupid博士
MNDは多くの環境、ライフスタイル、遺伝要因があることを知っている。たった一つの要因だけでMNDになることはありそうになく、この研究は「新しい発見」ではない。しかし農薬暴露が寄与することについての根拠は集まっており、将来研究されるだろう。
この研究はしっかりしているが限界はこの論文とそれに伴うコメントで議論されている。特にコメントでは対照群と患者のミスマッチ(地域や教育レベルや血中農薬濃度)について述べている。
患者にとってはこれは遅すぎる。彼らは既にNMDである。論文ではNMDを発症するリスク要因を示唆していて進行速度ではない。一般人にとってはさらなる研究が必要であろう。農薬暴露だけでNMDが発症することはなく、そして農薬がNMDの発症リスクを高くするとしても、NMDは希な病気のままである。
王立ロンドン病院神経学名誉教授& Hon コンサルタント神経学者Michael Swash教授
この研究は質が高いがエディトリアルで注意されているように結果の解釈には注意が必要である。この研究は農薬などの環境汚染物質が遺伝的要因に加わるとリスク要因である可能性を示唆しているが調べるのは非常に困難である。ALSが公式な病気として認められたのは19世紀で、これらの化合物が合成されるずっと前のことであることを思い出すべきである。血液測定は一回のみであるのに結論は生涯暴露についてで。大きな問題がある。そして全ての後ろ向き疫学研究にある、思い出しバイアスがある。著者らはこの問題を言及しているが対応はできない。
環境毒素がALSの原因ではないかという研究は19世紀から始まる長い歴史がある。鉛中毒、ポリオ、脳の外傷、電気刺激、食事のバランスなどが原因とされてきた。ALSの発症要因として環境汚染物質が遺伝的要因に加わるという可能性は興味ある可能性のままである。

  • 妊娠中の人工甘味料入り飲料と乳児のBMIを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at artificially sweetened drinks in pregnancy and body mass index of infants
May 9, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-artificially-sweetened-drinks-in-pregnancy-and-body-mass-index-of-infants/
JAMA Pediatricsに発表された母親の妊娠中の人工甘味料摂取の乳児のBMIへの影響についての研究
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授
与えられたデータからは統計学的には適格である。しかし彼らの主な主張は「さらなる研究が必要」で、妊婦が人工甘味料を使った飲料を今止めるようにではないことに注意するのが重要である。なぜならばこの研究の限界は論文本文とプレスリリースに明確に記されているからである。それは母親が飲んだものは自己申告であり不正確である可能性があることであるが、もっと重要なのは観察研究であって因果関係は言えないことである。
詳しく述べると、カナダの母親のうち1日に最低1回人工甘味料を使った飲料(ダイエットソフトドリンクやコーヒーや紅茶を含む)を飲むのはごく僅か、約5%である。つまり毎日飲むのはカナダの母親にとっては極めて普通でない。このような普通でない母親が他の平均的母親と他のことでも違っているだろうことは予想に難くない。そして実際この報告ではそれを示している。彼らは過体重で妊娠中の喫煙と糖尿病である可能性が高い。さらに授乳を早く止めている。このグループの母親の赤ちゃんが1才の時に過体重である可能性が高いことをこの研究は発見した。ほとんど−10人中9人の赤ちゃんは過体重ではないが、人工甘味料入り飲料をほとんどあるいは全く飲まない母親に比べて、過体重である可能性が約2倍であった。過体重リスクの増加は人工甘味料によるのか、あるいはこの普通でない5%の母親の他の何か(専門用語で交絡)によるのか、だろう。研究者らは知っていることについては統計学的な修正を行っているがそれが全てかどうかはわからない。多分記録されていない普通でないことが考慮されていないだろう。
だからこの手の研究は単純に原因を確立できない。だからさらなる研究が必要だという以上のことは言えない。
生殖医療と外科超専門医で王立産科婦人科学会広報官Janine Elson博士
英国では母子の肥満は増加する問題である。この研究は妊娠中に人工甘味料入り飲料を飲んだと報告した母親のこどもの過体重リスクの増加を報告しているが確認が必要である。妊娠女性には、太る原因となる脂肪や砂糖の多い食品を減らすよう、既に助言がなされている。妊娠中に健康であることはとても重要である。水分を摂るのに水が最も健康的であるが一部はフルーツジュースやミルクやスムージーから摂ることは可能である。