食品安全情報blog過去記事

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食品添加物と包装にナノテクノロジーを使用することについての報告書

Reports on the use of nanotechnology in food additives and packaging
June 2016
http://www.foodstandards.gov.au/consumer/foodtech/Pages/Reports-on-the-use-of-nanotechnology-in-food-additives-and-packaging-.aspx
2015年に毒性学の専門家がFSANZのために既存の食品添加物や食品包装にナノテクノロジーが使われる可能性に関する2つの報告書を作成した。その後これらは薬理学や毒性学の専門家によってピアレビューされ、全体的結論に合意された。
この仕事は食品に含まれる二酸化チタン、二酸化ケイ素、銀を経口摂取することに関連する健康リスクについて妥当な根拠があるかどうか、公表されている科学文献をレビューしたものである。この仕事の延長として、食品包装に使用されるナノ物質の健康リスクについての根拠も調査した。
重要な知見
・食品用二酸化チタン、二酸化ケイ素、銀に含まれるナノサイズのものが相当な健康リスクになるという主張は根拠によって支持されない
・二酸化チタンと二酸化ケイ素は国際的に一連の食品に使用されていて何十年も安全に使われてきた。これらはオーストラリアとニュージーランドでは食品添加物として認可されている。銀もはオーストラリアとニュージーランドでは食品添加物として認可されているが認められている食品は極めて僅かである。
・全体としての知見は最近発表されたOECDの文書と一貫している。
・現在新規ナノ物質がオーストラリアとニュージーランドで食品包装に使われているという直接的根拠はない。ほとんどの特許は米国からである。
・包装へのナノクレーとナノシルバーの使用についてのケーススタディでは、ナノクレイが包装から食品に移行するという根拠はなくナノシルバーがナノ特有の消費者の健康への危険性があるという可能性は低い
報告書はこのサイトからダウンロードできる

NZ SMC
Nanotechnology in food reports – Expert reaction
June 2nd, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/06/02/nanotechnology-in-food-reports-expert-reaction/
FSANZが食品包装と食品添加物ナノテクノロジーの安全性に関する根拠をレビューした二つの報告書を発表した。
SMCは以下の専門家のコメントを集めた
カンタベリー大学物理学教授Simon Brown教授
この報告書は、根拠からはナノテクノロジーが相当な健康リスクになるという主張を支持しないとしていて、消費者にとって良いニュースだろうが、多くの読者が問題がないと思ってここで報告書を読むのを止めてしまうのは残念だ。実際にはこの報告書はもっとバランスのとれたものでいくつかの問題点も指摘している。
国連環境計画アドバイザーでもと王立オーストラリア化学研究所長、メルボルン大学名誉教授フェローIan D. Rae教授
これは良い報告書である。彼らは出版された研究文献を検索しているが、それほど文献が多くないこととさらなる研究が必要であると注記している。
(長い肩書き略)毒性学コンサルタントAndrew Bartholomaeus教授
このレビューは概ね他の規制機関での検討結果と一致している。
人類の食事には天然にナノサイズの物質が含まれ、可溶性の食品成分はサイズにかかわらず一旦溶けてしまえば他の物質とは区別できない
Flinders大学ナノスケールサイエンス&テクノロジーセンター長David Lewis教授
食品包装へのナノスケール物質の使用にはたくさんのメリットがあり新しい機会を提供する。この報告書はオーストラリアの使用を認めるための一歩前進となるだろう
オーストラリアナノスケールサイエンス&テクノロジー研究所研究リーダーMichael Biercuk教授
ナノ粒子への暴露を考えるときには相対的スケールを考える必要がある。食品包装や添加物由来の暴露は燃焼エンジンの排気、ビーチの砂のダスト、山火事由来に比べて小さい。自動車排気ガスの有害影響が最も大きな健康上の懸念であり食品包装を心配するより先に大気汚染を改善する必要があるだろう。