食品安全情報blog過去記事

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SMC

  • ダウン症候群と緑茶化合物についての専門家の反応

expert reaction to Down’s syndrome and green tea compound
June 6, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-downs-syndrome-and-green-tea-compound/
The Lancet Neurologyに発表された研究で緑茶の特定の抽出物がダウン症候群のヤングアダルトの記憶と行動をプラセボより改善したと報告されている
Imperial College London神経心理薬理学センター長David Nutt教授
ダウン症の遺伝神経生物学の理解がこの病気の治療法の可能性に繋がることはエキサイティングである。この初期の実験研究がより大規模の試験で確認されることを期待する
ICMのダウン症候群と神経変性性疾患の研究者でECNP会長Marie-Claude Potier博士
Lancet Neurologyに発表されたTESTAD研究は認知行動療法とエピガロカテキン-3-ガレートの投与を組み合わせた初めての二重盲検RCTフェーズ2臨床試験で、80人以上のダウン症候群の若い成人で12ヶ月行ったものである。ダウン症で過剰発現しているプロテインキナーゼDYRK1AをEGCGで阻害することによる認知機能の低下を治療しようとした。
子ども達での安全性と有効性と長期有害影響の検討が必要である。既にサプリメントとして販売されているEGCGを子ども達に自己処方する保護者がいることから、有害性についての疑問にこたえることが急がれる。
我々は人々に緑茶を自己処方することは勧められない。いろいろな製品にいろいろな量の成分が含まれる。
Johns Hopkins 大学遺伝学教授Roger Reeves教授
TESTAD研究の著者はダウン症で過剰発現しているプロテインキナーゼDYRK1AをEGCGで特異的に阻害することで認知機能低下を治療できると結論しているが、単一のキナーゼを高度に特異的に阻害する阻害剤はほとんどない。EGCGがDYRK1Aを阻害するという論文は多いがPRAKも同程度に、ERK2と3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1と Rho-依存性プロテインキナーゼ IIも幾分か阻害される。この研究ではEGCGは単一用量で使われていて、市販の緑茶抽出物のEGCG濃度はばらばらであることを間ゲルと、一般の人には指導のない状態でのEGCG「治療」には有害影響の可能性に注意が必要である。

  • 地中海食、脂肪量、体重を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at Mediterranean diet, levels of fat and body weight
June 6, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-mediterranean-diet-levels-of-fat-and-body-weight/
オックスフォード大学食事と集団健康教授Susan Jebb教授
この論文はスペインの2型糖尿病あるいは心血管系疾患ハイリスクの人々への3つの食事助言を比較した大規模RCTである。どの群もエネルギー制限はない。結果、体重の変化は僅かだった。この研究全体から言える最大のことは、減量するためには食べる量を減らさなければならない(カロリー制限)ということである。特定のマクロ栄養素の組成よりそのほうがはるかに重要である。
しかしながらこの論文の主な焦点は食事中の脂肪含量で、その結論は明確である。各群の脂肪摂取量の違いはエネルギーの37-42%とあまり違いは大きくないが(英国平均は35%である)、食事中の脂肪含量は体重には最小限の影響しかない(年に約0.1 kg)。
この論文は食事介入試験を行うのがどんなに難しいかについても示している。ここでは参加者は3ヶ月毎に栄養士に指導を受けているが彼らの行った変更はごく僅かである。
脂肪の摂取量は開始時には約40%で、オリーブ油を週に1Lあるいはナッツを1日30g提供された群は42%になった。対照群は、何もしないのではなく30%以下の低脂肪食を薦められた。実際には37%であった。これは「低脂肪食」ではない。
結局群間の脂肪摂取量の差は小さく、体重もそれほど変わらない。
各群の脂肪摂取量が英国平均より多いことから、この研究から低脂肪食の影響について結論を導くことは不可能である。
Reading大学栄養科学者Gunter Kuhnle博士
これは興味深い研究で、その発表は全国肥満フォーラムによる議論の多い報告書が発表されて数日後とタイミングがよい。しかしこの研究は脂肪を多く食べても体重が増えないことを示唆しているわけではないことが重要である。
PREDIMED研究は食事についての単純化したアプローチは短絡的で効果がないことを確認した。脂肪、炭水化物、タンパク質は全て我々の食事に必要で、どれかひとつを悪者にするのは間違っている。そうではなく、より広範な食事パターンとして見るべきであろう。
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
この論文はエネルギーに占める脂肪の割合の高い食事をしても体重が増えないことは可能であると主張する。このことは既に知られているが広く受け容れられているわけではなく、脂肪の摂取上限を35%から42%に上げると肥満が増えるのではないかと恐れられている。しかし重要なことは脂肪の割合を増やすことと脂肪を多く摂ることを一緒にしないことである。
どの群も現在英国で食べられている平均35%より脂肪が多く、「低脂肪」群が39から37%、地中海食が39.2から41.2%、39.4から41.5%と僅かな違いしかなく、体重に意味のある影響がなかったのは驚くことではない。
この研究を、健康的な脂肪をたくさん食べても体重が増えないと解釈するのは間違いである。
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授
この研究の主な結論は一貫している。5年の間、食事助言による重要な違いは観察されなかった。しかしながらいくつか考慮することがある。研究対象はスペインの高齢者で2型糖尿病や心疾患のハイリスクである。試験開始前に90%以上が肥満または過体重であった。若い人や他の食事の人や太っていない人のことはこの研究からはわからない。
定期的に食事に関する助言を受け、無料のオリーブ油やナッツを与えられても、実際の食生活の変更は平均すると大きくはないということは極めて驚くべきことである。
最後に、この研究の一次エンドポイントは心血管系疾患であり、この解析は副次的なものであることに注意。

Before The Headlines(研究についての解説)
地中海食、脂肪量、体重
Mediterranean diet, fat levels and body weight
June 6, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/mediterranean-diet-fat-levels-and-body-weight/
Lancet Diabetes & Endocrinologyに発表された論文が高脂肪地中海食の体重への影響を調べている。その中で著者はカロリー制限しない、植物油の多い地中海食が心血管系疾患リスクのある高齢者の体重減と関連すると報告している。コメントが一緒に発表されている。
その論文についての解説