食品安全情報blog過去記事

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論文

  • The Lancet Diabetes & Endocrinology:糖尿病のある高齢アメリカ人は障害無く長生きしている、米国の研究が示した

The Lancet Diabetes & Endocrinology: Older Americans with diabetes living longer without disability, US study shows
11-Jun-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-06/tl-tld061016.php
1940年代に生まれた糖尿病の高齢アメリカ人は、1930年代に生まれた人たちより日常生活の障害が少なく長生きしている。

  • 消費者はLED光に暴露されたミルクが嫌い

Consumers sour on milk exposed to LED light
9-Jun-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-06/cu-cso060916.php
売店の照明やディスプレイケースにLED光が増えているが、それはミルクを飲む人にとっては悪いニュースかもしれない。コーネル大学の食品科学部の研究者らが発光ダイオードの光に数時間暴露されただけで液体ミルクの認識される質が下がる。LEDの波長がリボフラビンの吸収する波長に近い460 nm付近であることが原因ではないかと示唆している。

  • SMC UK

高齢者ではLDLコレステロールと死亡率に関連がないことを報告した系統的レビューへの専門家の反応
expert reaction to systematic review reporting lack of an association between LDL cholesterol and mortality in the elderly
June 12, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-systematic-review-reporting-lack-of-an-association-between-ldl-cholesterol-and-mortality-in-the-elderly/
BMJ Openに60才以上のほとんどの人にとって悪玉(LDL)コレステロールと死亡率に逆相関があると報告された
英国心臓財団医学副部長Jeremy Pearson教授この論文は高齢者の悪玉(LDL)コレステロールと全死亡リスクとの関連を検討した研究を簡単にまとめたものである。若い人たちと違って、高齢者ではLDLコレステロールの濃度と死亡の増加に関連がない。一部ではLDLが低いことと死亡増に関連がある。しかしながら、高齢になるにつれて全体的健康に影響する要因が多くなり、コレステロール濃度の影響が検出し難くなるので、このことは驚くべきことではない。
一方で大規模臨床研究でLDLコレステロールを減らすことが全原因での死亡と心疾患や脳卒中による死亡を減らすことが極めて明確に示されている。
Sheffield大学心血管系医学准教授で心臓相談医Tim Chico博士
この研究で要約されているような観察データは興味深いものの、いわゆる「交絡」影響により、しばしば間違っている。文献にはこの種の例が満載で、だから心疾患へのコレステロールの影響を調べるのにRCTが「ゴールドスタンダード」なのである。
高齢者でもコレステロールを下げることで心疾患リスクを下げることが調べられている。私はこの研究の著者らがそのような試験結果を飲用していないことに驚く。
(日本でも定期的に週刊誌ネタになる。原因が何であれ、死にそうな人のコレステロールが低いことはよくあるので交絡しやすい。わかっててやってる感があるのが何とも。一方食品中のコレステロールはあまり関係ないという話は確かに最近変わったことかもしれないので、世間話レベルだと「コレステロールの常識が変わったらしいよ」ということでごっちゃにされてしまっている可能性もある)

  • SMC

ライフスタイル要因が世界の脳卒中コストを上げている−専門家の反応
Lifestyle factors drive global stroke cost – Expert reaction
June 10th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/06/10/lifestyle-factors-drive-global-stroke-cost-expert-reaction/
脳卒中による死亡や障害の90%以上が変えられるリスク要因による、とニュージーランド人が主導した新しい世界研究が発見した。The Lancet Neurologyに発表された新しい研究の著者は、これらのリスク要因を下げて世界脳卒中負荷を減らすには課税が鍵となる可能性があると言う。
彼らは世界疾病負担研究の1990-2013年の188ヶ国17リスク要因についてのデータを用いた。世界的には10大リスク要因は高血圧、果物不足、BMIの高さ、ナトリウムの多い食事、喫煙、野菜不足、環境汚染、固形燃料使用による屋内空気汚染、全粒穀物の少ない食事、高血糖である。世界的に脳卒中の腫瘍リスク要因は喫煙、貧しい食生活、運動不足で、脳卒中は概ねライフスタイルにより引き起こされる病気である、と主著者のオークランド工科大学Valery L Feiginは言う。
UK SMCが以下のコメントを集めた。
Sheffield大学心血管系医学准教授で心臓相談医Tim Chico博士
この研究は膨大な情報源から情報を組み合わせて異なるリスク要因の相対影響を推定しようとしたもので、この種の推定には不確実性がつきまとうものの多分最も包括的なものである。プレスリリースやエディトリアルでは大気汚染の影響を強調しているが西ヨーロッパでは途上国より重要性は低い。私にとって最も意味のある知見は、脳卒中の約70%は個人で対応できることに関連する、ということである。すなわち喫煙、運動不足、貧しい食生活。そしてこれは他の多くの研究と一致している。
オックスフォード大学Catastrophe Risk Financing部長で統計学者のPatrick McSharry博士
この研究はしっかりした統計解析を用いて最も大きな脳卒中のリスク要因を決めようとした。途上国では大気汚染が大きな要因であるが環境汚染がこれまでより大きい。
英国での5大要因は高血圧、BMIの高さ、果物不足、野菜不足、喫煙である。もう一つは運動不足。政策決定者にとってポジティブな知見は脳卒中の90%が変えられるリスク要因によるということである。
Global burden of stroke and risk factors in 188 countries, during 1990–2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013
http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(16)30073-4/abstract
(心血管系疾患に比べて脳卒中は日本が世界の劣等生で、和食がいいと言っている人たちがいつも無視する「不都合な真実」)