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SMC NZ

  • 魚油が大腸がんに良いかもしれない−専門家の反応

Potential bowel cancer benefit of fish oils – Expert reaction
July 20th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/07/20/potential-bowel-cancer-benefit-of-fish-oils-expert-reaction/
油の多い魚由来の脂肪酸の多い食事は大腸がんで死亡するリスクを減らすかもしれない、しかし専門家はこの知見は予備的なものだと注意する
新しい米国での研究が食事からの魚由来オメガ3脂肪酸の多いことと大腸がん患者の死亡リスクの低さに関連があるかもしれないことを示す。この知見はBMJの雑誌Gutに発表されたもので、二つの縦断研究の参加者について検討したものである。彼らは2年ごとに食品頻度質問票に回答している。二つの研究で1600人以上が大腸がんになり、1日に少なくとも0.3gのオメガ3脂肪酸を食べていた人は1日0.1g以下の人より大腸がんで死亡するリスクが41%低かった。研究者らはこの知見は観察研究によるものなので因果関係についてしっかりした結論はできないと注記している。油の多い魚からオメガ3脂肪酸を多く食べている人たちは活動的でマルチビタミンを摂っていて飲酒していてビタミンDと食物繊維を多く摂る率が高い。
SMCは以下の専門家のコメントを集めた
カンタベリー大学健康科学部がん疫学教授Ann Richardson教授
Nurses’ Health StudyとHealth Professionals Follow-up Studyは高く評価されているコホート研究である。これらは観察研究であるためコントロールされていない交絡要因による影響をうけやすい。プレスリリースではそのことを明確に指摘している。飲酒がリスクの低さと関連する要因としてプレスリリースに含まれるのは誤解を招く。アルコールは直腸結腸がんリスクを増やす。
オークランド大学Liggins研究所小児内分泌学教授Wayne Cutfield教授
米国の2つの大規模コホートではオメガ3多価不飽和脂肪酸(PUFA)摂取は大腸がんによる死亡の減少と関連した。魚由来と魚油サプリメント由来を区別せず、全原因による死亡には差がない。いくつかのバイアスの可能性がある。またメカニズムも明確でない。
歴史的にはオメガ3PUFAは心疾患イベントの削減との関連で報告され始めた。その後介入試験では概ねこれらの関連が否定されている。この研究の著者が言うように因果関係かどうかを調べるには介入試験が必要である。オメガ3サプリメントを大腸がんの治療に使うのは時期尚早である。
以下UK SMCが集めたコメント
もと食品研究所研究リーダーで栄養と消化管の健康についての独立コンサルタントElizabeth Lund博士
この研究は興味深い。一般的に魚の保護作用は脂肪酸組成のせいだと信じられているがそれは確実ではなくサプリメントを摂るより魚を食べた方がいいだろう。この研究は一般的に魚をあまり食べない米国人でのもので、欧州で同様かどうかを調べるのはおもしろいだろう。この研究で最も多くオメガ3脂肪酸を摂る群とされている1日0.3gは大体週に1回小さい油の多い魚を食べることに相当し、英国食事ガイドラインと同じである。
Reading大学薬理学講師(n-3 PUFAの心血管系疾患影響の研究者)Alister McNeish博士
この研究は興味深い根拠を提供する。n-3脂肪酸摂取量の多い群は運動や禁煙など他の直腸結腸がんリスクに有用な行動も多いことに注意する価値があるだろう。また因果関係を証明するものではない。
オメガ3魚油は一般的に血流を改善すると考えられていて、腫瘍の血流が減るという考えは矛盾しているように見える。これは血流ではなく腫瘍の血管新生減少の可能性がある。従って心血管系の利益のためにオメガ3を摂取している人はこの報告で心配する必要はない。
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
これは観察研究であり大腸がんリスクの低さがオメガ3脂肪酸のためだとすることはできない。ビタミンDもまた大腸がんに保護作用がある。魚を食べる人は赤肉や加工肉を食べる量が少ない可能性もある。この研究はオメガ3脂肪酸サプリメントを摂ることを支持しないが、週に1-2度魚を食べることは良いことだという主張を支持する。