食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 専用レシピに従って自宅調理した食事と市販の離乳食を比べた研究への専門家の反応

expert reaction to study comparing home-cooked meals from specialist recipes and pre-prepared commercial meals for infants
July 19, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-comparing-home-cooked-meals-from-specialist-recipes-and-pre-prepared-commercial-meals-for-infants/
Archives of Disease in Childhoodに発表された報告について
Bristol大学糖尿病と代謝内分泌学教授Julian Hamilton-Shield教授
著者が調べたのがどのような食事なのかを正確に特定することが重要である。プレスリリースでは自宅で料理することそれ自体がいつでも離乳食にとってより良いことだとは限らないと示唆していて誤解される可能性がある。この研究でしらべたのは市販の調理済みの食品と市販の料理本の食事である。それは必ずしも自宅の食事とは同じではない(著者は指摘している)。自宅で離乳食を作る人のうち市販の離乳食レシピ本を使うのはごく僅かであろう。著者は保護者がそのような料理本をどれだけ利用するかは調べていない。どちらかといえばこの研究はそのような離乳食「専用」レシピ本の価値に疑問を提示している。

expert reaction to study looking at different types of polyunsaturated fatty acid and type 2 diabetes risk
July 19, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-different-types-of-polyunsaturated-fatty-acid-and-type-2-diabetes-risk/
PLOS Medicineに発表された論文で多価不飽和脂肪酸2型糖尿病リスクの関連について探り、特定の脂肪酸ごとにリスクに違いがあると報告している
食品研究所名誉フェローの栄養研究者Ian Johnson博士
この研究はサイズと血中脂肪酸の客観的測定の使用により興味深い重要な研究である。結果は循環している脂肪酸2型糖尿病リスクの複雑な関連を明らかにした。リノール酸の濃度の高さは糖尿病リスクの低さと関連し、動物由来の飽和脂肪より植物油で調理することを薦める食事ガイドラインに一致している。しかしこの研究は将来的に食事助言に関連するかもしれないが、直近では脂質代謝と糖尿病についてのさらなる研究の道を拓いたことに価値がある。

  • 砂糖と子どもの肥満と心疾患リスク要因を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at sugar, childhood obesity and heart disease risk factors
July 19, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-sugar-childhood-obesity-and-heart-disease-risk-factors/
Atherosclerosisに発表された研究が、肥満の子どものカロリーではなく砂糖を減らすことが心血管系疾患リスクのマーカーを減らせると報告した
Essex大学臨床生理学(心臓学)准教授で研究部長Gavin Sandercock博士
この研究は極めて特定の小規模グループの子ども−肥満の、代謝上の既往症のある、砂糖摂取量が多いヒスパニックまたはアフリカ系アメリカ人の−でのもので、ほとんどの集団に一般化できない。たった9日で対照群が無く質が高いとは言えない。この論文の根拠からはプレスリリースの砂糖を減らせば血圧が下がる、は支持されない。プレスリリースの言葉遣いは誤解を招くものである−彼らが減らしたのは実際には砂糖ではなく果糖である。また「砂糖は肝臓で脂肪に代謝される」も誤解を招くもので、砂糖(ショ糖)やデンプン質の食品は筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられエネルギーとして利用される。サブタイトルの「犯人はカロリーではなくお菓子だ」というのも誤解を招く。お菓子には果糖はほとんど含まれない。
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
これは小規模で短期の対照群のない肥満の子ども達での試験である。果糖が肝臓以外では代謝されないので肝臓の脂肪合成を促進するのは既に知られている。この研究で測定しているのは血中脂肪で心疾患ではない。変化はごく僅かである。子ども達の心疾患リスクは低く、心臓発作は主に50才以上の人でみられる。対照群がないことが最大の問題で、そのことがプレスリリースを無意味にしている。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
精製した糖を過剰に食べるのは避けるべきであるのは疑いないがこの研究は過剰宣伝である。精製した糖の削減だけに集中すべきではない。この論文は現在の食事助言について何も変えない

  • 地中海食、脂肪摂取、健康アウトカムのレビューへの専門家の反応

expert reaction to review paper looking at Mediterranean diet, fat intake and health outcomes
July 18, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-review-paper-looking-at-mediterranean-diet-fat-intake-and-health-outcomes/
Annals of Internal Medicineに発表された論文が各種の食事法を比較し、脂肪摂取を制限しない地中海食が乳がんを含む疾患頻度を減らすかもしれないが全原因による死亡には影響しないと報告した。
Reading大学栄養と健康准教授Gunter Kuhnle博士
最近食事助言の脂肪の役割についての議論が盛んである。食事助言については広範な合意があるものの、議論があることが重大な矛盾があるという間違った印象を与えている。
この最新の研究は地中海食が西洋風食事より健康的かどうかについての現在入手できる根拠をレビューしたものである。地中海食にメリットがあるという一般的認識にも関わらず根拠は限定的でほとんどは観察研究である。このレビューに含まれる二つの臨床試験で心血管系疾患や糖尿病やがんに幾分かのメリットが示されているが全死亡率は減っていない。観察研究で見られるメリットも小さいものである。
「高脂肪」を強調するのは誤解をまねくもので、PREDIMED研究では実際の脂肪摂取量情報を提供しているが地中海食と対照の「低脂肪」群で脂肪摂取量に差はない
もと食品研究所研究リーダーで栄養と消化管の健康についての独立コンサルタントElizabeth Lund博士
この研究は地中海タイプの食事による慢性疾患リスク削減の可能性について幾分かの興味深い知見を提供する。これまでの研究をまとめようとしたが、それは著者は困難であると認識している。何が地中海食なのかについて多様性が大きいからだ。
議論されている結果はほとんどが観察研究である。論文のタイトルの解釈には注意が必要である。