食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 原始人ダイエットでがん?170万年前に生きていた人に聞いてみよう

Cancer on a Paleo-diet? Ask someone who lived 1.7 million years ago
28-Jul-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-07/uotw-coa072716.php
南アフリカの化石からヒト最古のがんの根拠
South African Journal of Scienceに発表された二つの論文で約170年前の足の骨に悪性腫瘍の決定的根拠が発見されたことを報告。「がんは現代のライフスタイルや環境要因がひきおこす病気だとみなしがちだが、我々の研究は近代工業化社会ができる何百万年も前の我々の古い祖先のころからあることを示す」と著者は書いている

  • ネオニコチノイド殺虫剤の雄のミツバチの生殖能への影響を調べた研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study investigating the effect of neonicotinoid pesticides on male honeybee fertility
July 27, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-the-effect-of-neonicotinoid-pesticides-on-male-honeybee-fertility/
Proceedings of the Royal Society Bに発表された論文で、殺虫剤がミツバチの寿命を減らし精子の生存率を減らしたが精子の量は減らさないと報告された
James Hutton研究所上級昆虫学者Nick Birch教授
これは興味深い研究だが欧州での実際の農業の状況にあてはまるかどうかについて評価するフォローアップ研究が必要である。注意すべき欠点としてはミツバチが殺虫剤を摂取したかどうか確認せず暴露量を測定していないことである。雄の蜂は通常雌の働き蜂の三倍食べるのに殺虫剤の寿命への影響が雌雄で同じようである。また先の研究で集団により感受性が大きく異なることが報告されているミツバチの集団毎のネオニコチノイド感受性の遺伝的変動についての考察がない。
チアメトキサムを製造・販売しているSyngentaの上級環境リスク評価者Peter Campbell博士
これはチアメトキサムとクロチアニジンの雄のミツバチの生殖能への影響を調べた興味深い研究である。著者はネオニコチノイドを食べさせたミツバチの生きた精子が減っていると報告しているが、そのデータは同時に対照群と処置群の両方で実験中の精子の産生数が大きく異なることも示されている。さらに著者自身がこの研究での精子の質はこれまで発表されている研究と比べて低いと報告している。この研究で報告されたネオニコチノイド処理群の精子の生存率はこれまで発表されている健康なミツバチで報告されている範囲内である。著者らは巣で38日間ネオニコチノイド処理した花粉を直接与えられたことが実際の使用条件とどう関係するのかを議論していない。女王蜂は何度も交配するので、精子の質が下がることが女王の繁殖能力にどう影響するのか不明である。
Dundee大学神経生物学准教授Christopher Connolly博士
女王蜂は短期間に多くの雄の蜂と交配しその一生交配せず貯蔵された精子を使う。この研究から生じる疑問は女王蜂の生殖能力が落ちるのかどうかである。この実験で使われた殺虫剤の量は現実的であるが二つを同時にこの量で摂取するのかどうかは不明である。個々のネオニコチノドを別々に調べるのが重要である。重要なことは、この研究は殺虫剤への慢性暴露の結果が複雑であることを示したことでそれは安全性試験では調べられない。従って予防原則の採用を支持する。このメカニズムはわからないものの、もしこれが受容体を介するものなら、ヒトで同じようなことがおこることはないだろうことも強調しておく。