食品安全情報blog過去記事

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アレルギー原となる食品を赤ちゃんに与える研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study of feeding allergenic foods to babies
September 20, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-of-feeding-allergenic-foods-to-babies/
JAMAに発表された研究で卵やピーナッツの乳児への早期導入がこれらの食品へのアレルギー発症リスクの低さと関連すると報告
英国免疫学会広報官Louisa James博士
以前のガイドラインでは親や保護者に乳児の食事へのアレルギー原となる食品の導入は遅らせるように薦めていた。この見解は最近の臨床研究で早期にピーナッツや卵を摂取することは実際には食物アレルギー発症を予防することが示されて疑問を提示されている。
ここ数十年の食物アレルギーの頻度の増加を考えると、乳児の食事へのアレルギー原となる食品の導入時期に関する新しいガイドラインが必要であろう。いくつかの臨床試験のデータを併せて、Ierodiakonouらは卵は4-6ヶ月、ピーナッツは4-11ヶ月で導入することがそれぞれの食品へのアレルギー発症リスクを減らすという根拠を提示している。残念ながら解析対象の試験の規模は小さく試験方法も違う。つまり全体としてはポジティブな知見ではあるものの新しい助言のためには追加の根拠が必要であろう。限界はあるものの、これらの知見は期待できるもので、アレルギー原となる食品の導入時期が食物アレルギーの自然史に影響するというコンセンサスの増加を支持する。
Southampton大学小児アレルギー呼吸器医学部教授で名誉小児科相談医Graham Roberts教授
Imperial CollegeのRobert Boyle博士らのグループは異なる離乳のしかたがアレルギーになるかどうかにどう影響するのかを包括的にレビューした。著者らはピーナッツと卵の早期導入がアレルギー発症を止めると結論している。しかし注意が必要である。まず卵の早期導入は一部の研究で卵アレルギーの発症を抑制しているが多くの子どもはアレルギーになっている。二つ目はピーナッツの早期導入に効果があるのはピーナッツアレルギーになるリスクが高い赤ちゃんに対してであろうように見える。既にアレルギーになっている可能性があるので最初に精査が必要である。
では親はどうすればいいのか?もし赤ちゃんがひどいアトピーや食物アレルギーなら、子どものアレルギー専門病院に行くこと。
Boyle博士らの研究はFSAが資金を提供した。彼らはこの結果を用いて2017年にガイドラインを更新するだろう。
Brighton & Sussex医科大学アレルギー呼吸医学教授Anthony Frew教授
メタ解析は適切に行われているが、アレルギーリスクの低い時代の早期の研究とより最近のしっかりしたデータを組み合わせることに対して私は疑いを抱く。従ってこの論文は技術的にはしっかりしていて結論は現在の医学・科学の意見と一致するがその基礎はそれほど頑健ではない。現在の状況により適用可能なのは最近に研究である。さらに一般的には、エディトリアルで強調されているが、初期の、アレルギー原となる食品の導入を遅らせないように、という医学的助言が立証された。早期の導入は適切だったのだ。1998年の英国政府の毒性委員会のハイリスク乳児はピーナッツを避けるようにという助言はより広範な低リスク集団にまで拡大適用され、多くの不安と有害影響を引き起こした。助産師や母親団体は特定の対象集団に向けた助言を、全ての保護者がアレルギーリスクに関係なくこれらの食品を避けることがいいことだとみなした。実際には逆だった。

Timing of allergenic food introduction to the infant diet and risk of allergic or autoimmune disease: a systematic review and meta-analysis’ by D. Ierodiakonou et al published in JAMA
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2553447

エディトリアル
Early Allergen Introduction for Preventing Development of Food Allergy
Matthew Greenhawt,
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2553431