食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • クラゲが食品偽装と戦う科学者を手伝う

Jellyfish help scientists to fight food fraud
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/uos-jhs101216.php
マリンエコラベルの真正性を確認するのに北海のクラゲに含まれる化合物の変動情報を使う方法。Methods in Ecology and Evolution。

  • 葉酸摂取の多さは良くある遺伝的変異のある高齢者の神経傷害リスクと関連

High folate intake linked with nerve-damage risk in older adults with common gene variant
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/tuhs-hfi100716.php
ビタミンB12輸送体タンパク質をコードするTCN2の遺伝的変異(GG変異)をもつ人は、ビタミンB12欠乏に関連する末梢神経傷害になりやすい。GG変異があり葉酸の一日推奨摂取量800 マイクログラムの2倍以上を摂取している人は変異のない人に比べて7倍末梢神経傷害になりやすい。800マイクログラム以下の摂取量では差がない。この研究デザインは因果関係を結論できるものではないが葉酸の摂り過ぎもまた健康に良くはない可能性があるという根拠を加える。American Journal of Clinical Nutrition
(この量は普通の食事からは摂れないので問題があるとしたらサプリ使用者)

  • 英国女性の心疾患の社会的不平等はライフスタイルの選択による

Social inequality in heart disease risk among UK women is due to lifestyle choices
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/bc-sii101016.php
教育レベルが低く貧困地域に住む英国人女性は冠動脈心疾患リスクが高く、それは主に喫煙や肥満、運動不足などによる。BMC Medicineに発表された100万人以上の女性の研究。
(飲酒だけは社会的地位の高い人のほうが多く飲むらしい。結局これが酒が健康に良いと錯覚される理由)

  • こどもはどのくらいテレビゲームをすべきなのか?

How long should children play video games?
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/w-hls101216.php
Annals of Neurologyに発表された論文によると、子ども達が毎週限定的時間テレビゲームをすることは利益があるかもしれないがやりすぎは悪影響がある。
週に1時間ゲームをする子どもは運動スキルが良く成績も良いが2時間以上やってもさらに良くなることはない。週に9時間以上の子ども達では時間が長くなるほど喧嘩や社会的能力などへの負の影響がある。テレビゲームそのものは良くも悪くもなく、その使用量による。

Study examines cancer rates among World Trade Center-exposed firefighters
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/w-sec101216.php
American Journal of Industrial Medicine。
甲状腺がんが約4倍に増加していた。しかしこの増加はがん検診によるバイアスを調整すると有意ではなくなる。また前立腺がんも1.4倍。
甲状腺がんは、心配だからと親切心でがん検診をすることの有害影響のシンボルのようだ。まさに「善意による地獄への道」。)

  • 試験法がデンプン中のタンパク質の検出を改善する:「グルテンフリー」表示に役立つ

Test improves detection of proteins in starch; aids in 'gluten-free' labeling
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/acs-tid101216.php
Journal of Agricultural and Food Chemistryにゲル浸透HPLCと蛍光による検出法が報告された。新しい方法は26のデンプン検体のうち19からELISA法より多くの量を検出し、「グルテンフリー」と表示されていた12製品から25.6-69mg/kgのグルテンを検出している。グルテンフリー表示の最大値は20 mg/kg。
(もともと20 mg/kgを設定した根拠のデータが古い測定方法なら、新しい方法でそれより多いから危険とは限らないが、混乱のもとにはなる。規制値は測定方法とセットである、ということが全く理解されていないようだし)

  • 医薬品ウェブサイトのリスク警告をテネシー大学の教授が研究

University of Tennessee professor studies drug website risk warnings
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/uota-uot101216.php
アレルギー患者29人に新しいアレルギーの薬についてのオンライン健康情報を読んでもらって目線の追跡と質問を行った。リスク情報についてはあまり注意していないことがわかった。Journal of Risk Researchに発表。

  • 予防接種をしない成人は米国に年に70億ドル以上の費用負担となる

Unvaccinated adults cost the US more than $7 billion a year
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/uonc-uac101216.php
Health Affairsに発表された研究。2015年にワクチンで予防できる病気による米国経済へのコストは89億5000ドルだったがそのうち80%の71億ドルが予防接種をしない個人のせい。

  • アメリカ人は何を恐れているのか?Chapman大学の第三回アメリカの恐怖年次調査発表

What do Americans fear? Chapman University's 3rd Annual Survey of American Fears released
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/cu-wda101216.php
例年のように暴力とお金と医療があがっている
2016年は陰謀論についても追加調査した。
半分以上のアメリカ人が政府は9/11攻撃やJFKの殺人についての情報を隠していると信じていて、地球温暖化と地球外生命体の情報を隠していると信じているのは40%、オバマ大統領の出生とAIDSウイルスに関する陰謀論は1/3が信じている。陰謀論を最も信じやすいのは仕事はあるが収入と教育レベルは低い共和党員でキリスト教宗派の信者であるが礼拝などにはあまり行かない人。陰謀論信者は近い将来について悲観的で政府を恐れ他人を信じず、銃を購入するなど恐怖に由来する行動をとりやすい。

  • 無煙タバコ製品スヌースsnusは前立腺がん患者の死亡リスクを増やすかもしれない

Smokeless tobacco product snus may increase risk of death among prostate cancer patients
12-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/htcs-stp101216.php
International Journal of Cancerに発表された、1971年から1992年の間のスウェーデン建設業労働者のデータを解析したHarvard Chan Schoolの研究者らの研究。このうちの9582人が前立腺がんになり、フォローアップ期間の前立腺がんによる死亡は2489人。全く喫煙しとことのない人に比べて、タバコは吸わないがスヌースを使う人の前立腺がんによる死亡は24%多く他の理由による死亡も19%多い。

  • 飲み過ぎ、飲み込み阻害、飲み込む前の脳の領域の反応

Overdrinking, swallowing inhibition, and regional brain responses prior to swallowing
Pascal Saker et al.,
http://www.pnas.org/content/early/2016/10/05/1613929113.abstract
ヒトの液体摂取調節メカニズムについての研究。喉が渇いているときと水をたくさん飲んだ後の水の飲み込みやすさと脳の活動を調べた。

Nitrate Intake Promotes Shift in Muscle Fiber Type Composition during Sprint Interval Training in Hypoxia
Stefan De Smet et al.,
Front. Physiol., 14 June 2016
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2016.00233/full
レーニングの3時間前に硝酸ナトリウム6.45mmol(硝酸イオンで約400mg)カプセルを摂取
(食品では濃度を減らそうとしている一方でアスリートは多少健康に悪くても能力が上がるならやる、という。ADI 3.7 mg/kg body weight)

Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness
H. Gilbert Welch, M.D., M.P.H., Philip C. Prorok, Ph.D., A. James O’Malley, Ph.D., and Barnett S. Kramer, M.D., M.P.H.
N Engl J Med 2016; 375:1438-1447October 13, 2016DOI
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1600249?query=featured_home
1975年から2012年までのSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)計画のデータを用いて40才以上の女性の腫瘍サイズの分布とサイズごとの乳がん頻度を計算した。それからサイズごとの乳がんによる死亡率をマンモグラフィーによる乳がん検診が広く行われる前(1975-79年)と最近(2000-2002)で比較した。
結果として、乳がん検診により検出される腫瘍には小さいものが増えた。疾患の罹患率が一定だと想定すると、10万人あたり162の小さな腫瘍が余分に診断されるようになったがそのうちたった30のみが大きくなるもので残りの132例は過剰診断である。乳がんによる死亡率の低下は少なくとも2/3は治療法の改善による。

10-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Localized Prostate Cancer
Freddie C. Hamdy et al.,
N Engl J Med 2016; 375:1415-1424October 13, 2016
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1606220?query=featured_home
PSA検査で検出された前立腺がんを慎重な経過観察、手術、放射線療法の3つに無作為割付して10年のフォローアップの結果。結論としてどの群でも死亡率は低く差がない。

前立腺がんの観察、手術、放射線療法後の患者の報告するアウトカム
Patient-Reported Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer
Jenny L. Donovan et al.,
N Engl J Med 2016; 375:1425-1437October 13, 2016
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1606221?query=featured_home
排尿や排便、性機能、不安、鬱などQOLについてはそれぞれの群で異なる
性機能と排尿については手術の群が最もネガティブ、放射線療法は6か月後に悪くなるが回復する、など。不安や鬱などに有意差はなかった。

エディトリアル
早期の前立腺がんを治療するか観察するか
Treatment or Monitoring for Early Prostate Cancer
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1610395?query=featured_home