食品安全情報blog過去記事

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  • Scienceニュース

Science 14 October 2016  Vol 354, Issue 6309は蚊の特集
40年経って、蚊に対する最も重要な武器が役にたたなくなっているかも
After 40 years, the most important weapon against mosquitoes may be failing
By Kai KupferschmidtOct. 13, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/10/after-40-years-most-important-weapon-against-mosquitoes-may-be-failing-how-will-we
Janet Hemingwayが1977年に蚊の駆け出し研究者だった頃、10秒に一人の子どもがマラリアで死んでいた。なのにこの病気は世界の健康上の優先順位が低かった。
今光景は変わった。現在Hemingwayが学長を務める英国のリバプール熱帯医学校や他の研究所で少なくとも23種類の蚊のゲノム配列が決定されこの病気に打ち克つ方法が探索されている。そしてマラリアが世界の課題のトップになり資金が増え死亡数が減った。
しかし変わらないことがある。世界はいまだに同じクラスの殺虫剤、ピレスロイドに頼っている。そして蚊が耐性を獲得し今や有用性は失われつつあるのにその代わりになるものがみつかっていない。
ピレスロイドは過去数十年の世界のマラリア対策に特段の役割を果たした。家の中で使われる主な化合物で蚊帳にはこれしか使えない。2000年代初めにアフリカに殺虫剤処理蚊帳を大量に配布し始めたとき耐性についてはあまり考えられなかった。しかし科学者は驚かない。先に使われた殺虫剤DDTは1940年代にマラリアを減らしたが多くの場所で耐性が生じた。スリランカでは1960年代末までにDDTの使用でマラリアが根絶できそうになったが耐性が拡大して再び増加に転じた。その時にRachel Carsonが毒性を強調し多くの国で使用が禁止された。企業には公衆衛生のための殺虫剤開発のインセンティブがない。
殺虫剤耐性は時限爆弾で問題はリアルで悪化するばかりである。多くの科学者がGM蚊のような方法を期待している。ツールは種類が多い必要がある。
(以下略。住友化学のSumiShieldも紹介されている)

ブラジルは感染症と闘うために何十億匹もの実験室で育てた蚊を放出しようとしている。効くだろうか?
Brazil will release billions of lab-grown mosquitoes to combat infectious disease. Will it work?
By Kelly ServickOct. 13, 2016 ,
http://www.sciencemag.org/news/2016/10/brazil-will-release-billions-lab-grown-mosquitoes-combat-infectious-disease-will-it
長い記事
目的は蚊を殺すことではなくヒトの病気を減らすこと

この科学者が究極の蚊キラー
This scientist is the ultimate mosquito killer
By Kai KupferschmidtOct. 13, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/10/scientist-ultimate-mosquito-killer
蚊を殺すいろいろなアイディアを提案しているオランダの昆虫学者Bart Knolsの話

  • 味噌の魔法

The Magic of Miso
by Berkeley Wellness | October 12, 2016
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food/article/magic-miso
味噌はアジア、特に日本料理で使われる発酵大豆ペーストである。伝統的には大豆と塩と麹(Aspergillus oryzae)を混ぜて木の樽で3年まで寝かせて作る。しばしば大豆は大麦やコメと混ぜて使われる。味噌は他の豆や微生物でも造られる。種類はいろいろあり特有の「うまみ」、テクスチャー、色がある。味噌は水に溶かして汁を作るのに使われる。和え物やソースやサラダドレッシングにも使われる。平均してテーブルスプーン1杯で35カロリー、タンパク質2g、炭水化物4g、脂肪1g、食物繊維1g、マンガン、銅、ビタミンK、亜鉛、鉄、ビタミンB少々を含む。他の大豆製品同様イソフラボンなどを含む。問題は味噌にはナトリウムが多いことで、テーブルスプーン1杯で635mg、1日の上限の約1/4を含む。
発酵や加工の工程により味噌には各種の生理活性化合物が含まれる可能性がある。しかし味噌の健康影響に関する研究は少なく、特に他の大豆食品に比べると少ない。そしてほとんどの研究が大豆消費量の多い国で行われているため特定の大豆食品を分離するのはほぼ不可能である。味噌の効果についての僅かな研究の結果は一貫していない。
ナトリウム含量が多いため、味噌は少しだけ使おう。減塩タイプの味噌でもたくさんのナトリウムを含む。また味噌にはチラミンが多いので一部の人には頭痛をおこす可能性があり、MAO阻害剤を含む一部の医薬品を使用し手いる場合には避けるべきである。

  • 遺伝子と病気の関連を考え直す

Natureエディトリアル
Rethink the links between genes and disease
12 October 2016
http://www.nature.com/news/rethink-the-links-between-genes-and-disease-1.20771
ExACデータベースは有害だと考えられていたたくさんの突然変異に害がないことを示した
過去最大のヒトゲノムのタンパク質コード領域の遺伝子変異カタログであるエクソーム収集共同事業体Exome Aggregation Consortium (ExAC)の大きな発見の一つは、多くの遺伝子変異が間違って有害であると分類されていたことである。この研究の著者によると、一人の人には平均54の現在病原性だと考えられている突然変異があるが、そのうち約41は実際にはヒト集団によく見られるもので重大な病気を引き起こす可能性はない。
(中略)
これから研究者は仕事のしかたを変えなければならない。もし病気に関連することが疑われる変異を見つけたら、ExACのようなデータベースでそれがよくあるものなのかどうかをチェックしなければならない。そしてその変異が病気と関連すると主張する前にその変異の機能的役割についての根拠を集めなければならない。さあ始めよう。