食品安全情報blog過去記事

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ビスフェノールA:新しい免疫系の根拠は有用ではあるが限定的

Bisphenol A: new immune system evidence useful but limited
13 October 2016
https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/161013
新しいデータはEFSAのこれまでの結論であるBPAは動物の免疫系に影響する可能性があるという結論を確認するが、ヒト健康について何らかの結論を出すには根拠はあまりにも少ない
オランダ健康福祉スポーツ省の要請を受けてEFSAの専門家がMénardらの二つの研究をレビューし(EFSAの最新のBPA包括的評価の際には発表されていなかった)、その実験デザインと方法には重要な限界があると結論した。さらにこの研究のデータは新しいTDIを設定するのに使うにはあまりにも変動が大きい。
2015年に述べたように、EFSAは2012年以降発表されたBPAの毒性についての科学的根拠を評価して暫定TDIの4 µg/kg bw/dayを見直す予定である。EFSAのCEFパネルの議長であるVittorio Silano教授は「EFSAの新しいレビューは2017年に始まる予定で、このMénardらの研究のような追加の免疫学的研究は我々の指摘した限界が修正されれば有用な貢献をするであろう」と述べた。EFSAの評価のきっかけとなったRIVMの報告書の主著者であるFleur van Broekhuizen博士は、「RIVMはEFSAによるBPAが免疫系に影響する可能性があるという我々の評価の確認を歓迎する。我々はEFSAの次のBPAレビューの結果を期待している」という。
Ménardらの研究(2014)
Ménardらの二つの研究はラットに周産期に5 µg/kg bw/day のBPAに暴露すると食品への不耐と耐性の低下(免疫応答不全)がみられることを示唆する。EFSAは著者らが提供した生データを評価する国際的専門家ワーキンググループを作った。CEFパネルはこのデザインとやりかたには限界があり、特にほとんどの試験が単一用量で行われていることが、ヒト健康との関連を評価するのを困難にしていると結論した。さらに3つのBPA用量で調べたたった一つの影響については、グラフにプロットしたデータはあまりにもばらばらで参照用量を同定できない。また陽性対照がなく同腹効果の調整もなく動物の体重やBPAの入手先やどうやって投与したのか、母親一匹から何匹生まれたのかなどといった研究デザインの基本情報がない。統計評価も行われていない。

  • ビスフェノールAの発達免疫毒性についての声明:オランダ保健・福祉・スポーツ省からの質問への回答

A statement on the developmental immunotoxicity of bisphenol A (BPA): answer to the question from the Dutch Ministry of Health, Welfare and Sport
EFSA Journal 2016;14(10):4580 [28 pp.].
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4580
この声明では2015年にEFSAが設定したBPAのt-TDI 4 μg/kg体重/日について、2016年RIVM報告書の結論の基となった最近の証拠の影響を評価するようにという、オランダ保健・福祉・スポーツ省からのEFSAへの要請に対応する。CEFパネルは、2014年Menard氏らが発表した、周産期にBPA 4 μg/kg体重/日で暴露したラットの食物不耐と寄生虫感染への免疫応答障害を示唆する2つの研究結果を評価した。2015年のEFSAのBPAに関する意見に用いたのと同じ評価基準と証拠の重み分析がこれらの研究に適用された。この新しい証拠は以前のレビューで報告された動物でのBPAの免疫毒性の兆候に加わるものである。複数のBPA用量が調べられているのは(免疫グロブリンG (IgG)量)のエンドポイントだけで、用量反応データのベンチマーク用量解析が実施された。動物間の差が大きいため信頼区間が広く用量反応は限定的で、CEFパネルは抗卵白アルブミンIgG抗体についてのデータは免疫毒性についてのBPA参照用量を導出するにはふさわしくないと結論した。そのうえ、パネルが観察したMenard氏らの両研究の複数の限界は研究結果の解釈を困難にさせ、ヒト健康への妥当性評価はできない。CEFパネルは全体としてMenard氏らの2つの研究結果はBPAのEFSAのt-TDIの改訂を求めるには十分ではないと考える。EFSAは2012年以降に発表された全ての科学的根拠とBPAハザード評価に関係する(免疫毒性を含む)根拠のレビューを2017年に開始する予定である。ここで評価された2つの研究のような免疫学研究の結果は、ここで確認された限界を解決できれば評価に有益な貢献をするだろう。