食品安全情報blog過去記事

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農薬: 農薬とは何で、どのように我々の食品に入り込んでくるのか

Pesticides: What are pesticides and how do they get into our food?
http://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/pesticides?qtquicktabs_topics_completed_work=5
 「農薬」という言葉は、一般的に植物保護製品(plant protection products)と同じ意味で使われている。しかし、農薬は広い意味で、殺生物剤(biocides)のような製品、つまり害虫予防や昆虫・ネズミ/ラットの保菌動物をコントロールするための非植物使用の製品、EFSAの権限の及ばない製品までも含む。
植物保護製品は、主に、農作物を健康に育て、病気や病気の蔓延により枯れてしまうことを防ぐ農薬である。除草剤、殺菌剤、殺虫剤、ダニ駆除剤、植物成長剤、防虫剤を含むものである。
植物保護製品は少なくともひとつの有効成分を含む。これらの物質は化学物質やウイルスを含む微生物で、製品がその効力を出せるようにする。植物保護製品分野におけるEFSAのリスク評価の大部分は、これらの有効物質に関して注目している。

<よくある質問>
1. 残留農薬とはなにか
残留農薬は検出可能な有効成分(植物保護製品や動物医薬品として使用された有効成分)、その代謝物、分解産物を含む残留物である。農作物や動物由来食品に含まれるものである。
2. EFSA残留農薬報告書とはなにか
EUには農薬を使用するうえで、包括的な法的枠組みがある。より高い水準での消費者保護を目的とし、最大残留基準値(MRLs)のような法的基準値で、食品に許可できる残留農薬の量を設定している。(参照:質問6)
MRLsは370種類を超える食品を対象に、500種類以上の農薬について設定されてきた。EU加盟国は、市場に出回る食品が基準に従うように、農薬規制プログラムを実行し、残留農薬の検査のため様々な食品のサンプルを採取する。EU内の残留農薬に関する規制の遵守状況や欧州における消費者の暴露の状況をとりまとめるため、このデータをEFSAが分析し、公表する。さらに、EFSAは今後のモニタリング計画の助言を行う。
3. 最新の主な調査報告について
2014年EUで採取された97%の食品検体には残留農薬が検出されないか、法的に許可された基準値を下回る量であった。この結果は、クロアチア含めたEU28加盟国、アイスランドノルウェーから採取された83,000検体から得られたものである。
4. どの食品、化学物質を分析するか誰が決めるのか
報告書は2つのデータがある。
・1つは、EU共通計画(EU-coordinated programme)であるが、欧州委員会が対象の国に、食品及び農薬の共通リストの分析を課すものである。3年サイクルで、違ったグループの食品を分析する。検体は、欧州の人々が消費する食品に対して、統計的に代表的な結果を得るよう、ランダムに選ばれる。
・もう1つは、各国管理計画(national control programmes)があるが、それぞれの加盟国が行う。この計画は“リスクに基づき”、基準を超過する濃度の残留物があると思われる産物を重点的に検査する。
97%という数値は、2つの報告書の結果を合わせ、導きだされたものである。EU共通計画の結果に関しては、2014年は12種類の食品から12,850件の検体を集め、98.5%が基準値を下回る、という結果であった。
5. “残留農薬が含まれない”とはどういうことか
定量化できる残留物の存在が確認できなかったということである。技術的な言い方をすれば、農薬の化学物質が低量限界値(LOQ)を超える濃度でなかったということである。LOQは、正確に定量できる物質の最小濃度である。多くの農薬は、LOQが0.01 mg/kgから0.05 mg/kgの範囲である。0.01mg/kg濃度は、大まかにいえば、オリンピックで使うスイミングプールにティースプーン5杯の砂糖を溶かし薄めたものに等しい。2014年には、検体の53.6%は定量化できる残留農薬がなかった。
6. 97%という数字はどこからきたか?
残留農薬なしとされた53.6%の検体に加え、43.4%は基準値を下回る量の残留農薬を含んでいた。(例:MRLsを超えていないもの。参照:質問1)つまり、97%が基準値以下ということである。
7. 最大基準値(MRLs)はどのようにきめられるのか?
農薬が欧州での使用を認可される前に、申請者(主に農薬製造者)は広範囲に及ぶ科学的な試験結果を提出する必要がある。これらの結果は、農薬の使用が(食品中の残留物を介して、)消費者に許容できないリスクを与えないこと、作業者(農家や農薬使用者)や環境(飲料水に浸透するとか、野生動植物に害を及ぼすといった環境等)にもリスクを与えないことを立証することになる。申請者はまた、収穫された農作物の残留レベルの予測を示さなければならない。ESFAはその後、その残留濃度が消費者に健康リスクを与えないか検証する。MRLは望まれる保護作用を達成できる最も低い値で設定される。EUはMRLのデータベースを公開している。
*MRLデータベース
http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/eu-pesticides-database/public/?event=homepage&language=EN
8. MRLsと毒性学的安全レベルは同じか?
いいえ、違うものである。MRLsは毒性学的安全値ではない。MRLsは、消費者にリスクを与えずに、植物を効果的に保護するのに使用できる農薬の最小濃度である。例えば、農作物を健康に育て、病気やその蔓延により、枯れないようにするものである。MRLsは毒性値より、ずっと低いものであることが多い。さらに、食品中の農薬がMRLsを超えるレベルでも、必ずしも安全性に懸念があるという意味ではない。
9. 複数の農薬からの残留物がある食品はどうなのか?
複数の農薬の残留は、2014年の報告書によると、検体全体の28.3%にみられた。複合残留は個々の農薬が基準値を超えない限り、MRL規則の違反とはならない。しかしながら、複合残留の産物は、各国の担当機関によって十分評価されるべきである。(例えば、混合農薬が故意に、ある物質のMRL超えを避けるために使われる、などの事例)。EFSAは最新の報告書においては累積リスク評価については検討していないが、現在、複数農薬に対する累積暴露の影響を評価するための方法論をまとめているところである。この方法論は神経系や甲状腺に対する、農薬の累積的な作用を調べる指針となるものである。結果は、2017年に公表される予定である。
10. EU域内で生産されたものと域外のものでは、検体に違いがあるのか?
EU/EEA(欧州経済地域)内での検体のうち、1.6%が認可レベルを上回った残留物を含むことが分かった。第三国からの検体では6.5%で、2013年の5.7%より若干上がっている。2014年採取の基準を超えた3,265件の検体のうち、1,253件については、EUにおいて使用が認可されてない。こういった多くのケース(957件)は輸入品である。