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第83回JECFA会合の要約

83rd Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA) Eighty-third meeting Summary and conclusions, 2016
Issued 23 November 2016
http://www.fao.org/documents/card/en/c/feb0d3a7-cb80-4dd6-a03a-403bd20d0db4/
http://www.fao.org/3/a-bq821e.pdf
アフラトキシン
世界の地域ごとにアフラトキシンによる肝細胞がんリスクを計算している。最も高いのはサハラ以南のアフリカとハイチで10万人当たり年に0.21-3.94人でアフラトキシンの暴露源となる主要作物はソルガムとトウモロコシ。欧州やその他先進国は最も低く<0.01-0.10で主要暴露源は小麦。
すぐ食べられるピーナッツのアフラトキシン規制値を15 microg/kgから10、8、4 microg/kgに下げることによる一般人の食事暴露量への影響はほとんどなく、市場の製品の拒否率は10%(15 microg/kgの場合)から20%(4 microg/kgの場合)に増加するだろう
・ジアセトキシシルペノール
4,15-DiacetoxyscirpenolをT-2とHT-2毒素のグループ暫定最大耐容一日摂取量0.06 μg/kg に含める
・フモニシン
FB1、FB2 および FB3のグループPMTDI 2 μg/kg bw維持
・グリシジルエステル類
グリシドールは遺伝毒性発がん性でBMDL10 は2.4 mg/kg bw per day(NTPのがん原性試験の雄ラット精巣鞘膜/腹膜中皮腫)から暴露マージン490-24000
・3-MCPDエステル類
3-MCPD については67回会合でラットのがん原性試験での腎尿細管過形成のLOEL 1.1 mg/kg bw per day に安全係数500を用いて2 μg/kg bwとしていた。雄の生殖能への影響に不確実性があり生殖毒性試験が不適切だったため。その後最も低濃度で影響が出るのが尿細管過形成であることが確認されBMDL10を計算し0.87 mg/kg bw per dayとされた。安全係数200(追加の2は生殖毒性試験の不適切さに対応)を用いてPMTDIは 4 μg/kg bw(3-MCPDと3-MCPDエステルの3-MCPD相当量の合計)に改訂。
推定摂取量は乳児用ミルクを与えられている乳児で最大2.5倍ほど超過する
・ステリグマトシスチン
遺伝毒性発がん物質。BMDL10は0.16mg/kg bw per day(雄ラット肝血管肉腫)
成人の暴露マージンは平均推定で9400から53万以上(UB-LB)、高い推定で4700から 270 000。最も少ないMOEはアフリカ地域の平均推定9400から10 000、高暴露群4700から 5000
・フモニシンとアフラトキシンの同時暴露
グアテマラタンザニアなどで尿や血清の分析により同時暴露が確認されている。動物では相加あるいは相乗作用が報告されているがヒトでのデータはない。確認できないが可能性はあり、懸念は残る
・用量−反応モデルを作る際の詳細ガイドラインを作るべき
・不検出あるいは定量限界以下のデータの取り扱いについて議論しているがこの問題が重要であるためワーキンググループを作って検討を続ける
(注:3-MCPDの(PM)TDIはEFSAの0.8μg/kg bwと今回の4 μg/kg bwの違いはBMDの導出の際に用いたモデルと安全係数の使い方の差が大きく、もともとの実験データは一桁mg/kg bw per dayがLOAELというもの。プロトコール通りのがん原性試験で低用量・中用量・高用量の対照群含めて合計4群で低用量での影響を見ているのでNOAELはない。あまり違うと混乱するので標準手順書は必要だろう)