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[NHS] レビューが最新のビタミンDの公式ガイダンスに疑問を提示

Behind the headlines
Review questions recent official vitamin D guidance
Thursday November 24 2016
http://www.nhs.uk/news/2016/11November/Pages/Review-questions-recent-official-vitamin-D-guidance.aspx
“‘時間の無駄’とされたビタミンD錠剤は最新の研究によると、むしろ‘有害‘になりうる”と、The Sunは報じている。しかし、見出しにかかわらず、新しい研究はされていない。
この記事は、論文審査のある、BMJに掲載された、既存の証拠のレビューによるもので、最新の政府のビタミンD補充に関する助言に対して疑問を投げかけている。
今年7月、英国公衆衛生庁(PHE)が英国のすべての人々は秋冬に一日10mcgのビタミンDサプリメントをとることを検討すべきだと推奨した。また、さらにビタミンDレベルが低いリスクが高い人々は一年中を通して、サプリメントをとるべきだ、と推奨している。
英国公衆衛生庁が憂慮していることは、人々の中には、ビタミンD生成を刺激する日光にあたることが少ないことと、ビタミンDの少ない食生活の組み合わせにより、欠乏症として知られる、ビタミンDの非常に低い状態になる可能性がある、ということである。
ビタミンD欠乏症は、骨がもろくなり、痛みを伴い、骨折しやすくなる、骨軟化症といわれる状態を含め、様々な合併症を引き起こす可能性がある。
この報道の根拠は何か
オークランド大学とアバディーン大学の研究者は、ビタミンDサプリメントについてPHEの推奨の根拠に疑問を提示するレビューをBMJに発表した。
研究者らが述べていることは、ビタミンDに対する十分な質の高い研究が多くあるにもかかわらず、ビタミンDサプリメントの摂取だけで骨折や転倒のリスクを減らしたり、骨の強度を改善したりする証拠はない、ということである。
介護施設に入居するビタミンD値が非常に低い高齢の女性を含む、カルシウムとビタミンDサプリメントを与えた2つの研究においては、確かに骨折の減少は見られた、という。
しかし、介護施設に入居していない人々においての研究では、結果は同じではなかった。
著者はまた、骨や筋肉の健康以外の、ビタミンDのほかの可能性のある効果についての報告に目を通し、結果、一貫した効果はないことがわかった。
レビューの著者は根拠の検索方法を示してはいないので、これは系統的レビュー(研究者がすべての利用できる適切な証拠を踏まえたレビュー)ではなく説話的レビュー(研究者が主張を裏付ける証拠に焦点を当てたレビュー)であると考えるべきである。
系統的レビューは、 “証拠としての重み”がより大きいと考えられる。
BMJは、英国公衆衛生庁の栄養科学部長、Louis Levy博士による、“返答の権利”の記事を載せている。Levy博士が指摘していることは、“ビタミンDは脂肪分の多い魚、赤身肉、レバーおよび卵黄”を含めた、数種類の食物にしか含まれておらず、食事からのみ必要分を摂取するのは簡単でない“、ということである。
また、“アフリカやカリブ、及び南アジア出身の肌の色が黒い人々は、夏に日光から十分なビタミンDを得ていないかもしれず、一年を通してサプリメントをとることを考えるべきであるかもしれない。”と述べている。
ほとんどの専門家は、ビタミンDの摂取量不足リスクのある人々はビタミンDサプリメントをとることが効果的であるだろうと、意見が一致している。
ビタミンD欠乏症とは?
ビタミンDは健康な骨や筋肉を作るのに重要である。重症ビタミンD欠乏症は子供の骨の奇形(くる病)、大人の骨軟化症を引き起こす可能性がある。
しかし、ビタミンD欠乏症の定義は何なのか、一日にどのくらい摂取すべきかについての科学的な論争はたくさんある。
7月、PHEは、肌に日光を浴びるとどのくらいビタミンDがつくられるかよくわかっていないので、誰もが一日に10mcgのビタミンDを食事から摂取することを目標とするべきであると発表した。
ビタミンDの多くは日光によって皮膚で作られる。しかし、冬場は英国の日光量の量は、ビタミンDを作るには弱すぎると考えられている。
ビタミンDは食物の中にもある。サーモン、サバ、ニシン、及びイワシの様な脂質の多い魚、赤身の肉、卵および朝食のシリアルやファットスプレッドにもビタミンDが加えられ、含まれている。
ビタミンDはどのように影響するのか?
もし、あなたがビタミンD欠乏症のリスクがないなら、食事と夏場の日光の組み合わせからで十分足りているだろう。
こちらで、皮膚がんのリスクなしに日光からビタミンDをとる方法を見てみよう。(http://www.nhs.uk/Livewell/Summerhealth/Pages/vitamin-D-sunlight.aspx
PHEは大人が秋冬に一日10mcgのサプリメントをとることを検討すべきだと言っている。一方、BMJの著者は、この勧告は多くの人々にとって不必要だと言っている。
しかし、10mcgは害がないように思えるし、個人の選択になる。マルチビタミンサプリメントからビタミンDを摂っていないかどうかも同時に確認すべきである。
次のグループの人々はビタミンD欠乏症のリスクが高い可能性がある。
・あまり外出しないひと。例えば、介護施設に住んでいるような人々。
・外に出るとき、肌の大部分を覆う人々
・アフリカ、カリブ、南アジア人種で黒い肌を持つ人々。
PHEはこれらの人々は、一年中サプリメントをとるべきだと推奨している。PHEはまた、妊娠女性、乳児、4歳以下の子供も、毎日サプリメントをとるべきだと言っている。
結論
では、誰が正しいのか?BMJレビューの著者の主張である、理想として、食事と適切に日光を浴びること組み合わせによって必要なビタミンDをすべて摂取できるということは確かに正しい。
彼らはまた、ふつうのビタミンDの値の人々がサプリメントをとることで効果があるという証拠はない、という点で正しい。
しかし、我々は理想世界に住んでいるわけではない。事実として、多くの英国の人々は、不健康な食生活であり、食生活はビタミンDが不足し、日光を十分に浴びていないのである。
賢明な選択は、推奨されるようにビタミンDサプリメントをとることを考えることだが、同時に血中のカルシウムが蓄積する(高カルシウム症)を引き起こす、ビタミンDの過剰摂取の可能性にも注意するべきである。
高カルシウム症の危険な兆候や症状は食欲減退、吐き気、倦怠感、多尿である。