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動物の健康における抗菌剤耐性:抗菌剤の売り上げが下がる中、耐性率は横ばい

Antimicrobial resistance in animal health: resistance rates level off while sales of antimicrobials continue to fall
29/11/2016
https://www.anses.fr/en/content/antimicrobial-resistance-animal-health-resistance-rates-level-while-sales-antimicrobials
抗菌剤への耐性は国際レベルでヒトと動物の重要な健康問題として認識されている。「2015年フランスの抗菌剤を含む動物用医薬品の販売調査」というフランス動物用医薬品庁による報告が本日発表され、この4年以上でフランスの抗菌剤に対する動物の暴露は20.1%減少した。抗菌剤の合理的な利用を勧める国家計画のよい影響を裏付けている。動物由来病原菌の抗菌剤耐性のためのフランス調査ネットワークの報告によると、2015年にいくつかの分野で第三世代セファロスポリン類への耐性が低下し、数年間減少した後、フルオロキノロン類への耐性は横ばいである。だが、ほとんどすべての生産部門で、ほかの抗菌剤への耐性がわずかに上昇する傾向が見られた。警戒のため努力を続けなければならない。
ANSESは本日、国際獣疫事務局(OIE)の本部で動物の健康における抗菌剤耐性についての年一回の科学会議を開催する。この日の議論は国立動物用医薬品局(ANMV)が実施したフランスの抗菌剤を含む動物用医薬品の販売調査の発表、ANSESのリヨンとプルフラガン研究所が調整した動物由来病原菌の抗菌剤耐性のフランス調査ネットワーク(Résapath)の2015年次報告を含んでいる。
2014-2015の抗菌剤の販売監視
抗菌剤の販売管理は抗菌剤耐性に関する評価とリスク管理に使用する重要な情報源の一つである。毎年、ANMVは年次調査を発表している。
全ての種で観察された動物への暴露の減少
2014 と2015年にわたり、販売の平均総量は2011年と比較して28.4%減少し、年間の抗生物質は650トンに近づいた。抗菌剤への動物の暴露の減少は2011年と比較して全ての種で観察されている(牛-9.5%、豚-24.1%、家禽-22.1%、ウサギ-17.8%、ネコと犬-9.5%)。
フルオロキノロン類と新世代セファロスポリン類への暴露
第三、第四世代のセファロスポリン類とフルオロキノロン類は、ヒトのある感染症の治療の唯一の選択肢なのでヒトの医薬品で特に重要だと考えられている。農業、食品、林業の未来について法令で参照された2013年と比較して、フルオロキノロン類と新世代セファロスポリン類への暴露はそれぞれ22.3%と21.3%減少している。
動物由来病原菌の抗菌剤耐性のためのフランス調査ネットワークによる2015年の報告書
Résapathネットワークは病気の動物から取り出した動物由来病原菌についての耐性記録データを集めている。そのため動物の病原菌の抗菌剤耐性を監視し、特定の抗菌剤耐性の出現やその分子メカニズムを検出することができる。Résapathは成長し続け、2015年現在74の研究所が含まれている(2014年には69)。2015年には41,298件の耐性記録が集められた(2014年には36,989件 )。
2015年は重要な抗菌剤に関して:
・第三及び第四世代のセファロスポリン類への最も高い耐性率はおよそ6 〜7%である。子牛、犬、猫、馬科で観察された。他の種では、特に雌鶏と鶏(2.5%)、豚(2.6%)、成牛(2.4%)、七面鳥(1.2%)では、同等あるいは3%未満である。雌鶏と鶏、コンパニオンアニマルでは明らかに減少しており、子牛でもある程度の減少が観察されている。ほかの種ではその割合は低量で安定している。
・フルオロキノロン類への最大耐性率は子牛でみられた(22%)、とはいえ今までの年と比べて安定している。逆に、馬科、雌鶏/鶏、七面鳥は相変わらず低率(5 〜7%)である。
一般に、2015年は安定への傾向が観察された。これらの結果はポジティブであるが、特に家禽のフルオロキノロン類に関しては監視を続ける必要がある。
抗菌剤の賢明な合理的な利用に関する努力を続ける
フランスでは、抗菌剤の合理的利用を促進するために多くの手段が取られている(フランスの抗菌剤の利用において5年間で25%減少する目的で設定された2017年のEcoAntibio計画、農業・食品・林業の未来に関する法令、など)。近年観察された抗菌剤への暴露の減少は抗生物質の合理的な利用について取られた様々な手段のポジティブな影響を裏付けした。
動物用抗菌剤治療でリスク管理についてANSESの具体的な助言:
・予防としての抗菌剤の利用をやめること、
・新世代の抗菌剤(セファロスポリン類と第三第四世代のフルオロキノロン類)の利用を、あらかじめ分野別によく確認し、厳しく監視する特別な状況にとどめておくこと、 ・問題になっている細菌だけを対象とした狭域抗菌剤の利用を奨励する。
コリスチンについて
2015年11月に発表されたコリスチンの最初のプラスミド媒介性の耐性メカニズムを説明した記事は、この抗菌剤の調査強化につながった。2007年まで増加した後、コリスチン暴露は2008年から2011年の間はあまり変わらず、最近4年間以上は減少している。この暴露は2011年と比較して25.3%下落した(投与のすべての種と経路の合計)。
コリスチン耐性を評価するのに使用した方法が限られていたにもかかわらず、過去10年間の状況は感受性の高い系統の割合が明らかに増加し、満足できるものとみなされている。