食品安全情報blog過去記事

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論文

Insufficient evidence to support use of homeopathy in livestock
12-Dec-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-12/b-iet120816.php
Veterinary Recordにオンライン発表された包括的レビュー。1981年から2014年の間に発表された牛、豚、家禽でのホメオパシーの有効性についての研究を評価した。ホメオパシー抗生物質の代わりあるいは使用量を減らすと宣伝されて広く家畜に使われている。有機農業ではホメオパシーは推奨されてすらいる。相当数の研究がホメオパシーを有効だとしているが極めて限られた条件で比較できないものが多く再現性がない。研究の厳密性が少ないほど有効であるとする結果が多く、バイアスの可能性が示唆される。他に利益相反や選択的報告、サンプルサイズの小ささなどが問題点である。

  • SMC

家畜のホメオパシーの有効性についての文献レビューへの専門家の反応
expert reaction to literature review on efficacy of homeopathy in livestock
December 12, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-literature-review-on-efficacy-of-homeopathy-in-livestock/
Veterinary Recordに発表された文献レビューについて
王立獣医大学獣医薬理学名誉教授でPierre-Louis Toutain教授、欧州獣医薬理学毒性学専門家、欧州獣医専門委員会、Peter Lees教授
全体としてこのレビューにはいくつかの良い点がある。基本的結論は、いろいろな理由で、レビューした52の試験はホメオパシーを牛、豚、家禽に使うことへのしっかりした根拠とならない、ということである。これはこれまでに発表された農場でのホメオパシーについての最も包括的なレビューである。出版バイアスの重要性を考慮し、再現性のなさや予後の妥当性についても検討している。
著者は動物福祉の観点から、不必要な苦痛を与えないように最も効果的な治療を行うべきであると強調している。通常治療への不安によるホメオパシー製品の使用は正当化できない。例えば残留動物用医薬品は適切な休薬期間で管理できるし抗菌剤耐性も適切な管理がある。
Chipping Norton動物病院獣医Martin Whitehead博士
このレビューは質の高い研究以外は排除するというEBMの意味での完全な系統的レビューではない。盲検ではない試験や対照群のない試験も含まれる。
しかしこの研究の一部として試験デザインの評価を試み、結果がネガティブだろうとポジティブだろうと試験の結果を評価しようとした。その結果研究デザインが良くなるとホメオパシーがポジティブな結果になる可能性が低いことを示した。
ホメオパシーやその他の代替医療雑誌は質の低いピアレビューである傾向があり「偽陽性」の研究を発表するバイアスがある。このデータは明確な出版バイアスの根拠である。
この解析で見逃されている重要な要因は、最初に一次アウトカムが特定されているかどうかである。検討されているアウトカムが膨大で、その多くは多分最初に特定されていないで、試験後に差があったものを解析している。統計学的にはそのような事後の知見は真の影響の意味のある根拠とはならない。
Locum獣医外科Danny Chambers
畜産業界は農場での不適切な抗生物質使用を減らすための対策をとり続けることが重要であるが、それは明確に抗生物質の代わりにホメオパシーを使うことではない。ホメオパシーに効果があるように見える場合にはそれは薬物を与えないことで同じ結果になるだろう。
このレビューはホメオパシーについては全体的な根拠はネガティブであるが決定的ではないことを示した。一見効果があるようにみえる影響はより厳密な条件で再現される必要がある。しかしながら家畜のホメオパシーについては再現された試験は一つもない
Nottingham大学獣医科学部実験動物の福祉と科学教授Tim Morris教授
この研究は重要な質問をしている。ホメオパシーの使用についての客観的評価は凝り固まった立場によって曖昧にされ、このレビューの混合した知見は議論の両側の人たちによって自分たちの主張を強化するために使われるだろうことは疑いようもない。しかしこのレビューの最も役に立つ結論は、比較できる条件で再現された研究がひとつもないということである。