食品安全情報blog過去記事

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その他

  • Kendalの「未殺菌ミルクに関連する」食中毒事例が56に増加

Food poisoning cases 'linked to raw milk' sales in Kendal rise to 56
30 December 2016
http://www.bbc.com/news/uk-england-cumbria-38466193
カンピロバクター。問題の未殺菌ミルクを売っていたLow Sizergh Barn Farmは8月に未殺菌ミルクに対してNational Trust優良農場製品賞fine farm produce awardを受賞していた。
(National Trustは自然・環境保護団体。どんな賞なのかわからないけれど未殺菌ミルクに賞を出す時点で安全性はどうでもいい、ということがよくわかる。自然保護のためには人間はいらないと思ってやっているのかどうかは知らないが)

Formation of Gluten Free Industry Association
6 January 2017
https://www.fdf.org.uk/news.aspx?article=7707&newsindexpage=1
英国でのグルテンフリー食品の需要増に対応して、食品飲料業界連盟(FDF)の会員としてGFIAを設立。2017年の優先課題として質の高い製品を提供するためのガイドラインの作成を挙げる

  • 食品と飲料事業者のための詐欺対策優良行動規範

Chartered Institute of Environmental Health
Counter Fraud Good Practice for Food and Drink Businesses
http://food.cieh.org/food_fraud/goodpracticeguide.html?RequestId=c7647a13
CIEHとPortsmouth大学詐欺対策研究センター、FSAの食品犯罪ユニット、スコットランド食品基準庁の食品犯罪事故ユニット、知財事務所の協力により開発されたもの
食品飲料事業者にとって、詐欺は製品に異物が添加されること、食品が虚偽の宣伝をされること、偽装企業が商品を受け取って支払い前にいなくなることなどの形で生じる可能性がある。多くの調査が行われてるにもかかわらず、この分野での詐欺の性質や程度について信頼できる情報はない。
このガイドでは詐欺は全ての事業者の問題であり財政上の負担であるだけでなく消費者の信頼を損ない、消費者の健康と福祉に影響する可能性があると説明する。
CIEHは企業に対し、その事業者が直面する全ての詐欺の性質と規模に関する信頼できる根拠に基づき、事前予防的包括的対策をとるよう強く求める。つまり既知の詐欺問題にのみ集中するのではなくより広範に考えるように。
(請求すると無料のコピーがもらえる、とある)

  • 病気の孫娘に大麻クッキー70を持参した祖父逮捕

Grandpa arrested while taking 70 medical pot cookies to sick granddaughter
January 11, 2017
http://globalnews.ca/news/3174524/grandpa-arrested-while-taking-70-medical-pot-cookies-to-sick-granddaughter/
カリフォルニアで医療用大麻の使用が登録されている祖父67才が、テキサスでステージ4ホジキンリンパ腫の孫娘に合いに行こうと車を運転していてスピードの出し過ぎで止められ、トランクから孫に与えようと思っていた大麻クッキーが見つかってテキサス警察に逮捕された。1晩拘留後2万ドル払って保釈された。

  • 化学:隠された戦争

Nature書評
Chemistry: The hidden war
Paul A. Lombardo Nature 541, 154–155 (12 January 2017)
http://www.nature.com/nature/journal/v541/n7636/full/541154a.html
Susan L. Smithによる「毒物暴露:第二次世界大戦の米国でのマスタードガスとその健康への帰結Toxic Exposures: Mustard Gas and the Health Consequences of World War II in the United States」の書評
軍の研究で何千人もの兵士がこれらのガスの中毒になった。本の最後は毒ガスが抗がん剤に変わった物語を記す。

  • 詐欺的クルクミンは化学者に教訓を提供

Natureニュース
Deceptive curcumin offers cautionary tale for chemists
Monya Baker 11 January 2017
http://www.nature.com/news/deceptive-curcumin-offers-cautionary-tale-for-chemists-1.21269
スパイス抽出物はアッセイをだまし医薬品探索者を道に迷わせる
黄金色のスパイス、ターメリックの中には化学物質の詐欺師が隠れている:クルクミンである。薬効があると広く喧伝されているが、医薬品のスクリーニング検査では間違ったシグナルを出す。何年もの間、化学者はクルクミンやその他の化合物について、だまされやすい医薬品候補物質ハンターに注意を呼びかけていた。
今回、混乱した研究が続くことをくい止めようとして、化学者がクルクミンについてこれまでで最も包括的なレビューを発表した−数千の研究論文と120以上の臨床研究があるにもかかわらず、どんな治療効果についても根拠はないと結論している。科学者は彼らの報告がこれ以上の無駄な研究を止めさせ、薬物のスクリーニング試験で「当たり」であっても医薬品になりそうにない化合物について軽率に期待することに警告となるよう望む。
このレビューの主著者のミネソタ大学医薬品化学者Michael Waltersは「クルクミンは教訓である」という。通常使われる医薬品のスクリーニング検査は病気に関連するタンパク質の結合部位にくっつくかどうかを検出する。それが出発点になる。しかしクルクミンのような化合物は全く特異的結合活性がないのに特的結合をするように見える。この分子の天然の蛍光が蛍光信号を用いるアッセイを失敗させる。また細胞膜を破壊し特定の細胞膜タンパク質を標的にしたアッセイを騙す。さらに密かに分解して別の活性のある分子になり、あるいは生理的活性のある不純物を含む。
化学者はこのような厄介な化合物をPAINS(広範な試験法に干渉する化合物pan-assay interference compounds)と呼び、クルクミンは最悪のもののひとつである。「クルクミンはしばしばスクリーニングでひっかかってくるこのような節操のない化合物の見本である」と国立トランスレーショナル科学発展センターで試験法開発を主導しているJames Ingleseは言う。「この分野で仕事をしている多くの人がこのようなことが原因となる技術的問題に気がついていない」。
このレビューを発表したJournal of Medicinal Chemistryの共同編集長であるGunda Georgは「多くの努力とお金がクルクミン研究に無駄に費やされてきた」という。それでもこの雑誌にはクルクミンの論文が常に投稿される。クルクミンは勃起不全、多毛症、脱毛症、がん、アルツハイマー病などの治療法として提案されてきた、とこのレビューの共著者のイリノイ大学天然物研究者Guido Pauliは言う。Pauliは問題の一部は研究者が自分の研究対象の分子について必ずしも知らないことがあると考える。ターメリック抽出物にはクルクミン以外に数十の化合物を含むが、関連する3つの化合物の代用品として使われることがある。時に研究者は何らかの影響を観察するがその活性を間違って別の分子の作用とみなす。
間違った解釈は自己増殖する、とWaltersは言う。クルクミンは試験法が間違っていても効果があると報告される。「人々は文献にあることが正しいとして受け入れ、根拠が無くても仮説を立てる。」そして科学者はその化合物に問題があると指摘されているかどうかについて文献を調べることはないようだ。クルクミンの文献は2009年以降少なくとも15報が取り下げられ数十以上が修正されている。
それでも多くの研究者がクルクミンに期待している。「クルクミノイドに生理活性があるという根拠がある」とRochester大学医学センターの放射線腫瘍学者Julie Ryanはいう。クルクミンは多くのタンパク質と相互作用し多くの薬物とは違う。Ryanは600人以上の人で皮膚炎への影響を調べた。有意差はなかったが傾向があったので研究する意味があるという。彼女はクルクミンを化学修飾すれば組織に届くのではと考えている。
しかしレビューは真の答えを得るのは難しいだろうことを示す、とNorth Carolina大学の化学生物学者Bill Zuercherはいう。「クルクミンあるいはターメリック抽出物に有用な影響がある可能性はあるが、真相にたどり着くのは複雑で不可能な可能性がある」。Waltersは彼の報告が質の低い研究を止めさせるとは確信していない。「そうすべき人は多分この報告を読まないだろうから」と。