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魚を食べることについて妊婦や親が知るべきことに対するFDA/EPAの助言より、Q&A

Questions & Answers from the FDA/EPA Advice on What Pregnant Women and Parents Should Know about Eating Fish
January 18, 2017
http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm534873.htm
FDA(米国食品医薬品局)とEPA(米国環境保護庁)は魚の摂取に関して助言を発表した。この助言は、妊婦または妊娠予定の女性、また授乳期の母親、乳幼児のいる親を対象としており、健康的にまた安全に魚を食すための情報を与えられた上での選択に役立つ。 この助言は多数の健康的で安全な選択肢から選択するのをこれまでよりも簡単にした一覧表とよくある質問を含む。
I. 表の利用
II. 食べる量
III. 子供
?. 魚の栄養素
V. 魚の汚染物質
VI. マグロに関して
VII. 家族や友人が釣った魚
VIII. その他の魚を食べることに関するヒント
IX. 参考文献
I. 表の利用
1. この表をどのように活用するのか?
魚は上質なタンパク源であり、低水銀の魚はすべての人々にとってよい選択である。当助言は特に、妊婦または妊娠予定の女性、また授乳期の母親、幼児を対象にしているが、この助言はすべての人が守って差し支えないものである。各週どの魚を食べるか選ぶのにこの表を利用していただきたい。毎回同じ種類の魚を食べるより、いろいろな種類の魚を食べるほうがあなたや子供にとってよりよいのである。全体として健康的な食生活の中で、4オンス(113gほど)の1回量に基づき、「ベストチョイス」のカテゴリーの中の魚を週に2、3回食べてよい。「グッドチョイス」のカテゴリーの中の魚は週に1回食べてよい。「避けるべき魚」のカテゴリーの魚は食べないほうがよく、また子供にも与えないほうがよい。しかし、もし食べるなら、翌週は低水銀量の魚を食べるようにする。
2. どのように魚の分類を決めたのか
どの魚がどのカテゴリーに属するかの決定は非常に慎重な方法をとった。販売されている魚についてのFDAデータベースやその他の情報からの魚各種の水銀量データを用い、平均的な妊娠女性が1週間に食べていい魚の量はどのくらいなのか算出した。ある魚を妊娠女性が少なくとも週に3回食べてよいなら、「ベストチョイス」のカテゴリーに分類した。もし、週に1回だけもしくは2回食べてよい魚ならば「グッドチョイス」のカテゴリーに分類した。週に一回も食べてはいけない魚ならば、「避けるべき魚」に分類した。
詳しくはテクニカルページ(http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm531136.htm)を参照。
3.なぜ魚によっては1つ以上のカテゴリーに分類されるのか?
マグロにはビンナガマグロ、メバチマグロキハダマグロといったいろいろな種類がある。マグロの種類によっては他より大きく、長寿で水銀量が多い傾向があり、そのため違ったカテゴリーに分類されている。そのため、ライトツナ缶は「ベストチョイス」のカテゴリーである。ビンナガマグロ(シロマグロ)やキハダマグロは「グッドチョイス」の分類で、メバチマグロは「避けるべき魚」である。加えて、同じ種類の魚でも違った場所で捕獲されたものは水銀含有量が違ってくる可能性がある。例えば、アマダイは大西洋産のものよりメキシコ湾産のもののほうが水銀含有量が高いので2つのカテゴリーに分類されている。
4.なぜいくつかの魚は表に載っていないのか?
例えばイガイのような魚を探して表に載ってないならば、表に載せるに足る十分信頼できる水銀データがないということである。データはさらに収集し、ウェブサイト上で更新していく予定である。
5. 魚の水銀量に関してより詳細に知るにはどうすればよいか。
市販されている魚の平均的な水銀量が確認できソート可能な以下の表でさらに詳しく参照できる。(http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm531136.htm#table
II. 食べる量
1.一食の量はどのくらいか
成人の典型的な食べる魚の量は、調理前で4オンス(113gほど)である。1週間にいろいろな種類の調理した魚を2、3回、または約8〜12オンス(226g〜340gほど)食べることを推奨している。
2. 4オンスがどのくらいかどうしたらわかるのか?
4オンスは成人の手のひらの大きさと厚みほどである。
3. 食べる魚の量が推奨されている週に2、3回より少ないとどうなるのか?
全体的健康にとって有益である魚に含まれる上質なタンパク質、ミネラル及びビタミンを摂取し損ねることになる。次の週以降にいろいろな種類の魚から推奨される量を食べるようにすればよい。助言では毎週どのくらいの量を食べるべきかを一般的なガイドラインとして示している。
4. 魚を週に3回以上食べるとどうなるのか?
食べる魚の種類を変えるようにすること。週に3回以上食べ、その中に高水銀量の魚が含まれるのならば、翌週は低水銀量の魚を食べるようにすること。
5.体重によって助言を変えたほうがいいか?
ここでの助言は一般的なガイドラインとして意図されたものである。平均体重(165ポンド、約75kg)以下の女性は、量を少なくしたり、1週間に3回でなく2回食べるようにしてもいいだろう。
III. 子供
1.子供は魚を食べるべきか、どのくらい食べるべきか?
はい、魚はその他のタンパク質豊富な食品同様に子供の成長と発育によいものである。週に1、2回いろいろな種類の魚を子供に食べさせることを薦めるが、大人の量より少なくすべきで子供の年齢や必要総カロリーに合わせるべきである。平均的に、一食の量は2、3歳児は1オンス(28g)、4〜7歳の子供は2オンス(56g)、8〜10歳の子供には3オンス(84g)、11歳以上の子供は4オンス(113g)である。さらに詳しい情報はテクニカルページで参照できる。また、Q&A VI.2 や Q&A VII.1で子供とマグロ、家族や友人の釣った魚について述べている。
2.何歳から子供に魚を与えてよいのか?
幼い子供に魚を与えてよいが、6か月以下の子供には与えるべきではない。魚、特に貝類はアレルギーの可能性が高いと思われており、初めて子供に魚を与える親は、2回目以降与える前にアレルギー反応の兆候がないか観察しなければならない。
IV. 魚の栄養
1. 魚に含まれる栄養素は何か、またそれらがなぜよいのか?
多くの魚は非常に上質のタンパク源である。魚はまた体が必要とするセレン、亜鉛ヨウ素、鉄及びその他ミネラルの重要な栄養源でもある。魚は多くのビタミンB群の天然の摂取源であり、脂肪の多い魚からビタミンAやDを摂取できる。妊娠女性の研究では魚の栄養の恩恵は他の高タンパク質食品と同じように妊娠中の子供の成長や発育に重要であることが分かっている。多くの魚は脂質が少なく、さらに魚に存在する脂質の多くが健康的な多価不飽和脂肪である。オメガ‐3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)もまた、多くの種類の魚に存在している。オメガ‐3脂肪酸の健康への有益性を決定する研究はまだ道半ばである。
2. オメガ‐3のサプリメント摂取と魚を食べるのは同じ効果が得られるか?
オメガ‐3のサプリメントはタンパク質、ビタミンまたミネラルを含んでいない。魚を食べる代わりにオメガ‐3サプリメントをとることは全体的な健康に有益である魚に存在する上質なタンパク質、ミネラル、ビタミンを取り損ねるということである。オメガ‐3サプリメントの健康への有益性は現在研究途中である。(オメガ‐3のサプリメントの健康への有益性:https://effectivehealthcare.ahrq.gov/search-for-guides-reviews-and-reports/?pageaction=displayproduct&productID=2321
V. 魚の汚染物質
1. 水銀やメチル水銀とは何か?
水銀は環境中に自然に存在しし、またヒトの様々な活動を通して環境に放出される1元素である。川や湖及び海に集まって、水中や堆積物中でメチル水銀に変わることがある。これが魚に存在する種類の水銀である。メチル水銀はヒトが長期にわたって暴露しすぎると脳や神経系に有害となる。
2. すべての魚にメチル水銀があるのか?
ほとんどすべての魚に少なからずメチル水銀は含まれる。魚は食べ物からメチル水銀を吸収する。メチル水銀がほかの魚に比べて蓄積しやすい種類の魚がいるが、それは特に他の魚を食べる大きな魚や長生きする魚である。
3. 水銀を避けるために妊娠中は魚をたべないほうがよいか?
いいえ、魚は妊娠前や妊娠中また授乳中の健康的な食生活に有益である。妊娠女性での研究では魚の栄養の恩恵はほかの高タンパクな食品と同じように妊娠中の子供の成長や発育に重要である、ということが分かっている。これは特に水銀量の少ない魚の場合当てはまる。一般の人も妊娠中の人も多くの人が奨励される魚の量より食べる量が少ない。2005年FDA調査によると、妊娠女性は典型的には1週間に2オンスの魚しか食べていないことが分かった。この助言の表をみれば、妊娠女性、妊娠予定のある女性また授乳中の女性、もしくは幼い子供に対してどの魚が一番いい選択なのかがわかる。
4. 魚の洗浄や調理(例、加熱)で存在する可能性のある水銀の量を減らすことができるか?
いいえ、水銀は魚の組織のあらゆる場所にあるので、洗浄や加熱調理では水銀の量が減ることはないであろう。水銀の量を減らす方法は「ベストチョイス」として表示されている一覧表の魚を食べることである。店舗でまるごと買った魚に関してはQuestion V.6.の回答の追加情報を見ていただきたい。
5.「避けるべき魚」の分類にある魚を1食食べたら心配すべきか?
いいえ、しかし今後は「ベストチョイス」や「グッドチョイス」のカテゴリーから魚を選ぶこと。「避けるべき魚」は食べないようにし、子供に与えないようにすること。
表にある分類の「ベストチョイス」と「グッドチョイス」からいろいろな魚を食べることをお勧めする。
6. 魚にはその他の汚染物質は含まれるのか?
はい、しかし、FDAは一般に販売されている魚に含まれるほかの汚染物質の量はヒトの健康問題を引き起こさないことを発見している。長年、FDAは市販の海産物の農薬や産業化学物質、水銀以外の重金属も同様にサンプルを採取し検査してきた。その結果は以下のFDAのウェブサイトで閲覧可能である。

残留農薬モニタリングプログラムhttp://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Pesticides/ucm2006797.htm
• トータルダイエットスタディ分析結果http://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/TotalDietStudy/ucm184293.htm
他の汚染物質の量は場所や魚の種類によって異なる。州や地方の保健省や魚類鳥獣部は例えば、特殊な水域の魚に含まれるポリ塩化ビフェニル(PCBs)のような、その他の汚染物質について助言を公表している。娯楽としてまたは食事のタンパク源として自分で魚を釣る人は淡水、海洋どちらについても魚の助言や注意事項を確認すべきである。
 自分や友人が釣った魚を調理する前にほかの有害な汚染物質が蓄積しているかもしれない皮、脂肪及び内臓を取り除くのはいい考えである。一部の地方の水域で釣った魚は他の汚染物質を含んでいる可能性が高いので、特に当てはまる。
さらに魚を食べるとき、毎回同じ種類でなく様々な種類の魚を食べることを覚えておくこ
と。一覧表にはたくさんの種類があり、あらゆる味の魚がある。
VI. マグロに関して
1. ビンナガマグロ(シロマグロ)とライトツナ缶はどう違うのか。
 ビンナガマグロやシロマグロはライトツナ缶で一般的に使われる魚よりずっと大きく、寿命が長い。一方、ライトツナ缶は一般的にもっと小さいマグロのいろいろな種類の混合でカツオもよく使われる。
2.マグロ、特に手頃なのでライトツナ缶をたくさん食べるが、問題ないか?
 はい、ライトツナ缶は「ベストチョイス」カテゴリーに分類され、1週間に2、3回食べて問題ない。いろいろな種類の魚を食べることをお勧めする。例えば、鮭缶、またはイワシ缶、冷凍魚または値下げした鮮魚など「ベストチョイス」に分類されるほかの手頃な魚も試してみるとよい。
3. マグロをたくさん食べるが、ビンナガマグロを好んで食べるのは問題ないか?
 ビンナガマグロはシロマグロとして知られているが典型的にライトツナ缶の3倍以上水銀を含んでいる。ビンナガマグロまたは「グッドチョイス」にある他の魚は週に1回食べられる。
VII. 家族や友人の釣った魚
1. 家族や友人の釣った魚を食べるとどうなるか?
 自分やほかの人が釣った魚を食べる場合にはその水域に関する魚の助言や注意事項に注意すること。モニタリングが十分でなかったり全くなかったりする水域があるので、水銀の汚染の可能性の程度ははっきりしない。助言が利用できない場合には、週にその魚を一食の摂取に限り、その週は他の魚を食べないようにすべきである。
成人はその週6オンス以上食べるべきでなく、6歳以下の子供は週に1、2オンスの魚の摂取にとどめるべきで、もう少し成長した6歳〜12歳の子供は週に2、3オンスの摂取にとどめるべきである。また、成人でも子供でもその週他の魚は食べるべきでない。
2. 家族や友人の釣った魚の安全性についてどこで情報を得られるのか?
 娯楽で釣った魚についての情報は、適切な釣り規則のパンフレットやウェブサイトで確認すること。地方、州、部族の保健省や魚類鳥獣部には、その管轄域の魚を摂取する助言、注意事項についての情報がある。また、EPAの魚摂取の助言のウェブサイトも参照できる(http://www2.epa.gov/choose-fish-and-shellfish-wisely
VIII. 魚を食べることに関するその他の追加のヒント
1. 週に2、3回の魚を食べることは健康的な食生活パターンとどう適合するか?
2015-2020米国人のための食生活指針にて、魚の量を増やすことそして水銀のより少ない多様な魚を選ぶことを推奨している。肉や鶏肉のような他のタンパク源の代わりに魚を食べるべきである。これは魚の調理の仕方に注意を払うということも意味する。例えば焼き魚は通常揚げ魚よりもカロリーが少なく、他の側面でもより健康的である。魚や調理過程に由来するナトリウムやコレステロール含量もまた健康的な食事の他の側面として考えられるべきである。もし、自分にとって適切なカロリー量が分からない場合、適切なカロリー摂取に関する情報を以下のサイトで参照できる。(www.choosemyplate.gov)(具体的な情報はMy Weight Managerで入手できる。以下サイト:https://www.supertracker.usda.gov/MyWeightManager.aspx
さらに詳細については栄養士や医師に相談することを薦める。
2. 妊娠女性や幼い子供が生の魚を避けるべきというのは本当か?
 はい。2015-2020米国人のための食生活指針とFDAは食品に存在する可能性のある細菌から身を守るため安全な内部温度で調理された魚、肉、鶏肉また卵といった食品のみを食べるべきであると助言している。これは多くのレストランや店舗で利用できるスシやサシミ(日本式食品)の一部として提供される生の魚を含む。妊娠女性や幼い子供は免疫系が弱く食物由来の病気に対するリスクが高くなる。
3. 私自身魚が食べられない、もしくは食べない場合はどうなるのか?子供は問題ないだろうか?
 魚は健康全般に有益な上質のタンパク質、ミネラル及びビタミンの源の一つである。魚を食べないとしても健康な子供を生むことができる。
4. 私は女性で将来子供を持つかもしれないが、現在妊娠しているわけではない。
なぜこの助言を守るべきなのか?
 もし、あなたが来年妊娠する可能性があるなら、今すぐこの助言を守ることを薦める。ほかのタンパク質豊富な食品と合わせて週に2、3回多様な魚を食べることは子供の成長と発育の役にたつし、助言に沿った頻度でいろいろな種類の魚を食べることもまた重要である。なぜなら魚の水銀は時間をかけて体内に蓄積するからである。水銀は体内から自然に排出されるがそれには数か月かかる。そういうわけで妊娠前にこの助言に従うことは子供の発育に有益となり特に重要な初期の3か月には有益である。
5. 妊娠女性、妊娠予定の女性、授乳中の女性以外の人々に対して、魚を食べることに関してどのような助言があるか?
 魚は上質のタンパク源であり、低水銀の魚は誰にとってもいい選択である。当助言は特に妊娠女性、妊娠予定の女性、授乳中の女性及び幼い子供に向けているが誰もがこの助言を参考にして差し支えない。
6. この助言は水産資源の持続可能性の問題を考慮しているか?
 いいえ、この助言は魚摂取の有益性と魚の水銀量に基づいて食べることのできる、各週の魚の食事の回数に焦点を当てるものである。この助言は水産資源の持続可能性についての懸念は反映していない。詳細は米国海洋大気庁のウェブサイトで閲覧できる。(http://www.fishwatch.gov
IX. 参考文献
2015-2020 米国人のための食生活指針(https://health.gov/dietaryguidelines/2015/guidelines/


注:メチル水銀のRfDは 0.1 µg mercury/kg body weight/day
IRIS
https://cfpub.epa.gov/ncea/iris2/chemicalLanding.cfm?substance_nmbr=73
エンドポイントはヒト疫学研究における発達神経影響(ファロー諸島研究における妊娠中の母親の摂取量と子どもが7才の時の検査結果)のBMDL05 : 8.57 x10-4〜1.472 x10-3 mg/kg-dayに安全係数10を用いたもの