食品安全情報blog過去記事

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リスクを手短に

Risk in Brief
アメリカザリガニ、横紋筋融解症とハフ病
Red swamp crayfish, rhabdomyolysis and Haff Disease
04-10-2016
http://www.cfs.gov.hk/english/programme/programme_rafs/programme_rafs_fci_02_05.html
イントロ
1. ハフ病は発病の24時間以内に魚を摂取した人の原因不明の横紋筋融解症(骨格筋繊維の破損)である。1924年バルト海地域で初めて報告された。その後9年間におよそ1000人もの人がこの地域で発症している。
2. それ以来、この病気はスウェーデン、旧ソビエト連邦、米国、ブラジル、中国を含む様々な国で報告されている。この病気はほとんど調理済淡水魚(すなわちカワメンタイ、ウナギ、カワカマス、カンムリブダイ、メチニス、淡水コバンアジなど)とアメリカザリガニの摂取に関連している。

安全性と公衆衛生上の意義
1. ハフ病は一般的に筋力低下、筋肉痛、筋硬直、暗褐色の尿を引き起こす。だが、神経症状(すなわち無感覚や麻痺のような神経系が引き起こす症状)はない。このことが一部の海産物の摂取によっておこる中毒とは異なる(例えばまひ性貝中毒、シガテラ中毒、フグ中毒など)。影響を起こす淡水魚やアメリカザリガニを食べた後潜伏期間は約8時間、範囲6-21時間だと報告されている。
2. 横紋筋融解症の特徴は骨格筋繊維の破損で、細胞の中身(筋繊維中のミオグロビン、酸素結合タンパク質を含む)が血流に放出されることになる。ミオグロビンは腎臓まで循環し、微細なフィルター構造―尿細管に沈殿し、詰まって急性腎不全を引き起こす。そのため、重症だと命を脅かす可能性もある。実際にはさらに、圧座損傷、無理しすぎ、アルコール依存症、先天性代謝性筋疾患、熱損傷と寒冷損傷、薬物及び毒素など、横紋筋融解症のよくある原因がある。
3. ハフ病の原因は今のところはっきりしない。関連食品に蓄積した耐熱性毒素が原因だと疑われている。だが、原因となる食品(すなわちアメリカザリガニと魚)、患者からの血液と尿のサンプルの化学分析はこれまで可能性のある毒、薬物、危険な要素を何も同定できていない。ザリガニを洗う洗剤(シュウ酸や水酸化ナトリウムを含む洗剤など)の不適切な使用が横紋筋融解症につながると疑う人もいる;だが、シュウ酸や水酸化ナトリウムは横紋筋融解症と似た症状を起こさない。

ザリガニとハフ病
1.今日まで、アメリカザリガニProcambarus clarkiiの摂取に関するハフ病は2か国でしか報告されていない:中国と米国である。最初は2000年に北京でアメリカザリガニ摂取後の6事例のアウトブレイクが発表された。2001年のルイジアナ州の8事例もアメリカザリガニの摂取に関連していた。2010年以降、中国ではアメリカザリガニ摂取に関してさらに多くの事例が報告された。
2.2016年9月8日、健康省の健康保護センター(CHP)は食中毒の疑いのある2事例の調査を報告した。二人の患者が深圳で購入したゆでたアメリカザリガニを摂取した後、足に激しい筋肉痛を伴う症状を起こした。

売買への助言
1. 関連機関が規制する養殖場産や信頼できる輸出業者から生きたアメリカザリガニを購入すること。生産過程を監視するHACCP(あるいは同等の食品安全管理システム)を導入している加工施設が提供するアメリカザリガニ(例えば調理済冷凍ザリガニ尾肉)を購入すること。
2. 香港では市場で販売可能なすべての食品は食用にふさわしくなければならない。売買業者は販売や輸入する食品が食用としてふさわしいことを確かめ、関連する法基準を順守しなければならない。

消費者への助言
1. 評判の良い信頼できる業者が提供する新鮮なアメリカザリガニを購入すること。一般人は出所のわからないアメリカザリガニを購入してはいけない、また食用に野生のアメリカザリガニを取ってはならない。
2. 調理前にアメリカザリガニを洗浄し、十分調理すること。
3. アメリカザリガニを食べすぎないこと、アメリカザリガニの頭や内臓を食べないこと。(現時点での限られた情報によると、アメリカザリガニの摂取によっておこるハフ病のアウトブレイクでは10匹以上のザリガニを食べると病気のリスク増加に関連することが研究報告されている。)
4. アメリカザリガニを食べた後に全身あるいは局所的な筋肉痛になったら、すぐに治療を受け、食べたものを医師に話すように。