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  • 危機の際の科学−コミュニケーションでやるべきこととやるべきでないこと

SMC NZ
Science in crises – some communications dos and don’ts
Peter Griffin February 10th, 2017.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2017/02/10/science-in-crises-some-communications-dos-and-donts/
今週私はオタゴ大学の感染症シンポジウムで、危機の際のリスクと不確実性を伝えるときにメディアが果たせる役割についての短い話をした。
とても素晴らしい午後で、David Heymann教授がエボラの同定と犠牲者の治療と拡大防止のための何十年にもわたる仕事を講義した。Heymann教授のメッセージは明確で、エボラワクチンの開発は歓迎すべきだが、たくさんのエボラ患者を殺し病気の拡大を招いたのは病院での処置のまずさだ、ということだ。言い方を変えると、問題になるのは感染している可能性のある患者に近づきすぎること、あるいは針を殺菌しないことといった単純なことだ。基本的衛生行動を正しく実施していれば、感染拡大は防げた。不幸なことに、エボラアウトブレイクがおきやすいところは医療インフラや行為が不適切なところである。
良い衛生が基本
基本的には危機時の科学コミュニケーションについても同じである。準備万端にすればするほど、メッセージは明確であればあるほど、コミュニケーションがとれているという信頼があればあるほど、アウトブレイクについての恐怖や不確実性や間違った情報がメディアで拡散する可能性が少なくなる。
主流メディアは専門家がリスクと不確実性について伝えたいときには重要な役割を果たす。しかしメディアも流動的でリソースが乏しく健康や科学の専門家がいない。ソーシャルメディアでは誰もが意見を公表でき、人々はソーシャルネットワークの仲間の言うことに最も影響されやすいため、誰かが非公式に言ったことが専門家の意見と同等またはそれより重要視されることを示す根拠が増加している。
私のシンポジウムでのメッセージは従って、公衆が健康関連情報を最も必要としているときには、専門家にはさらに一歩進んで、メディアが良い仕事をできるように科学コミュニケーションの「衛生」を良くする必要がある、ということである。
(SMCの科学者向けメディアガイドにリンク)
誇大宣伝を抑制する
以下は私のスライド「誇張を抑制する」からの抜粋である
エボラやAIDS/HIVSARS、トリインフルエンザなど、感染症はいつでも誇大に宣伝されやすい。理由は簡単である。メディアが科学者が完全には理解していない新興感染症に直面したとき、メディアはいつだって話を盛る。だから最初は誇大宣伝になるのは避けられない。しかし状況は進む。2009年のN1H1アウトブレイクの各段階で物語は進行した−最初は新しい、ワクチンの無い系統のインフルエンザへの警鐘、それから比較的若い一見健康な人が倒れるようだ、そしてワクチンの開発、医療担当機関やワクチン企業への批判。おのおのの段階で専門家のコミュニケーションがどう影響できたか、そしてメッセージが役にたたないものに変わるのを予防できたか。公衆衛生に関するリスクや不確実性をコミュニケートするのは難しく、報いはあまりない。メディアはアクセスをもとめ人目を引く見出しを渇望するので誇大になりやすい。しかし誇大宣伝はメディアに詳しい専門家や他のアドバイザーで抑制できる
(中略)
リスクと不確実性をコミュニケートするための5つのTIPS
1. 何重にも一貫した正確なメッセージを
自分で誇張しない
特異的に−「何を、いつ、どうやって、どのくらいの期間」
聴衆に向けてメッセージを調整
多様な聴衆を相手にメッセージを試す
2. 真空は満たされる−それがあなたによってであることを確実にする
すぐに関心が薄れると期待しない
あまりに詳細に説明してジャーナリストを過負荷にしない
メディアの質問には速やかにこたえる
知識の限界や不確実性の概要を示す
3. 間違った情報は事前に対応
不正確な情報は自動的にジャーナリストが悪いと非難しない
迅速に訂正を求める
必要があれば重要メッセージを調整する
フォローアップの機会をさがす
4. 公衆の声を聞く
公衆にたくさんの事実を次々投げつけない
非合理的なものであっても懸念を受け止める
直接関与する機会を探る
ソーシャルネットワークでの間違った情報は修正する
5. 平時にサイエンスコミュニケーション能力を磨く
情報が必要になるまで待たない
メディアとの関係を作るのに時間をかける
あなたのスキルを磨く
聴衆に届けるための努力をする