食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

ECHAはグリホサートを発がん物質とは分類しない

Glyphosate not classified as a carcinogen by ECHA
Helsinki, 15 March 2017
https://echa.europa.eu/-/glyphosate-not-classified-as-a-carcinogen-by-echa
ECHAのリスク評価委員会RAC)はグリホサートを目に傷害性があり水棲生物に有害であるという現在の統一分類を維持することに合意した。RACは入手可能な科学的根拠はグリホサートを発がん物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類する基準に合致しない
採択された意見は通常の編集チェックを経て欧州委員会に送られる。同時にECHAのウェブサイトでも公開する。
背景
グリホサートについての発表された研究の他に、委員会は企業が行った研究のオリジナルの報告を全て入手できた。RACは2016年の夏に行ったパブリックコメントで受けとったものも含む全ての科学的データを評価した。
この分類は物質のハザードのみに基づくものである。暴露の可能性は考慮せず、従って暴露リスクについても考慮しない。認可を更新するかどうかは暴露によるリスクも考慮される。
(つまりIARCはハザード評価だからリスク評価とは違うんだよ、という言い訳も否定。IARCがおかしい、というしかなくなった)

  • IARC

Glyphosate not classified as a carcinogen by ECHA
15/03/2017
http://www.iarc.fr/
グリホサートはECHAにより発がん性とは分類されない
IARCの評価はECHAのレビューに影響されない。IARCは他の国や国際委員会の専門性や方法論や結論にはコメントしない。
(文中の各リンクは過去の発表で新しいことは言ってない。)

(ところでこのECHAの発表とほぼ同時期に米国の裁判でこれまで公開されていなかった文書が明らかになったことからそちらを大きく取り上げているメディアも多い。
Monsanto Weed Killer Roundup Faces New Doubts on Safety in Unsealed Documents
By DANNY HAKIMMARCH 14, 2017
https://www.nytimes.com/2017/03/14/business/monsanto-roundup-safety-lawsuit.html?_r=0
というかGlyphosateでニュースを検索するとくっきり分かれる
ちなみに「グリホサート(日本語)」でニュースを検索するとどっちのニュースも出てこない。)

  • SMC

ECHAのリスク評価委員会がグリホサートを発がん性に分類しないことについての専門家の反応
expert reaction to the European Chemicals Agency (ECHA) Committee for Risk Assessment not classifying glyphosate as a carcinogen
March 15, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-the-european-chemicals-agency-echa-committee-for-risk-assessment-not-classifying-glyphosate-as-a-carcinogen/
Dortmund工科大学、労働環境と人的要因のLeibniz研究センター、毒性/システム毒性部長Jan Hengstler教授
ECHAのリスク評価委員会はグリホサートが発がん物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類する基準に合致しないと結論した。この結論は科学的に正当である。入手可能なラットとマウスでの長期試験と疫学研究のどちらもがグリホサートが発がん性であるという結論を正当化しない。現在のグリホサートの使用条件はヒトのがんリスクを増やさない。他の除草剤に比べるとグリホサートは多数の研究があり、発がん性リスクについては良く評価できる。ECHAの結論は驚くことではない。
Imperial College London生化学薬理学教授Alan Boobis教授
グリホサートの膨大で複雑なデータを評価したECHAは称賛すべきだろう。根拠を総合的に判断してグリホサートはヒト発がん物質とは考えられないと結論した。このような客観的で独立した包括的な評価は政策決定者が根拠に基づいた決定をするのに利用できるようにすることが重要である。