食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 飲酒と脳の構造と機能を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at drinking alcohol and the structure and function of the brain
June 6, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-drinking-alcohol-and-the-structure-and-function-of-the-brain/
BMJに発表された新しい研究で、研究者らが慢性的飲酒に関連する脳の変化を調べた。「見出しが出る前に」解析と以下のコメントを発表する。
ケンブリッジ大学公衆のリスク理解のためのWinton教授David Spiegelhalter卿
認知機能について繰り返し何種類も検査をしているにもかかわらず、飲酒と関連したのは言語の流暢さの一指標だけで、そしてこの低下はもともと高かった飲酒者のIQが下がったことによるようだ。従って脳の組織の変化は脳の機能にはあまり影響しないように見える。
オックスフォード大学根拠に基づいた医学センター長Carl Heneghan教授
ほどほど飲酒は脳や認知機能に有害か?BMJコホートはこの疑問に答えようとしたがしっかりした結論を出すには困難な問題がある−サンプルサイズが小さく、方法論に問題があり、結果は時に食い違っている。例えば右側海馬の萎縮は週に14ユニット以上で全く飲まない場合と比べて有意に大きいが、左側海馬では30ユニット以上の場合だけである。この理由が記述されていない。
また30年にわたって、この研究の参加者の週当たりの飲酒量が増えていない。これは自己申告による飲酒量に問題があることを示唆する。英国での生涯の飲酒習慣は、青年期に飲酒量が増加して成人初期にピークとなり、中年まで一定を保ちそれから高齢になるに連れて下がるというパターンである。
また結果の解釈に重要な指摘をしたい。オッズ比の使用は誤解を招くもので、実際の差より大きな影響を示唆する。
この種の研究はまた全ての交絡因子を調整できないため、因果関係を結論できない
ノッチンガム大学高齢と認知症センター長認知症研究教授Tom Dening教授
最初に、これは最も印象的な研究で、飲酒についての患者向け助言を再検討する原因となるだろうと考える。私は適量飲酒が保護作用があるという主張にはいつも懐疑的であった。このデータは「保護作用」派には気分が良くないだろう。多分我々は少し飲酒量を減らすべきなのだ。
大きな問題は30年以上の推定飲酒量がどれだけ正しいか、である。自己申告での飲酒量はあまり正確ではない。
アルコールについての研究知見はしばしば感情的反応を生む。飲酒量を減らすようにというメッセージは必ずしも守られない。もっと洗練された方法が必要なのだろう
ブリストル大学認知症神経学コンサルタント上級講師Elizabeth Coulthard,博士
このしっかりした研究は飲酒が脳の容量と知能低下に関連することを示した。これは飲酒量が多いと記憶力が貧弱になることを示唆しただけで、観察研究ではそれが原因であることを証明できない。しかしこの知見は私の臨床経験と合致する。飲酒量が多いことが認知機能の健康に有害であることは我々のような記憶専門病院運営者には明らかだが、広く認識されているわけではない。この研究がより良い理解につながることを期待する。
Alzheimer’s Research UK科学部長David Reynolds博士
この質の高い研究はほどほどであっても飲酒には脳の長期健康に負の影響がある可能性を示唆する。大量飲酒で脳の健康が低下するリスクは高くなるが、安全な量を決定することはできない。
Imperial College London脳科学部Paul Matthews教授
オックスフォード大学臨床心理学上級研究フェローJennifer Wild博士
アルツハイマー学会研究開発部長Doug Brown博士

  • 白い加工パンとサワー種パンを摂取した影響を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study investigating the effects of consuming white processed bread vs sourdough bread
June 6, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-the-effects-of-consuming-white-processed-bread-vs-sourdough-bread/
Cell Metabolismに研究者らが、一方は白パン、一方は全粒小麦サワー種パンを摂取する一週間の介入では有意差がないことを報告した。しかしながらさらに調べると、人々のパンへの反応が違うことがわかった。
オックスフォード大学食事と集団の健康教授Susan Jebb教授
この論文は20人に順不同で2週間間を空けて二つの期間、白パンあるいは全粒小麦サワー種パンのどちらかを食べてもらった無作為化クロスオーバー試験について記述している。結果は明確で、20の臨床検査値にパンの種類による影響は見られなかった。あるかもしれない小さな差を検出するには人数が少なすぎる可能性があるが、測定可能な健康影響はないという事実は残る。それから研究は、各種パンを食べる前後での個人の調査に進んだ。論文では記されているがプレスリリースにはないことは、対照群がないので、観察された影響はパンに関係のない要因のせいかもしれない。試験に参加する人は通常いろいろな理由で行動を変える。従ってパンについてこの解析からしっかりした結論は出せない。より一般的な観察として、食品への反応は人によって違う、というのは驚くべきことでも新しいことでもない。
栄養と消化管健康についての独立コンサルタントElizabeth Lund博士
この研究の結果は興味深いが、決定的ではなく規模は小さい。この研究は多くのバイオマーカーを調べているが、そのメインフォーカスは2型糖尿病リスクである。
介入はたった1週間と短い。より興味深い結果は全粒小麦サワー種パンを食べた後の血糖が白パンと変わらないあるいは全粒小麦サワー種パンの方が高い場合があるということである。これはこの二つのグリセミック指数が全体として同じであることを示す可能性があるが、人々のパンへの反応は多様である。人々の食品への反応が多様であることはよく知られている。栄養ガイドラインは平均に基づくもので、人々は必ずしも同じ反応を示さない。
腸内細菌がパンを食べたときの反応を予想できるかもしれないというのは興味深いが、この部分はより大規模で質の高い研究でチェックする必要がある
全粒穀物の健康上のメリットはより長期のもので一週間ではわからない可能性がある。従ってこの結果を根拠に全粒穀物を食べるのを止めないように。