食品安全情報blog過去記事

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グリホサートのリスク評価に関して新しい発見はない

No new findings on the risk assessment of glyphosate
BfR Communication No 008/2017 of 30 May 2017
http://www.bfr.bund.de/cm/349/no-new-findings-on-the-risk-assessment-of-glyphosate.pdf
欧州委員会委員長Jean-Claude Juncker氏への公開質問状のために、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)はグリホサートのリスク評価の新しい知見とされることについての意見を発表する。Christopher Portier氏は、ラットとマウスで実施した餌投与試験の腫瘍結果が欧州のリスク評価で考慮されていないといわれていることを報告するために日曜委員会の議長に公開質問状を出した。
ECHAと欧州食品安全機関(EFSA)による入手可能な科学的データ及び論文に基づき、知見が見落とされているという主張は正しくない。言及された全てのオリジナル研究は、その信頼性と妥当性について欧州機関の評価で十分検討された。
BfRはChristopher Portier氏による計算は科学的文脈で公開できるように科学雑誌に発表するよう薦める。
Christopher Portier氏はグリホサートの再評価に関して、欧州食品安全機関(EFSA)と欧州化学庁(ECHA)への評価報告書のためにドイツでの準備作業完了後に彼の統計分析を行った。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、欧州化学庁とバーゼル(CH)でのスイス毒性学界2016年年次会議で彼が行った発表から、彼の行った統計的計算を熟知している。残念ながら、Christopher Portierが行った個々の分析を含む調査結果に一般人はまだアクセスできず、科学雑誌でピアレビューや出版もされていない。
Christopher Portier氏は2016年11月のヒヤリングや2016年7月のパブリックコメント募集で彼の予測と統計上の結論をECHAに示す機会を得た。それらはECHAの専門家によって議論され、投票で検討された。非政府組織HEALの代表として彼が行った評価と議論で、そしてプレゼンテーションの発表でも、Christopher Portier氏の意図を含んでいることを透明性のある方法でECHAは示した。全ての統計分析を考慮した技術的ガイドラインで推奨された「証拠の重みづけ」(WoE)アプローチを用いて、独自の統計学者とChristopher Portier氏の分析を組み入れ、発がん性の可能性についての他の証拠などと共に、ECHAはグリホサートの発がん性あるいは遺伝毒性の影響の兆候はないという結論に至った。ECHAの投票の総合的な理由はECHAのホームページ上で発表されている。
Portier氏の文書で言及された全てのオリジナル研究は、信頼性と妥当性について欧州機関の評価で検討された。OECDの技術的ガイドラインよると、統計的有意性は基本的に生物学的意義と同一だとみなすべきではない。入手可能な動物実験を個別に評価するのではなく、むしろ統一したガイドラインのもとで総合的に検討するWoEアプローチを採択した方が良い。技術的ガイドラインで推奨されたWoE アプローチの説明と方法論の違いについてのEFSAの研究はこちらで発表されている:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28374158.
毒性及び発がん性試験についてのOECDガイドラインOECDガイドライン文書116)は、データの評価のための統計的方法の選択は、計画段階、すなわち研究が始まる前に作られるべきだと強調している。検査ガイドライン(451から 453)を合わせて規定するのに加えて、2012年以降のこのOECDガイドライン文書116は、試験施設による発がん性研究の実行と評価のための重要なガイドも提供している。これに加えて、単に統計上の結果に加える非常に多くの他の証拠を含むため、これらの文書はWoEアプローチを用いた発がん性研究を評価する機関への重要な土台も形成する。これらには以下が含まれている:
(a) 腫瘍性及び非腫瘍性病変の、妥当性を区別した陽性と陰性の両方の結果
(b) 発がん性影響の評価にとって妥当な研究デザイン及び発がん性作用メカニズムの評価
(c) 標的臓器への全ての有害影響及びその他全身影響
(d) 有害影響と発がん性作用メカニズムの間の生物学的妥当性と因果関係
(e) 一つの研究やいくつかの比較可能なデザインの研究での、結果パターンと統一性に関するデータの質と頑健性
(f) 過剰な全体的毒性による二次的影響の可能性を考慮した発がん性試験で推奨される最大用量に関する限度量の概念と国際的な助言
ドイツ当局の評価は、EC規則No. 1272/2008の法で定める原則や分類と表示に関する項目3.6で規定された基準に従って作られており、発がん性の分類で他の化学物質の評価でもなされたように、他の独立した統計学者と協力して、全ての提示された統計上の検討を考慮している独立したECHAの評価の基礎の一つである。
連邦政府はDie Linkeグループによる議会の質問への答えとしても発がん性試験の評価に関する声明を出した(18/12284):
http://dip21.bundestag.de/dip21/btd/18/124/1812489.pdf
BfRホームページ上のグリホサートの話題に関する追加情報
http://www.bfr.bund.de/en/a-z_index/glyphosate-193962.html