食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 世論調査:約2/3の母親が子育てスキルについて他人からダメだしされたことがある

Poll: Nearly two-thirds of mothers 'shamed' by others about their parenting skills
19-Jun-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-06/mmu-pnt061617.php
0-5才の子どもの母親の多くが、しつけから母乳までのトピックで批判されたことがある−最も多いのは家族の誰かから
一部は全国ニュースにすらなる。女優のReese Witherspoonが最近子どもの朝食にシナモンパンを与えたとして批判された。モデルのCoco Rochaは赤ちゃんに乳児用ミルクを与えたと批判された。もとポップスターのJessica Simpsonは5才の娘に人魚のコスチュームを着せた写真が露出度が高すぎると批判された。有名人だけではない。この手のダメ出しは多くの母親が経験している。C.S. Mott子ども病院子どもの健康に関する全国世論調査報告によると0-5才の子どもをもつ母親の10人中6人が子育てについて批判されたことがあると回答している。匿名の批判が多い有名人と違って、多くの母親は身近な人が最大の批判者である。最も頻度が多いのは母親の両親。
「家族は母親を尊重すべきである。昔はこうだった、というのは最早ベストではない可能性がある」
(どこでも同じ。)

A 12-week randomized clinical trial investigating the potential for sucralose to affect glucose homeostasis
Regulatory Toxicology and Pharmacology
Volume 88, August 2017, Pages 22–33
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0273230017301265
低カロリー甘味料が血糖コントロールに影響するのではないかという仮説が主に細胞や短期動物実験を根拠に提示されている。そのためヒトでRCTを行った。結果としてスクラロース(∼333.3 mg)は空腹時及び食後血糖、インスリン、C-ペプチド、HbA1cに影響しない

  • 搾取的出版社から私が学んだこと

What I learned from predatory publishers
Jeffrey Beall
Biochemia Medica 2017;27(2):273-9. https://doi.org/10.11613/BM.2017.029
http://www.biochemia-medica.com/2017/2/273
(研究の高潔性(integrity)コーナー:搾取的出版社についての特集
搾取的出版社のリスト(Beallのリスト)を2012年から自分のサイトで公開していたコロラド大学司書のJeffrey Beallが2017年1月にサイトを閉鎖してから初めて公式に発言した文章。閉鎖の理由は大学からの職を奪われる可能性についての圧力。Beallのリストについて多くの反対意見が寄せられたが、彼が驚いたのはその中に大学の司書もいたこと。)
要約
搾取的出版社は著者がお金を払うオープンアクセスモデルを使ってお金を儲けることを目的としている。このペーパーは如何にして搾取的出版社が存在するようになりどうやってオープンアクセスソーシャルムーブメント、学術出版業界、大学の司書、の中で認められてきたのかを詳細に記す。搾取的出版社がBeallのリストから名前を外そうとしてとってきた戦略や、搾取的雑誌が科学にどうダメージを与えているか、そして将来の学術出版についてコメントしている。

1998年以前は多くの学術雑誌は紙ベースで一般的に質が高かった。一部の質の低い雑誌は存在したが、研究者はそれを知っていて避けていた。
1980年代から90年代、雑誌の値段が上がり図書館の予算が削減される中で雑誌の購読をキャンセルする必要があった。理由は正確に理解されないまま出版社のせいにされ、ネットの発展と一緒になってオープンアクセスが社会的運動になった。運動の継続には敵が必要で、反化学物質運動がモンサントを敵にしたてる戦略を真似てエルゼビアが敵にされた。PLoSが2000年代初めに開始され「強欲な」出版社に抗議する多数のオンライン請願が出回った。しかし研究者の多くはオープンアクセスのために必要な多数の作業やコストには関心がなかった。そのなかで搾取的出版社が現れ始めた。私が最初に気がついたのは2008-9年で、新しい雑誌を作ったので投稿するようにというスパムメールを受け取った時だ。司書として私はそれらを集め始め共有した。やがて私はこれらの出版社が研究倫理やビジネス倫理よりお金が大事なのだと学ぶ。そしてこれら搾取的雑誌は簡単に論文を出したい研究者と怪しげな起業家にとっての天の恵みとなった。それ以降、多分何万もの学位や昇進や雇用がこれらによって得られただろう。
もちろん全てのオープンアクセス雑誌が搾取的なのではない。しかし著者がお金を払う全てのオープンアクセス雑誌には利益相反の問題がある。つまりより多くを受理して発表すればするほど儲かるようになっている。
Beallのリストに掲載された雑誌社からはいろいろな反応があった。本人にメールがあったり大学の事務あてに嫌がらせがあったり。驚いたのはこれらの搾取的雑誌に論文を掲載している研究者がこうした雑誌を擁護することの多さである。思うに彼らはまともな出版社に何度も論文をリジェクトされ、やっと論文が出せたのだろう。研究者は自分の論文を発表した出版社を好きになる。
ブラックリスト方式とホワイトリスト方式のどちらが良いのかについてはいつも議論がある。私の大学はブラックリストが嫌いだった。
搾取的出版社は科学への大きな脅威である。彼らはインチキの科学を広め活動家の格好の出版機会になる。補完代替療法は主にこれらの論文を根拠にする。毎年ホメオパシーや鍼の論文がたくさん出されている。史上かつて無いほど多くの疑わしい「医学」研究が発表されている。人類にとって医学研究ほど重要なものはないのに、今やまともな研究とそうでない研究の境界が曖昧になっている。
そしてかつて隆盛を誇った学術出版業界は衰退している。業界自身の問題もある。