食品安全情報blog過去記事

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食品中の汚染物質:出来るだけ早くリスクを同定し評価する

Contaminants in Food: Identifying and Assessing Risks as Early as Possible
26/2017, 03.07.2017
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2017/26/contaminants_in_food__identifying_and_assessing_risks_as_early_as_possible-201210.html
ダイオキシンミネラルオイル、パーフルオロ化合物―人は食品から重要な栄養素だけを得ているわけではない。一定量取ると健康に影響を及ぼす可能性のある望ましくない物質も摂取する。「私達の惑星は事実上閉鎖システムだと考えられる。私達が作り出し環境中に放出するものは何でも、一定の時間がたった後、食品とヒトのサンプルに―おそらく僅かな痕跡だけだが―検出できるだろう、」とドイツ連邦リスク評価研究所副所長のReiner Wittkowski教授は説明した。「事態がおこってから慌てる必要のないよう、新しいリスクを同定するための将来を見据えたアプローチを開発しなければならない」。食品中から物質が検出されることが、自動的に健康リスクの存在を意味するわけではない。だがヒトの健康を守るために、食品中の汚染物質の量は、毒性学的な許容値まで、あるいは技術的に実現可能な限り最小化して減らさなければならない。最先端技術、環境状態、企業の製造工程、ヒトの食品摂取習慣は絶えず変わるので、私達は食品中の汚染物質が引き起こすリスクへの理解を定期的に更新する必要がある。最近発表された「食品中の汚染物質」特集は、起こりうる健康リスクの評価戦略の概要を示し、その性質、その汚染物質が引き起こすハザードの可能性、それらがどこから来るのか、人がどの程度それらに暴露するのかを説明する(ドイツ語)。
Bundesgesundheitsblatt - Gesundheitsforschung – Gesundheitsschutz
Ausgabe 7/2017
(https://www.springermedizin.de/bundesgesundheitsblatt-gesundheitsforschung-gesundheitsschutz-7-/12463914)
汚染物質は意図的に食品に添加されたわけではない物質である。そのような物質は生産、加工、輸送の様々な段階で、あるいは環境影響の結果として食品に入り込むことが分かっている。
特定の汚染物質についての最新の科学的知見は、その起源、特性、潜在的なハザード、暴露、食品中の量を最小化するための実現性など広範囲に及ぶ。例えば1980年代以降、ヒトと環境を保護するために、環境中に、そしてそれによって食品にダイオキシンが入りこむことを大きく減らすための対策が取られている。結果として過去数十年ダイオキシンの摂取は明らかに減少している。ヒトの体負荷の指標として母乳に存在するダイオキシンの量が、過去30年以上で概ね20%下がったことが対策の成功を示している。効果的で実践可能な汚染物質規則により、環境中の、それによりヒトの体内の量の長期減少につなげられた。
パー及びポリフルオロアルキル化合物 (PFAS)など他の物質に関する研究や活動の必要性がより大きくなっている。PFASは分解しにくい工業化学物質で、環境、フードチェーン、ヒト―実質的にどこでも検出できる。その特殊な技術的特性により、例えば材料に水、土、油などを寄せ付けない特性を与えるために、非常に多くの産業工程に用いられている。
ヒトの体中で数年といういくつかのPFASの長い半減期は、その物質が高濃度では肝臓を害する可能性があるため、今後綿密な監視が必要とされるだろう。そのうちのいくつかは生殖に影響を与え、がんを誘発する可能性が示されている。特に著しく高濃度が検出された地域では、食品中の量を観察し続け環境に入るのを避ける必要がある。
この特集号では、ダイオキシンやPFASなど難分解性有機汚染物質に加えて、ナノやマイクロ物質、食品中の金属や半金属に関する最新の科学的知見も取り扱っている。包装材料が食品に移行する可能性のある物質を含んでいることも強調している。例えば、新聞の印刷インクのミネラルオイル成分を含む印刷紙はリサイクルされるストックの一部なので、リサイクルされた段ボール箱からミネラルオイル成分が食品に移行する可能性がある。
この特集号は天然由来汚染物質の例や加熱によって生じる他の例も説明している。健康リスクの可能性の最も重要な決定要因は暴露、すなわちヒトに健康影響を与える可能性のある物質の実際の摂取量である。この暴露量推定はMEAL Study(食品の暴露評価及び分析のための食事)の例を用いて説明されている。食品中の汚染物質のリスク認知に関する新しい研究も最新の特集号で扱っている。