食品安全情報blog過去記事

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論文

Geographic Differences in Persistent Organic Pollutant Levels of Yellowfin Tuna
Sascha C.T. Nicklisch et al.,
Environ Health Perspect; DOI:10.1289/EHP518
https://ehp.niehs.nih.gov/EHP518/
世界中の海で獲ったキハダマグロ(Thunnus albacares)のPOPsを測定した。地域により0.16 から138.29 ng/g 湿重量および脂肪調整濃度で0.1 から 12.7 μMと大きく異なる

  • 市販されているグルテナーゼ:セリアック病にハザードとなる可能性

Commercially available glutenases: a potential hazard in coeliac disease
Suneeta Krishnareddy et al.,
Therap Adv Gastroenterol. 2017 Jun; 10(6): 473–481.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5424869/
セリアック病の唯一の対処法はグルテンを避けることだが、患者には治療法や食事法代替法への関心が高い。代替療法の中にはグルテンを分解する酵素(グルテナーゼ)がある。市販のダイエタリーサプリメントグルテンエピトープ分解に関する表示を検討した。
14製品はプロテアーゼを含むが含量や種類、由来を記していないものが多い。多くの製品が消化管症状を改善すると宣伝しているがほとんど根拠がない。
(文献上グルテンのエピトープを分解できないと報告されているものがあったり、ひどいものは小麦が含まれている。「酵素」がすっかりバズワードになってしまっている。まるで魔法のようにあっというまに働くと思われているのでは・・時間もかかるし条件もあるのに)

  • 大麻は高血圧による死亡リスク3倍と関連

Marijuana associated with three-fold risk of death from hypertension
9-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/esoc-maw080717.php
European Journal of Preventive Cardiologyに発表されたNHANESのデータを用いた研究。

  • 飲酒増加、特に女性で

Increases in alcohol use, especially among women, other groups
9-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/tjnj-iia080717.php
JAMA Psychiatryに発表された新しい研究によると、ハイリスク飲酒と飲酒関連疾患が米国で全ての人口集団で増加しているが、特に女性、高齢者、人種マイノリティ、教育レベルと収入の低い人で増加している。

  • カドミウム濃度の高い女性で内膜がんの発症率増加が発見された

Increased endometrial cancer rates found in women with high levels of cadmium
9-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/uom-iec080917.php
研究者は女性にカドミウム摂取を制限するよう勧める
PLOS Oneに発表された観察研究。Missouri、Arkansas、 Iowaの631人の内膜がん既往者と879人の対照者に200以上のリスク要因についての質問をし、尿と唾液を調べている。
(タバコのせいではないかと。食品でいくらカドミウムを下げてもタバコ吸ったら一気に暴露量増える)

  • 食品保存料がどうやってヒトホルモンをかく乱して肥満を促進するかを研究が示す

Study shows how food preservatives may disrupt human hormones and promote obesity
9-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/cmc-ssh080917.php
Nature Communicationsに発表されたCedars-Sinai医学センターのin vitro試験。ヒトの血液細胞を遺伝子組換えして分化させ、BHT, PFOA およびTBTを加えて影響を見た。濃度の記載無し。そして朝食シリアルや日用品中の化学物質があなたを太らせていると主張。
アメリカ人は食べる量が多すぎるという事実から何とか目を背けたいらしい)

  • ビタミンB3が先天性欠損症を予防するのに役立つかも

Scienceニュース
Vitamin B3 could help prevent birth defects
By Gretchen VogelAug. 9, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/08/vitamin-b3-could-help-prevent-birth-defects
新しい研究によると、ビタミンB3を余分に摂ることがある種の複雑な先天性欠損症を予防するのに役立つかもしれない。このビタミンは、研究者が初めてヒトの健康胎児の発育に関連することを示したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)とよばれる分子を作ることができない欠損を補償するのに役立つ。この知見は妊娠女性の食事中B3濃度を上げると先天異常全体の率を下げるのに役立つ可能性を示す。
この研究は心臓の異常の原因となる遺伝子を探すことから始まった。シドニーのVictor Chang 心臓研究所の発達遺伝学者Sally Dunwoodieらは心臓の発達に影響を与える遺伝子を研究している。2005年に彼らは心臓、背骨、肋骨に大きな異常があり肋骨の異常が重症なため肺が完全に膨らむことができない特に重症の事例に遭遇し、その家族がNADの産生に関連する遺伝子に変異があった。両親がそれぞれ遺伝子の一コピーに変異があり、赤ちゃんは欠損遺伝子二つを受け継いだ。2012年には同様の先天異常のある家族に別の変異を発見した。NADを作る次のステップの変異だった。そして彼女らのチームは他に二つの家族で同じ二つの遺伝子の変異を発見し、4家族の変異について本日The New England Journal of Medicineに発表した。
次にマウスで二つの遺伝子のノックアウトを作ったが、最初子どもは正常だった。しかし研究者らはマウスの餌にナイアシンが多いことを発見し、妊娠変異マウスの餌からナイアシンを取り除いた。そして生まれたこどもは4家族の子どもと類似の欠損があった。変異妊娠マウスに低用量のナイアシンを含む餌を与えると欠損の重症度が軽減され、たくさん与えると健康な子どもが生まれた。このことは変異のある家族にB3サプリメントが役立つ可能性を示唆する。
もちろん医師が妊婦にB3サプリメントを薦める前により多くのヒトでの研究が必要である。しかしこの研究は発生生物学の新しい分野を開拓する可能性がある。
研究者らはどうしてNADが発達に影響するのかよくわからない。なぜならこの分子には非常にたくさんの機能があるので。Dunwoodieは人体のNAD量に関与する遺伝子は少なくとも95あるという。これらの遺伝子のどれかに変異があると先天性欠損の可能性が高くなる可能性がある。母親の食事にビタミンB3を余分に含むことが役立つ可能性がある。
医師らは既に妊婦に対して脊椎欠損予防のため葉酸(ビタミンB9)を一定量摂るよう薦めている。新しい研究は同様の提案をするには不十分でさらに研究が必要である。ナイアシンの摂りすぎは吐き気、めまい、下痢を誘発するが低用量では有害影響は知られていない。